SPORTS! SPORTS! 寝てもさめても

16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

第98回全国高校野球選手権大会を振り返る 

2016年08月23日 | 高校野球

例年なら、
夏の甲子園の決勝が終わった後のうろこ雲を眺めながら、
ひとしきり『はア~』とため息をつくワタシ。

『また来年まで、指折り数えて待つとするか』
ということですが、
昨日の東京は朝から台風の猛威を受けて大変。
余韻に浸っている暇もありませんでした。


とはいっても今年も、
本当に面白い夏の甲子園大会でした。

昨年『甲子園100年』ということで、
たいそう盛り上った大会でしたが、
今年はまた実力派の投手が多く、
前半戦から手に汗握る戦いが多かったようなイメージの大会でした。

最後は攻守にまとまりを見せた作新学院が54年ぶりと大旗を手にして大会が終わりましたが、
ちょっと振り返ってみましょう。


1.好投手が集い、華のある大会となった今年の夏

今年の甲子園は、いまだ甲子園に姿を見せたことがなかった好投手が『最後の夏』に初めて甲子園切符を手にし、大集合してくれました。そしてすでに実績を積んだ好投手の”帰還”も相次ぎ、甲子園はさながら【好投手の品評会】となりました。大会前からBIG3といわれた履正社・寺島、横浜・藤平、花咲徳栄・高橋昴の3投手は、いずれも初戦で見事なピッチングを披露。上位まで駆け上がることはできませんでしたが、甲子園に確かな足跡を残してくれました。そのBIG3を凌駕する凄みを甲子園で見せてくれたのが、優勝投手となった作新学院の今井。甲子園最速の152キロで球場の目をくぎ付けにし、スライダーとカットボールの精度も抜群。好投手とは言われていましたが、正直『これほどまでとは』と全国のファンを驚かせました。数多いる歴代の優勝投手の中でも、上位といえる見事な投球でした。準優勝に終わった北海・大西投手の粘り強いピッチングも見事。主将にしてバッティングもチームの中心。北海道の期待を一身に受けながら、あくまでも『いつもと変わらぬピッチング』を見せてくれました。『名門校の矜持』がいっぱいに詰まったピッチングでした。そのほかでも、『なぜ彼はここまでキレがいいのだろう』とため息の出るピッチングを見せたのが木更津総合の早川。作新学院との試合では2発で沈みましたが、”大会の華”ともいえるピッチングで、自身3度目にして最後の大舞台を、見事なピッチングで締めくくってくれました。その早川と投げ合った広島新庄・堀も見事なピッチング。1時間20分の、あの素晴らしい”至高のサウスポーの投げ合い”は、本当にしびれました。そして投手としては本領を発揮できなかったものの、打者としてその超一流の力を見せてくれるとともに、主将として最後まであきらめない姿でチームに逆転を呼び込んだ東邦・藤嶋の姿も忘れられません。
いずれにしても、思い出すと彼も、また彼も……と、次々に好選手の姿が浮かんでは消えるのが夏の甲子園。彼らの顔とともに、”98”という数字はまた、忘れられない記憶になりました。


2.作新学院の強さは、小針監督のぶれない精神力

優勝した作新学院は、堂々の優勝。見事なチーム力で、甲子園で一戦一戦、力をつけての栄冠でした。開幕前の作新は、150キロに迫る剛球を投げるエース今井と4割打線で、優勝候補に挙がってもおかしくない戦力を備えてはいました。しかしどの雑誌や新聞などでも、その力を評価されながらも『候補の一角』という扱いは受けていませんでした。それはとりもなおさず、過去5年の甲子園での戦いぶりから、『作新はどこかでエアポケットに入ってしまうような試合をし、そこで負けていく』というイメージがあったからではないでしょうか。『先制されて劣勢の時に厳しい勝負になる』というのは、今年のチームの歩みからもわかります。秋、春ともまさかの敗退で関東大会に進めず、勝負強さという面でいまひとつかなという思いは、ワタシにもありました。しかし今大会。初戦からこれでもかと左腕の好投手と対戦しながら、作新は『しぶとく勝ち切る』ということを覚えて、快進撃を続けていったと思います。そしてその『左腕3連戦』を抜けた後、待ち望んでいた右腕との対戦になった準決勝、決勝で打線はついに爆発。『これぞ作新学院』という強気の連打でこの2試合をまさに圧勝。作新らしいフィナーレで優勝を飾りました。この苦しい大会の中、小針監督は一切その采配にぶれを見せませんでした。『打てなければ守れ』が徹底されていて、その守りは例年よりもかなりすぐれており、何度も今井投手のピンチを救いました。そして今井投手は、ピンチになればなるほどギアを上げ、『点をやらない投手』への成長を遂げました。見事としか言いようのない素晴らしさでした。


3.新世紀の野球で継投の難しさが浮き彫りに

今年ほど『継投の難しさ』ということが言われた大会もないですね。素人目に『ああ、あの時この投手で・・・・・・』と思われる起用も、現場を預かりチームを一番よく知る指導者は、まさに熟考に熟考を重ね選び取ったものだろうと思うので、『采配ミス』という言い方では決して片付けられないと思います。まず履正社vs横浜の2回戦。BIG3のうちの二人、寺島と藤平の投げ合いにファンは期待を寄せたが、横浜の先発は左の石川。しかし横浜は、神奈川のファンなら誰でもがよく知っているように、決して藤平一人のチームではなく、『石川と藤平、いったい今日はどっちが先発してくるのだ』というぐらいきっこうした左右のエースを持つチームとして認識されてきました。特に対戦相手の履正社に6人の強打の左打者が並ぶことを考えると、ワタシも『石川の先発が妥当ではないか』と試合前から考えていました。しかし、県大会終盤から何か石川の調子が今一つだと思わなくもなかったので、そのあたりは不安ではありましたが、初回の入りで三者三振というこれ以上ない立ち上がりを見せた時には『これはやるかも』との思いが広がりました。しかしその後二度の雨での中断。その都度肩を作ることを余儀なくされた石川に、強打線に立ち向かっていく余力は残されていませんでした。二度目の中断のすぐ後に、藤平に代えたら・・・・・と思ったが後の祭りになってしまいましたね。そして勝った履正社も、次戦でエース寺島の先発を回避して、『ダブルエース』と言われた山口を先発へ。その山口の投球が常総打線にまさにぴったりと合ってしまって、準備のできていない寺島を二回途中からつぎ込むことになり、傷口を広げ敗れ去る結果になってしまいました。BIG3の二人が相次いで”先発回避”の試合で敗れてしまったそのあと、もう一人の花咲徳栄・高橋昴も同じ轍を踏む結果となりました。花咲徳栄は横浜、履正社とは違い”ダブルエース”と呼ばれるほどの二番手投手は持っておらず、左腕を苦手とする強打の作新打線に対して右の網脇の先発を選択。高橋の疲労を配慮してのことだと思うが、『右の先発』ということで生き生きとンバットを振る作新打線に序盤から網脇が餌食になると、ゲームプランは最初から大きく崩れ、その後高橋が登板して作新打線を抑えたが、これもまた後の祭りの悔しい敗戦になってしまいました。【好投手を持てばこそ】の悩みを、図らずとも優勝候補に挙げられた3校が同じように示して敗れ去っていってしまったのは、示唆に富んだことですね。当然優勝を狙っていた3校でしょうが、『上位に勝ち上がっていくのは、本当に難しい』ことを実感したのではないでしょうか。反対に『一戦必勝』を貫いた北海が快進撃で決勝まで駆け上がったのは対照的で、考えさせられることでした。一方5人の投手を擁して『新しい形の高校野球』を貫いた秀岳館は、準決勝までその継投が全試合で見事にはまり、見事な『チームの形』を持って準決勝まで進出。一つ敗れたら終わりのトーナメント戦において、継投するというのは、本当に勇気のいることだと思います。それをピタリピタリと決めてくる鍛治舎監督、やはり只者ではないという思いを強くしました。


4.世紀の大逆転! 演出したのは甲子園の観衆。

東邦vs八戸学院光星戦の、9回2死からの世紀の大逆転。粘りに粘って4点差をひっくり返した東邦の粘りと執念は見事なものでしたが、それを演出したのは応援の力だったと思います。その時、追い詰められながらも東邦のアルプススタンドからの大音響のブラバンの応援は鳴りやむことがありませんでした。というよりも、ボルテージは最高潮。東邦のブラバンは、音は大きくきれいで、『最優秀応援賞』をあげたいぐらいの応援だったのですが、その応援に次第に満員に膨れ上がった観衆が乗っていきました。この試合は第3試合。そしてその次の第4試合に履正社vs横浜の試合が予定されていたため、球場は朝から超満員の観衆で膨れ上がっていました。朝6時半過ぎに球場に満員通知の出たこの日、第1試合から試合を見ていた観衆は、ちょっぴり暑さにやられながら、お目当ての試合が始まる前段階として、『ちょっぴりだれて観戦していた』ような感じがします。そして観衆は、優勝候補同士の待ち望んだ試合の”前さばき”的にこの試合を見ていたのではないですかね。 そして目の前のそんな試合の終盤の攻防を目にし『なんだかおもしろいことになっているぞ』ということで、『目の前で大逆転が見たい』ということのただ一点で、東邦のファンでも光星のファンでもない『普通の観客』が、東邦ブラバンの軽快な音楽に乗って、誰もかれも手に持っていたタオルをぶんぶんと振り回し始めたという感じです。次第に球場全体にこれが波及すると、それはもう、熱狂というか狂気というか、そんな『完全に正気をなくした状態』を球場に作り出しました。そして、その波は『甲子園の魔物』なんて生易しいもんじゃなく、『甲子園の悪魔』として、マウンドの桜井投手に襲い掛かっていったのだと思います。東邦の打撃に『すげー』と思いながらも、ワタシはマウンド上の桜井投手を本当に気の毒に思ってみていました。”大歓声”や”完全アウェー”の雰囲気なんて言うのは、ワタシも今まで何度も経験していますし、あの佐賀北vs広陵の決勝戦では、その異様な雰囲気にのまれた審判が、今までずっと取っていたストライクのコースをその回だけ全く取らなくなって大逆転を生んだ……なんていうこともあったりはしました。
しかしながら、この東邦vs八戸学院光星の試合の、『逆転が見たい』というだけの一般の観客が振りまくるタオルには、正直違和感を感じてしまいましたね。『おいおい、プロや国際試合じゃない、高校野球なんだぜ』とひとり呟いていました。
『観客全員が敵なんだな、と思った』というコメントを残した桜井投手、
そして『甲子園のもう一つの面を見た』といった仲井監督。悔しいことでしょう。しかしこれを糧に、また甲子園に戻ってきてくれることを、期待しています。


5.東北・北海道。やっぱり強くなってるわ。野球王国・四国にも復活の兆し。

毎年言われている『東北勢初めての甲子園制覇』。今年も悲願はなりませんでしたが、北海道勢を含めて北の猛者たちは、やはり年々たくましさを増していますね。昨年は仙台育英が優勝を手元まで手繰り寄せましたが、今年の東北勢は期待の春季東北大会優勝・東北が初戦で敗退して、当初は厳しいなあという雰囲気でした。しかし八戸学院光星、聖光学院、盛岡大付属の3校が覇を競い合うように活躍。いずれも素晴らしい戦いを見せて、『悲願の日は近し』を実感させてくれました。そして北の名門・北海の快進撃にも酔いました。クールに、粘り強く、そして力強く。駒大苫小牧が3年連続甲子園の決勝に進出して10年、なかなか甲子園で結果を残せなかった北海道勢にあって、老舗中の老舗である北海が復活を力強くアピールしてくれたのは、甲子園を吹き抜けるさわやかな風となりました。
一方かつての『野球王国』四国勢が、復権の兆しを見せてくれたのはうれしいことでした。春は高松商が準優勝に輝き、夏も8強で四国勢同士の明徳義塾vs鳴門という戦いがありました。かつてのきめ細かい『四商野球』に豪快な打力と投手力を兼ね備え、全国を席巻するチームが表れてくれることを、願ってやみません。


6.春の成績は、まったくあてにならない『夏の戦い』

今年の夏も、春までは実績を残せず燻っていたチームが、解き放たれたように大活躍をした大会でした。優勝を争った作新学院も北海も、このチームにおいては秋も春も実績を残せず、地方大会でも『本命』に上がらないようなチームでした。しかし春から”最後の夏”にかけての数か月間の”伸びしろ”は素晴らしく大きくて、最後は甲子園という地で『他校を寄せ付けない』強豪チームに仕上がりました。『夏にチーム力をピークに持ってくる』というのはどの監督さんも口にすることですが、それを実践するのは本当に難しいことですね。春の選抜優勝の智弁学園は、春以降チーム状態がついに戻らず、夏の甲子園出場はつかんだものの、春ほどの力をこの大舞台で発揮することはできませんでした。準優勝の高松商は、春がチーム力のピーク。夏はエースを欠いたまま、予選の決勝で敗退。春の各地方大会で優勝した全国9地区の中からは、夏の甲子園をつかんだのは東北、前橋育英、星稜、履正社の4校。しかしこの4校とて、甲子園では履正社が2勝を挙げたのみで、結局8強には1校も残ることがありませんでした。各監督さんでいろいろとチームづくりの考え方もあるでしょうが、夏にピークを持ってくるためにどういったルートをたどってチーム作りをしていくのか?『1戦必勝』の高校野球であるからこそ、難しく永遠の課題なのかもしれません。


7.今大会のベストシーンは?

そんな今大会の心に残ったシーン。実にいろいろとありますが、一つだけ選ぶとすれば。。。。。。。。
そうだなあ・・・、大逆転やサヨナラのシーンもいくつか浮かびますが、ワタシの気持ちの中では、木更津総合・早川と広島新庄・堀の淡々とした中にギュッと素晴らしさの詰まった投手戦ですかね。両投手とも、本当に素晴らしい出来で、見ていて本当にテンポがよく楽しかった試合です。両投手ともに、『投げたくて仕方がない』とでもいうように、自軍の攻撃が終わると一目散にマウンドへ。誰もまだ守備位置にもついていない中、マウンドをいかにいとおしい場所であるかを示すように、大事に踏みしめていました。その姿は本当に印象的。いつまでも見ていたい、そんな気持ちを起こさせる、酷暑の中その場所だけ涼しい風でも吹いているような、そんなシーンでした。



そんな98回目の夏。
ワタシが選んだ、大会のMVP。


ー今大会のMVP-

【チーム】 作新学院
      見事な小針監督のチーム作りに、乾杯。打球の速さ、野手の動き。どれをとっても今大会NO1でした。

【個人】  大西投手(北海)
      最後まで、本当にかっこよくチームをまとめていました。魂の投球、見事でした。

【最高試合】北海 vs 秀岳館   
      手に汗握る試合でしたね。



ということで、今年も楽しい夏が過ぎていきます。
と思ったらもう、秋の大会が始まってるって?
見に行かなきゃ!!!




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