≪第98回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望7 東海地区 -
【静岡】(参加112校)
"王者”静岡を追うバランスの取れた好チームたち。静岡は包囲網を突破できるか?!
◎ 静岡
〇 東海大静岡翔洋 藤枝明誠
△ 常葉大菊川 常葉大橘 磐田東 聖隷クリストファー
▲ 飛龍 島田商 浜松商 静岡商 静清
選抜で優勝した大阪桐蔭と大接戦を演じた静岡が候補筆頭。エース池谷に竹内、鈴木と投手の枚数もそろい、層が薄いとの声を払しょくしつつある。打線は選抜を見るまでもなく、強力無比。長打だけではなく足を使った攻撃も冴え、どのチーム相手にもまず5点は取る計算が立つのが強み。しかし組み合わせを見ると、初戦から強豪と当たり、息の抜けない大会になりそうだ。全校が目標としており、その大包囲網を突破して、大阪桐蔭へのリベンジマッチのキップをつかむことができるか。追う一番手は東海大静岡翔洋。元巨人の原監督率いる強豪は、平成に入って2度目の大舞台を視界にとらえている。春は県大会を制したが、この戦いぶりはしぶとく粘って勝利をつかむというもので、一番このチームに欠けていたもの。それだけに”原イズム”が浸透して迎えるフレッシュな夏に大躍進する可能性は高い。藤枝明誠も、突出した選手はいないもののまとまりの良い好チーム。組み合わせにも比較的恵まれ、上位進出は堅そうだ。毎年覇権争いの中心にいる常葉勢では、常葉大菊川が連続出場を狙う。監督交代の余波を受けてチームが落ち着かなかったが、全員がフルスイングしてくる打線は相変わらず他校の脅威だ。常葉大橘も昨年に比べると小粒。まとまりで勝負して、上位を目指したい。春4強の磐田東は勢いそのままに戦いたいところ。秋優勝の聖隷クリストファーは、初戦を勝ちあがるといきなり静岡との対戦となる。ここで王者を倒せば、一気に今大会の主役に躍り出る。浜松商、静岡商、島田商ら公立の名門校は巻き返しに賭ける。静清や飛龍など、毎年いい戦いを見せる強豪の動向にも注目だ。
【愛知】(参加188校)
選抜で自信つけた至学館。中京大中京、東邦、享栄、愛工大名電の”元祖私学4強”が打倒掲げて鋭く追う。
◎ 至学館
〇 中京大中京 東邦 享栄 愛工大名電
△ 愛産大三河 桜丘
▲ 栄徳 豊川 大府 愛知
センバツ前までは小粒なチームとの印象のあった至学館が、大舞台を経て大変身。夏も数多いる名門校を押しのけて、主役の座に座りそうだ。選抜では延長の末開幕戦に敗れたが、その経験は何と大きかったことだろう。選手はすっかり自信をつけ、その後の県大会、東海大会を解消して東海地区の頂点に立った。圧巻だったのは東海大会。中京学院大中京、静岡、大垣日大と強豪の名高い各校を相手に完璧な戦いぶり。特に静岡戦は強豪に対し19安打を放ち13得点。打線のレベルは一気に全国でも戦えるレベルになった。川口・新見の左右の投手でつなぐ継投もピタッとはまり、麻王監督が最も自信を持って臨める夏になった。しかしそう簡単に覇権は渡さないというのが愛知の高校野球界。
”元祖私学4強”は腕まくりをして至学館を待つ。ここ15年を見ても、夏の覇権を4強以外が奪ったのはたった一度だけ。それだけ”厚い壁”になっているのは間違いないが、今年その筆頭は中京大中京。秋優勝、春4強と力を蓄えており、スラッガーの鵜飼は高校通算50発以上を記録する長距離砲。例年通り頼りになるピッチャーも複数枚揃い、夏の連戦の戦い方を熟知するというアドバンテージも持つ。連覇を狙う昨夏代表東邦は、藤嶋を抱えた昨年よりはやや戦力ダウン。しかし春はきっちりと東海大会4強に進出しており、夏に向けてどんどん戦力は整ってくるはず。怖さという面では、上位校で一番だろう。享栄はベテラン柴垣監督で『名門復活』を目指し、ここ数年復調してきた。総合力で勝負するチームで、久しぶりの夏を手にすることも、あながち夢とは言えないだろう。3年間甲子園から遠ざかる愛工大名電は、悲願の『夏の甲子園1勝』に向けて、代表権を獲得したいところ。選手の質は4強でも突出しており、あとはそれをどのように一枚岩にしていくかだ。愛産大三河は、今年のチームはスケールが大きい。特に投手陣の質は高く、上位とそん色ない戦力を整えつつある。注目の好投手・原を擁する桜丘も”狙える”チーム。ただ信頼できる投手が原のみで、大会終盤の戦いにはやや不安を残す。このところ力を伸ばす豊川や、名門の大府は逆転を狙い巻き返しを図る。愛知には主砲・出口がいる。果たして何発スタンドに叩き込んでくれるのか、注目だ。
【岐阜】(参加68校)
春の陣を経て、大垣日大の力が他校を完全に上回った。中京学院大中京は、連覇に向けてひるんではいられない。
◎ 大垣日大
〇 中京学院大中京
△ 県岐阜商 麗澤瑞浪 美濃加茂 岐阜一
▲ 土岐商 市岐阜商 多治見 益田清風 関商工
大垣日大が、一冬超えて完全に他校を上回る戦力アップに成功した。県大会を制した勢いに乗って東海大会でも準V。なんと監督歴50年の阪口監督が指揮を執るが、今のところ他校の追随を許さない情勢で、一気に代表を取りに向かう。阪口監督が得意とする投手陣の整備においては、今年も2年生の修行が伸びてきてエースの座を奪った。阪口監督好みの右の本格派で、マウンドさばきとプレースメントに優れた好投手だ。援護する打線も鋭い振りが目立ち、得点力は高い。今のところ、死角は全く見当たらない。追っていくのは昨年の代表校である中京学院大中京だ。校名変更で、現校名では初めて臨む夏となる。昨年のように『どこからでも長打が飛び出す』打線ではないが、甲子園経験者が投打ともに残ってチームの軸を形成しているのが強みだ。名門の県岐阜商は、夏の強さを見せたい。守りからリズムを作る、高校野球のお手本のようなチームだ。麗澤瑞浪は、アンダースローのエース伊藤の出来にかかる。秋は準優勝しており、はまった時は覇権争いに顔を出せるチームだ。美濃加茂は久々の復活に向けて戦力は充実。岐阜一は名将・田所監督が指揮を執り、『来年勝負をかける』下級生メンバーで今夏は臨む。どこまでやれるか。土岐商、市岐阜商ら、公立勢も虎視眈々。秋見事に優勝を飾り選抜出場の多治見は、報徳学園戦の惨敗の記憶が生々しいが、どこまで精神的に立ち直っているか。
【三重】(参加63校)
本命なき、大混戦の戦国大会。夏に強いいなべ総合が、とりあえずの本命か。
◎ いなべ総合
〇 近大高専 津田学園 菰野 三重 海星
△ 津商 宇治山田商
▲ 松坂 伊勢工
昨年甲子園で春、夏ともに存在感を発揮したいなべ総合。”特別なチーム”だった昨年と比べて、やはり今年は若干力を落としているのは確かだろうが、夏に強い過去の戦いぶりからも県大会の中心にいるのは間違いない。クリーンアップは昨夏の甲子園を経験しており、エース赤木も故障から復活。徐々に連続を狙う態勢は整ってきた。春優勝を飾ったのは近大高専。しぶとさでは負けないチームで、激戦になればなるほど、その存在感を表すことになるだろう。準優勝の津田学園は、昨夏も準優勝。コンスタントに県大会で結果を残しているところは買える。さほどチームの際立った特徴はないが、実戦向きのチームだ。一方、しぶとさよりも選手個々のクオリティーで勝負するのが菰野。岡林、中村と投手陣に柱ができ、戦いが安定してきた。岡林は打っても通算30発を超すスラッガー。三重は14年の甲子園準優勝から音沙汰がなかったが、今年は復活する気配。エース定本の球速が伸びて勝負できるようになってきたのが好材料だ。優勝すればなんと98年以来という名門、海星も復活の兆し。エース大須賀の出来次第か。2年ぶりを狙う津商は、相変わらずの全員野球で今年もチーム力は高い。春は4強に進出しており、夏も十分に勝負できる。宇治山田商は選手の質の高さは折り紙付き。いずれにしても、10校程度の『候補』がひしめき合って、どこが優勝してもおかしくない大激戦が繰り広げられる、目が離せない大会となりそうだ。