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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

第98回全国高校野球選手権大会 決勝  作新の風が、甲子園に吹きおこった!

2016年08月22日 | 高校野球

≪第98回全国高校野球選手権大会≫  ~甲子園~

【決勝】

作新学院(栃木) 7-1 北 海(南北海道)

作新学院 000 510 100 - 7
北 海  010 000 000 - 1




”超攻撃的”小針野球が開花! 
作新学院、盤石の54年ぶりV



作新学院が、決勝でも自分たちの野球を貫いて54年ぶりの全国制覇を成し遂げました。

晴れわたった空のもと、
この日も超満員に膨れ上がった甲子園。

その中で行われた『甲子園の超名門校』同士の決勝戦。
かたや初めての春夏連覇を成し遂げ、
あの江川の時代にも甲子園を席巻したイエロー軍団、作新学院。
こなた甲子園最多の37回目の出場を誇る、
北の超名門・北海。

甲子園の歴史にその名を刻む、
高校野球にとってなくてはならない名門校の対決に、
甲子園は沸き上がりました。

この日も先発は作新・今井、北海・大西の両エース。
現在の高校野球には珍しい『絶対的エース』で、
この大会をほとんど一人で投げ抜いてきた”鉄腕”同士の戦いです。

しかしこの日も『猛暑日』となった甲子園。
今や気候も年々過酷なものとなってきて、
かつては高校野球の代名詞でもあった『一人で投げ切るエース』というものは、
絶滅危惧種にはいる寸前ぐらいになってきているといって過言ではないでしょう。

しかし高校野球ファン、
とりわけオールドファンにとっては、
マウンドという孤塁を一人で守り通してきた”エース”という存在は、
それだけで気持ちの中で特別感が満載になってしまいます。

『つい応援したくなっちゃう』

というのが、
この日の両エースにふさわしい言葉。
そんな試合前のココロモチでした。

両投手ともにさすがに疲れが見え、
あまり制球が定まらない状態でしたが、
今井投手はクールに、
そして大西投手はリラックスした顔で、
淡々とマウンド上でこれまで以上に気迫のこもったボールを投げて立ち上がりました。

試合が動いたのは2回裏。
北海は2死1・2塁から9番鈴木がレフト前にタイムリー。
北海にとって『どうしても取りたかった』先制点をもぎ取りました。

前日の準決勝でも秀岳館に対して先制点を奪った北海でしたが、
結果的に勝負を決めたのはそのあとの3点目、4点目でした。

それだけにここからのチャンスでさらに得点を取りたかったと思いますが、
そこで飛び出したのが、
作新学院の鉄壁の守備。
これが北海への試合の流れを断ち切り、作新にペースを持ってくる、
非常に大きなビッグプレーとなりました。

2死1・2塁で北海・小野の放った打球は、
ショート横への痛烈なゴロ。
誰もが『抜けた!追加点だ』と思った打球でしたが、
それを作新のキャプテン・山本が横っ飛びで好捕。
すぐに1塁へ送球してアウトにとり、
北海の追加点を防ぎました。

このあたりが抜けて北海に追加点が入っていたら、
試合展開は全く違ったものになっていたでしょう。

『さすがは主将』
とうなってしまう、
チームを救うビッグプレーでした。


3回までどうにか無失点に切り抜けていた北海のエース大西は、
4回にピンチを迎えます。

この回先頭の作新の3番・入江に対して、
大西は追い込んでから見事なスライダー。
入江のバットがくるっと回って三振……と思えたのですが、
判定は『振っていない』とボール。
そしてその次のボールはアウトローへの見事なストライクで三振・・・・と思ったのですが、
これもボールの判定。

そして結局この入江を歩かせることになり、
そこから作新の猛攻が始まりました。

小針監督直伝の、
『チャンスと見るや、一気にかさにかかって攻めまくる』攻撃野球が凝縮。

藤野の2塁打で2・3塁とすると、
満塁から北海に珍しいミスが出て同点。

しかしこの判定も、
ビデオで見ると『???』が付く判定で、
北海にとってこの回は、
本当にツキがありませんでした。
(微妙な判定とは、無死満塁からのファーストゴロを1塁手がトンネル。同点にしたのですが、これがビデオを見ると全くボールに触れていない見事なトンネル。そしてそのボールは、1塁ベース手前でファールゾーンに転がっていったので、本来ならば『ファール』のはず。北海はベンチからいったんクレームを付けましたが、受け付けられずに同点となりました。)


その後は鮎ケ瀬、今井が連続タイムリーで逆転。
ここで北海は大西をあきらめて今大会初登板の多間をマウンドに送り、
その多間から山本が貴重なタイムリー2塁打を放ち、
まさに『あっという間』に5点をもぎ取りました。

それにしても、
本当に作新学院のここぞという時の集中打は見事。

今年のチームは、
長打が印象に残る感じでしたが、
それ以上に準決勝、決勝で見せた鋭い連打こそが、
このチーム、いや、小針監督の作る打線の真骨頂でしょう。


そしてこの点差に守られて、
152キロエースの今井は、
この日も見事なピッチングを披露。

強打の北海打線に全く付け入るスキを与えず、
完投で今大会を締めくくりました。

途中、抜ければひょっとしたら厳しくなるかというレフトへの強烈な打球は、
途中出場の2年生鈴木がダイビングキャッチ。
剛腕今井を盛り立てるバックも、
『今大会屈指』の素晴らしさを見せてくれました。

投攻守に、
本当にスキのない素晴らしいチームに仕上がり、
小針監督が秋に標榜した『このチームは夏の最後まで伸びる』を実践し、
54年ぶりに深紅の大旗を栃木の地に持ち帰りました。


作新学院といえば、
オールドファンには昭和37年の春夏連覇を達成したチームというイメージが強いと思いますが、
ワタシの世代には何といっても『江川の作新』として記憶されている学校です。

『江川卓の甲子園物語』
は雑誌や書籍で、
何度も何度も読み込んだ物語です。

もともと『江川ファン』だったワタシにとっては、
作新学院という名前は、
なんだか『江川のあまり思い出したくない歴史』とともにあるというイメージが強烈にこびりついています。

その当時の高校野球というもの、
そして江川を追いかけるマスコミやファンの物凄さから、
仕方がないといえばいえると思うのですが、
孤立する江川がとても気の毒で、
作新というチームは、
仲間はおろか指導者も、
本当になんだかなあ・・・・・・・というようなイメージがこびりついてしまいました。

江川があの夏の甲子園の最後の押し出しのシーンで、
江川憎しの急先鋒だった当時の1塁手から、
最後に『お前に連れてきてもらった甲子園だから、お前の好きな球を投げろ』と言われて仲間というのはいいものだと美談にされているシーンがあるのですが、
ワタシはずっと『そんなんだから全国制覇できなかったんだよ!』なんて思ったりもしていました。

そしてワタシが一番高校野球にのめりこんでいた昭和50年代、
作新学院は何度も甲子園までコマを進めながら、
そのたびに初戦敗退を繰り返していて、
応援している身にはため息を常にはかせる存在でした。

昭和54年ごろには、
選抜出場のエースクンが夏大会前に退部するなんていうことも耳にし、
『やっぱり作新は変わらんなあ・・・・・』
と思ったものです。

昭和50年代を経て60年代へ、
そして平成に入ってしばらく。

新世紀を迎えて5年、6年と経って、
関東の高校球界では、
『東海大相模と作新学院は、いつ夏の大会に戻ってくるのやら』
ということが言われた時期がありました。

両校ともに毎年いいチームを作ってきているのに、
夏の選手権には30年以上のご無沙汰というものが続いていました。

作新ははっきり言って、
迷走していたと思います。

”強豪”の名は、
いつしか”古豪”と変わっていました。

しかしそんな作新の長い負の歴史は、
一人の若き指導者の出現で、
ピリオドを打つことになります。

そう、小針監督です。

06年になんと23歳の若さでこの名門の監督に就任したこの若き指揮官は、
その情熱と卓越した理論で名門に大改革をもたらしたと思います。

小針監督の就任時、
それはそれは外野の声はかしましかった。

しかし、
結果が出ていない現状を見るに、
『若い彼にかけてみる』
という長いファンの声も、
多く聞きました。

そして。。。。。


それまで基本を忠実にした、
守りを固めるトータルなオールドスタイルの野球がチームカラーだったチームは、
本当に劇的に変革を遂げました。

最初に甲子園への出場を果たしたのが09年。
チームとしては実に31年ぶりの夏の甲子園でした。

その大会では、
このあまりにも若い(当時26歳)指揮官が、
何か溌剌と采配を振るう姿に、
『作新はこれから、大きく変わるかもしれない』
という予感めいたものを感じました。

そして2011年。
強打を軸に4強まで進出。
鮮烈な印象を残し、
『作新・新時代』
を強く印象付けました。

そのあとはもう語るまでもなし。

その年から6年連続の夏の甲子園出場。
あの『夏は勝てない』作新の姿はどこへやら。
『夏は絶対に負けない』チームになって、
夏の甲子園を年中行事とすることに成功しました。

そして小針監督は、
次なるステップを模索していたと思います。

小針野球は、
本当にきっぷのいい攻撃野球。

この野球を見た特に少年たちは、
必ず引き込まれてしまう素晴らしい野球です。

しかしさらに上位に行くためには、
太い大黒柱が必要だったと思います。

毎年いい投手はいるものの、
結局負ける試合では≪投手力の差≫というものを痛感していたであろう小針監督。

『打撃、守備では決して負けていない。ああ、江川のような投手がいたらなあ・・・・・』
というのは、
”作新土手ファン”の偽らざる心境だったのではないでしょうか。


そして今年。

ようやく『太い大黒柱』である今井投手が、
夏までずっと進化を続け、
ついに夏の甲子園で覚醒しました。

あの江川と見まごうような152キロの『大会最速』の速球を投げ込み、
コントロールも決して乱れることはなく、変化球の精度も抜群、
そして何より『ハート』の部分でも大黒柱の太~い存在そのものになりました。
優勝投手にふさわしい、
今大会NO1ピッチャーとなって、
強打のチームの守りを一手に引き受けました。

最高にバランスのいいチームになって、
この甲子園を駆け抜けた!
それが今年の作新学院のチームでした。

ワタシは作新学院というより、
小針野球の大ファン。

いつか大きな花を開かせたらいいなあと思っていましたが、
今年がその時でしたね。

これからどんどん、
『甲子園の名将』への道、
歩んでいける存在だと思っています。


それにしても、
80年代、90年代、00年代と3年代にわたって甲子園をつかめず、
苦労に苦労を重ね『関東高校野球七不思議』にも数えられた、
作新学院と東海大相模。

昨年東海大相模が全国制覇を成し遂げたと思ったら、
今年は作新学院が全国制覇。

やはり、
『心を折らず努力を続けていれば、いつか苦労というのは報われるもの』
ということを教えてくれているようで、
素直にうれしい気持ちです。

おめでとう!!!


それにしても関東においては、
本当に北関東勢が強くなりました。

新世紀に入って16年、
その間に、
茨木、群馬、埼玉(選抜)、
そして今回栃木が全国制覇を成し遂げました。

かつては関東大会では、
『神奈川、千葉が抜けていて・・・・・』
ということも多かったのですが、
今や『優勝候補は北関東勢』ということが続いています。

各県がそれぞれに活躍を続けているので、
いい相乗効果が出ていて、
ますます好回転になっていっているのでしょうかね。

この作新もそうですが、
前橋育英や常総なども、
基本は地元の子供たちの集まりというチーム構成です。

それでもこれだけのチームを作れるのだということに、
現在の高校野球の傾向に一石を投じていることは、
確かなのではないでしょうか。

北関東のチームの今後も、
また楽しみになってきました。


さて、
北海高校についても少し。

見事な準優勝だったと思います。

連続出場ながら昨年はこれ以上ない大敗で開幕戦を落としたチームでしたので、
ここまでの大躍進は正直予想できませんでした。

しかしこのチームも『ぶっとい大黒柱』である大西投手を、
ナイン全員がレベルの高い守備と打撃で支え続け、
見事に決勝まで上り詰めてきました。

よく甲子園出場の監督さんが言う言葉に、
『ここ(甲子園)までくるチームは、どこも強いですよ』
というものがありますが、
その言葉をじっくりかみしめたくなるチームでした。

『普通ぐらい』に見えるチームも、
潜在能力というか、底力はどこもすごく持っていて、
ひとたび大会の波に乗ると、
頂点まで駆け上がれるポテンシャルは十分持っているんですね。

おみそれしました。

それにしても大西投手。
素晴らしすぎる『イケメンエース』でした。

しばらくは帰道しても、
ファンに囲まれて大変なんじゃないですかね?

彼の今後の活躍、
本当に楽しみです。

北海高校も、
ワタシのイメージの中では『負け続けたイメージ』しかありません。

岡崎投手、玉熊投手という技巧派の好投手を擁したときに8強まで進んできましたが、
それ以上を狙えるようなチームなのかは、
ちょっとわからないという感じを持ったりしていました。

しかし今年のチームは、
攻守にキレを感じる、
粘り強いチームでした。

いい夏になりましたね。

これからが本当の名門復活です。

北海道には、
駒大苫小牧をはじめ、
新興の強豪チームがわんさかと揃って、
なかなか甲子園に出てくるのも骨が折れる状況ですが、
『やっぱり北海道の高校野球は、北海なんだ!』
ということを高らかに宣言したこの夏でした。


とにかく、
今年もいい大会でした。
大会のまとめは別の項で。


作新学院!

優勝おめでとう!!



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