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◇第93回全国高校野球選手権神奈川大会
【決勝】
桐光学園 000 000 100 0 1
横 浜 000 010 000 1× 2
そぼ降る雨の中、
いよいよ始まった決勝。
横浜は今大会絶好調の2年生エース、柳。
対する桐光は大会中にぐんぐん力を伸ばした1年生左腕、松井。
両投手の出来が命運を握ると感じられた立ち上がりでしたが、
その立ち上がりは甲乙つけがたく安定感抜群で、
静かなる決勝となりました。
やや桐光が押し気味に進めた5回、
先制したのは横浜でした。
この回先頭の樋口がたたいた打球はライトの頭を大きく超えて2ベース。
ノーアウト2塁のチャンスを迎えます。
ここで桐光が驚きの継投。
わずか2安打を許しただけの松井から、
ここでエースの柏原を送り込みます。
投手経験まだ1年半。
しかも桐光では珍しいたたき上げの柏原。
しかし彼は、
MAX147キロの伸びるストレートを持つ豪腕。
その柏原がまだマウンドになじむ前に、
横浜・渡辺監督が動きました。
送りバントでチャンスを1死3塁に拡大したあと、
今年の横浜の特徴である【スクイズ】を敢行。
見事な攻めで、
チャンスを絶対に逃さず1点を先取しました。
例年に比べて攻撃力がやや落ちるとの評もある今年の横浜でしたが、
細かい技は例年以上に『練れた』印象で、
得点力は高いと思います。
特にしびれるような接戦での1点を取りにいくときのその精度の高さ。
『さすがは渡辺野球』
と唸ってしまいます。
チャンスに1本が出ない桐光のチャンスは7回。
先頭の鈴木が、追い込んでからやや気を抜いた柳のはずし球をたたいてレフト前へ。
しっかりと送ってバッターは【脅威の6割打者】柏原。
彼が期待にこたえてレフト前へ持って粋1・3塁とチャンス拡大。
桐光が最も頼りにする主将・伊東に打順が回ります。
伊東はここで高々とレフトへ犠牲フライ。
大歓声に迎えられ、
鈴木が同点のホームを踏みました。
ここからは両校のしのぎあい。
9回は表の桐光が2アウト1・2塁のチャンスを作りますが、
ここで横浜のうった1手は【必殺継投】。
左打者・神保に対して、
今大会絶対の信頼を置く相馬をマウンドへ。
この相馬が、
自信満々に神保を三振に抑え、
勇躍ベンチに戻ってきました。
その裏の横浜。
高橋のDBからチャンスを拡大し、
1死満塁。
1打サヨナラのチャンスでバッターは中瀬。
横浜応援団のボルテージは最高潮。
桐光応援団の悲鳴もこだまします。
しかしここで柏原があらん限りの力を振り絞り、
中瀬を147キロの剛球で三振。
続く青木をセカンドフライに討ち取り、
ガッツポーズのまま雄たけびを上げ、
ベンチに帰りました。
『神奈川NO1は俺達だ!』
の叫びが聞こえてくるようでした。
延長に入った10回裏。
最後は横浜の『主役達』がグラウンドで踊りました!
2死を簡単に取られた後、
キャプテン乙坂が
気迫の2ベースで出塁すると、
高橋がライト前に繋ぎ、
最後は主砲・近藤が決めました。
センター前へ、
祈りをこめた打球が抜けた瞬間、
横浜が3年ぶりの甲子園を決めました。
今大会苦しみぬいた近藤が決めた、
横浜にとってはすばらしい最後だったと思います。
乙坂主将が優勝インタビューで涙ながらに言っていた、
『いろいろな方からプレッシャーを受けて・・・・・・』
思わず出た本音でしょう。
名門の主将。
しかもセンバツでの完敗など、
苦しい時期が続いた中での優勝は、
喜びもひとしおだったでしょう。
この大会、
横浜は本当に苦しい戦いばかりでした。
楽勝だったのは初戦ぐらいのもの。
3回戦のY校戦から始まって、
常に終盤にしびれる場面を迎える試合ばかりでした。
山北、立花学園など、
普段の横浜であれば一蹴してしまうような相手にも、
最後まで分からない試合を続けました。
横浜創学館戦では、
頼みの投手陣が打ち込まれたシーンもありました。
しかし、
最後の最後まで粘ってしのぎきる。
こんな『横浜らしからぬ』試合振りを続け、
チームは本当に勝負強くなったと思います。
相手が強くなればなるほど、
横浜ナインもしっかりとした野球をやりきりました。
この日の桐光戦、
そして5回戦の東海大相模戦、
横浜野球の真骨頂が出た試合でした。
大事なところで守備の破綻、投球ミス、小技の失敗・・・・・・
横浜がこのチームで苦しんできた春までの姿は、
もうどこにもありません。
そして、
一番野球を野球らしく表現した、
『野球っていうのは、最後に1点かってりゃいいんだよ』
という言葉を一番体現したチームだったと思います。
そしてそのナイン達をうまく乗せ、
手のひらの上で躍らせていた、
渡辺監督の見事な采配も光りました。
全国の横浜ファン必見の、
今年のチームだと思います。
『あまり強くない』
といわれた年ほど、
渡辺監督の采配の妙が光る野球が見られますよ。
今年のチームは、
1996年のエース松井の年、
2000年のベスト8進出チーム、
2001年の畠山投手で日南学園・寺原を打倒したチームなどに、
ダブらせることが出来るチームだと思います。
渡辺監督は昨日の優勝インタビューで、
『神奈川のレベルの高さを全国に知らしめる』
と宣言してくれました。
チームに絶対の力はなくとも、
まとまりと采配で、
また甲子園に旋風を起こして欲しいと思っています。
神奈川代表として、
がんばれ!横浜高校!
優勝旗を奪え!!!
さて、
敗れた桐光学園。
またしても横浜の壁を越えることは出来ませんでした。
4度目の決勝での対決、
そして今年のチームでも秋・春に続く3度目の公式戦対決。
あと一歩まで追い詰めながら、
その一歩が超えられませんでした。
しかし、
今年のチームでのこの快進撃、
見事なものがあったと思います。
前評判は決して高くなかったものの、
今年のチームは全員の力が結集されていたと感じています。
これまでのチーム。
『これ』といった超高校級選手を抱え、力がありながらそれを発揮できず敗れ去ることが、
多かったと思います。
2007年の甲子園出場以来鳴りを潜めていたこのチーム。
今年は早い段階での敗退が続き、
なんとなくチーム自体が『ダウントレンド』にあるような感じがありましたが、
最後の夏で見事な戦いを見せ、
また『神奈川に桐光あり』を、
強く印象付けてくれました。
ほぼ全員が『自宅生』の桐光野球部。
そのポリシーを貫きながら、
夢の【全国制覇】に近づける日を、
心待ちにしています。
見事な戦いでした。
泣くな、柏原!!
さて、
激闘が終わっても、
高校野球はまだまだ続きます。
今日は西東京の決勝です。
東京は、
面白いことになってきました。
◇西東京決勝
日大三 VS 早実
◇東東京決勝
帝京 VS 関東一
両決勝共に、
地区最大のライバル対決となりました。
しかも今年の決勝、
両校共に戦力充実で、
甲子園でも上位を狙えるだけの力を備えています。
まさに【真夏の決闘】。
日大三VS早実
といえば、
何といっても2006年の決勝が思い浮かびます。
しのぎあいの末の延長決着でした。
この試合で春の関東大会優勝・日大三を破った"祐ちゃん"の早実が、
勢いに乗って全国制覇を果たしました。
帝京VS関東一
といえば、
1985年の決勝が浮かびます。
この年センバツ準優勝の帝京に対し、
小倉監督(現日大三監督)率いる、
初出場を狙う関東一のほとばしるような気迫が、
帝京の絶対エース・小林を打ち砕いた試合でした。
両対戦とも、
目が離せません。
さあ、観戦だ!!!!!