≪第88回選抜高校野球大会≫ ~甲子園~
【決勝】
高松商 000 000 010 00 - 1
智弁学園 010 000 000 01×- 2
素晴らしい決勝戦でした。
手に汗握る展開で、
智弁学園の初優勝へかける思いが、
わずかに上回ってサヨナラ勝ち。
甲子園の高校野球というものの醍醐味を、
これほど堪能させてくれたゲームというのも、
選抜では本当に珍しいと思いましたね。
勝った智弁学園。
とにかく村上投手が素晴らしかった。
最後は自らがサヨナラタイムリーを打って決めましたが、
5試合を一人で投げ抜いて、
わずか3失点。
その伸びのあるストレートと切れ味抜群のスライダーに、
低めの制球力とピンチでギアを一段上げる勝負強さ。
高校野球の投手として、
これほど完成された投手は珍しいというほど、
安定感抜群でした。
何しろ開幕試合の緊張感の中での投球から始まり、
2回戦からは鹿児島実、滋賀学園、龍谷大平安、高松商と名うての強打のチームを向こうに回しての好投ですから、
掛け値なしの見事なピッチングでした。
まさか智弁学園が頂点まで駆け上がるとは、
思ってもみませんでした。
敗れた高松商。
敗れたとはいえ、
名門校の矜持を、
そして”四国四商”のプライドを存分に見せてくれた、
いい春となりました。
まさに『華麗なる復活』と言えるこのセンバツでした。
これまで幾多のOBが、
この名門校を立て直すために尽力してきたと思います。
それほど『低迷』という言葉がかぶさっていた高松商。
『そのユニフォームを着て、そんな試合するとは、なんだ!!』
というOBの叱責が、
聞こえてくるような試合ぶりも多々ありました。
しかしながら、
”中学球界の名将”長尾監督が就任して、
一からチームを見つめなおし、
華麗なる復活につながっていったのだと思います。
そのあたりの”秘訣”については、
この後『快進撃の秘密』がどこかから出版されると思いますので、
じっくりと読んでみたいと感じているところです。
高松商の復活劇は、
全国の現在低迷している『かつての強豪』、
現在の名を【古豪】と呼ばれているたくさんの学校に、
何かのヒントを与えたのではないでしょうか。
松山商・徳島商・高知商の”四国四商”をはじめ、
広島商、鹿児島商、横浜商など、
このところ甲子園には縁遠くなってしまっている古豪たちに、
『俺たちでもできる』
という光を与え背中を押すのなら、
この高松商の復活劇は、
なんと素晴らしいことでしょうか。
ワタシはこの大会前、
長年高校野球を見ていながら、
なんだか変わりつつある高校野球というものに、
少し醒めた気持ちを持ってしまっている自分に気が付きました。
それはここ10年ぐらいの間、
ずっと気持ちに引っかかっていたこと。
そしてここ数年間、
とても顕著になってきたこと。
それは、
高校野球の”定型化に伴う変質”ということでした。
高校野球が、
大学野球のようになったとでも言おうか、
とにかく『選手の集中』と『学校による序列化』が顕著になってきたということ。
そして、
大会も『さまざまな要素は排して、ただ選手を集めて強化した、バカ強いチームが勝つ』という『予定調和』の世界になってしまっているのではということ。
もちろんそれは、
否定されることではありません。
プレーする選手にとっては、
自分の人生の中で、ただの2年半しかないこの高校野球という期間。
その期間を、最高の環境を選択し、
その中で自分を鍛え、
高みに上って行くためにプレーをすることは、
称賛されこそすれ、
全く否定されることではありません。
まさにアスリートとしては、
『あったりまえ』
のことです。
当の選手達のひたむきなプレーについては、
本当に今も昔も、
なんら変わるところはありません。
そして今の情報化社会、そして移動手段の高速化の中で、
選手が生まれ故郷のチームを離れ、
より高いレベルを求めて様々な地域に散らばること、
それは致し方のないことだと思います。
それこそが『時代の変化』なわけですから。
しかしながら、
なんだか気持ちがその辺についていかないというのか、
長いこと指摘されているような、
『学校経営の為に、高校野球のブランドを利用してチーム作りをする』
という学校がいわゆる高校野球界の”プロ監督”を雇い入れ、
その人脈でゴソッと選手を特定地域から入学させてきて、
短期間で結果を求めるやり方というのに、
どうしてもなじめないというのか、
その学校を心からは応援できないというのか、
そういうココロモチなわけです。
ファンの勝手な言いぐさなんですが、
『せめて18人のベンチ入りがいたら、半分か1/3ぐらいは、地元出身の選手を使えよ』
と思っちゃうんですね。
実際に現場でやっていると、
2,3か月もすれば、
その選手がどこ出身だなんて、
だ~れも気にしていないと思うのですが、
なんだかそういう『クラブチーム的なチーム作り』を100%は許容できないという心理が働いちゃうんですよね。
『なんで”俺たちの町(県)の野球小僧”を集めてチーム作りが出来ないんだろうか?』
『せめて半分ぐらいは、その地域の匂いを残せよ!』
なんて思ったりするわけです。勝手な言いぐさですがね。
でも、そうやって高校野球は人気を博してきたわけだし、
今や『日本の文化の一つ』まで上り詰めている訳なんですから。(異論もあろうと思いますが、少なくともワタシは、そう思っています。)
例えは適切でありませんが、
自分のひいきのプロ野球チームが、
全部外人選手でチームを組んでいるとすれば、
何だか応援にも熱の入りがイマイチになる・・・・・なんてことでしょうかね。
サッカー界では、
かつては高校サッカーが主体でしたが、
Jリーグが発足して以降、
Jユースチームの方が有力選手を多数抱えて、
圧倒的に優位な立場を築いています。
この20年、いや、10年と言っていいかもしれませんが、
両者の立場は完全に逆転しています。
サッカーのプロを目指す選手は、
『まずはJユースを目指し、昇格できなければ高校へ』
という流れのように聞きます。
しかしながら、
Jリーグがその理念に掲げているのは『地域密着』。
ユース時代から『プロ選手を育て上げる』ためにユースチームを運営しながらも、
その理念である『地域密着』は外さず、
地域をまたいでの選手獲得などはやっていないように聞いています。
あくまでも『その地域の選手は、その地域のJユースへ』ということのようです。(深くは知りませんので、間違っていたらごめんなさい)
そうであれば、
また応援にも熱が入るのですがね。
そしてそういう『地域性』の問題以上に、
全国的に起こっている『学校の序列化』もまた、
感じていました。
三田紀房さんと田尻賢誉氏の共著である『砂の栄冠 甲子園研究所』という本の中でも指摘されていたのですが、
シニア・ボーイズといった中学硬式野球の有力選手が全国に流れているため、
高校野球の世界でもその時から連綿と続く『序列』みたいなものが生き続けていて、
最初から『アイツらにはかなわない』という様な深層の意識を生み出しているということがあるそうです。
そうであれば、
高校野球も他の高校スポーツと同じように、
『特定の強いチームが毎回栄冠を勝ち取っていく、予定調和の世界』
の始まりになってくるのではないかな?
そんなことを感じているのです。
そこに今回登場した、
熊本・秀岳館高校。
まさに『今風の強豪高校野球チームの作り方』の典型のようなチーム。
アマチュア球界では知らぬ者はいない鍛冶舎巧氏を監督に据えて、
学校が『やりたいようにやってもらう』環境を整え、
指揮官はそれに応えて中学時代に指導した硬式野球チームから選手をごそっと連れてくる。
そして彼らを鍛えに鍛えて、
わずか2年後には圧倒的な強さとともに甲子園の優勝を勝ち取る。。。。。
そんなシナリオだったと思います。
選手達は中学野球ではジャイアンツカップをはじめ、
全国で5冠を達成したとか。
そんな『壮大な実験』でしたが、
その野望は寸前で成就することはできませんでした。
選手達はさすがに素晴らしいスキルを持った選手が多く、
将来プロで活躍する選手もいることでしょう。
采配もデータを駆使した今風の野球で、
とても甲子園初采配だとは思えませんでした。
まさにデジタル時代の素晴らしい『結果の出し方』だとは思いましたが、
果たしてこのチームが、
熊本県を熱狂の渦に巻き込んだのでしょうか?
熊本の人に、聞いてみたいところです。
一方この秀岳館を破った高松商。
決勝での熱狂的な応援の数々、
そして地元での熱狂ぶりを見ると(ワタシは四国に深く関係があるので、その熱狂ぶりは逐一伝えられてきました。)、
『ああ、やっぱり高校野球というのは、地元も巻き込んでなんぼだなあ。。。。。』
という思いを強くしたものでした。
もちろん高松商は県立ですから、
地元の”野球小僧”を集めることは出来ても、
全国的に”スカウト網”を敷いて選手を集めてくることはできないチームです。
その彼らが勝ち上がってきたところに、
なんだか『高校野球、まだここにあるぞ』なんて言う思いと感慨を持った、
ワタシなのです。
高松商の快進撃は、
本当にうれしかった。
一方『不遇の名門』であった智弁学園の優勝についても、
『本当によかったなあ』
と思っています。
智弁学園についてはよくは知りませんが、
長い間その力を落とさず、
いいチームを作り続けていることは、
素晴らしいことだと思います。
もちろんチーム作りは、
『地元・関西の好選手が中心となったチーム』です。
そんな中で、
壁になっていた『ベスト4』を破り、
その勢いで頂点まで駆け上がったことは、
素晴らしいと思いますね。
たくさんいるOBも、
喜んだことでしょう。
そんなこんなで、
1・2回戦を見る限りやや低調な感もあった今年のセンバツは、
準々決勝からは接戦に次ぐ接戦で、
手に汗握る試合ばかりの盛りあがった大会となりました。
優勝の智弁学園、
そして準優勝の高松商と並び、
明石商の大健闘や海星の折れない心、
”センバツは左腕”という従来からの『定説』どおりだった龍谷大平安・市岡と木更津総合・早川のナイスピッチングなどが印象に残っています。
野球の、特に高校野球のすそ野は広い。
全国のどこにでも、
『鍛え上げ、這い上がり、強くなった』
チームが隠れているんだぞということが感じられる、
本当にいい大会となりました。
高校野球に、予定調和はない。
予測できないからこそ、面白いんだ!!!!
ということを、
完全に予想を外した高校野球オヤジがぼやいて、
この大会の締めにしたいと思います。
掛け値なしに面白い大会だった。
見事な優勝おめでとう!!智弁学園
(つけたし)
*最後に一つだけ。”プロ監督”だか”プロコーチ”だか知らないが、元横浜・小倉氏が選抜出場校の札幌第一を『臨時コーチ』として指導していたことが、新聞紙上などで語られていました。『だからこの学校、快進撃も!』なんていう記事が躍り、ワタシもちょっとだけ乗せられたりしていましたが・・・・・。
その彼のタブロイド紙に不定期で出しているコラムのなかで、大会前に『冬場の練習の成果を確認しに札幌第一を訪ねると、投手も野手も、まったく成長していない』なんていうものが躍っていたと思ったら、初戦敗退後のコラムでは『せっかく相手校を偵察して”小倉メモ”を作って渡したのに、スルーされた』なんて言っていましたね。ひどいね。
タブロイド紙とは言え新聞のコラムだからねえ。札幌第一の選手、それに指導者の方々に、同情します。あんまり『外部のもの』には頼らずに、自分で信じるチーム作りした方がいいように思いますよ。
なかなか難しい問題ですね。確かに今の高校野球は特定の学校が出る傾向が顕著ですもんね。まあ自分も秀学館は応援する気がしませんでした。出来たら本当に高校野球留学を制限したらいいでしょうけどね。100回大会に向けて考えさせられますね。
センバツ、よかったですねえ。思い出に残る大会になりました。宇部商も、また元気な姿見せてほしいですね。この前、下関商が出場していい戦いを見せてくれた時も、何とも言えないうれしさを感じました。
甲子園は、やはりファンにとっても特別なところ。今大会が終わってから、創刊号から収集している『報知高校野球』の古い号を引っ張り出して、その当時もいろいろな問題が指摘されていたことを、再確認しました。今もまた、甲子園、いや、高校野球が何度目かの『曲がり角』に差し掛かっていることは、確かだと思います。時代の変化を巧みに取り入れ、未来までこの”文化”が継承されていくことを、願ってやみません。
今回の高商の準優勝は、素晴らしかったと思います。
出身地以外のチームでこれほど応援したのは初めて。
特に、秀岳館戦の勝利は嬉しかった~。特にこの試合は勝ってほしかったです。 勝手に思ったことを書いてしまいました。これからも高校野球の記事 楽しみにしています。
いつも見ていただき、重ねてありがとうございます。
高校野球については、ずっとファンなもので、つい熱くなってしまいます。(まあ、相撲についてもですが・・・・)
色々と考えることが多い、昨今のスポーツシーンですね。これからもよろしくお願いします。