この前の水曜日に映画を観ました。
こちら。
関東大震災の直後「朝鮮人が日本人を集団で襲っている」「火をつけて回っている」「井戸に毒を投げ込んだ」
などの流言飛語が流れ…
それから身を守るためだということで、在郷軍人会や青年団などによって「自警団」が作られて…
在日朝鮮人が「自警団」の人々などによって殺害される、という事件が、関東のあちこちでありました。
ウヨっている人は、その話こそが作り話で、デマだと言い…
それに乗っかって、東京都知事が慰霊の式典への参加を取りやめたり。
また今年は、内閣官房長官が、そういう事実は「政府としては確認できない」と否定する発言をして…
次第に「無かったこと」だという風に、歴史修正…いや改ざんがなされつつあります。
でも、国会図書館に保存されている「官報」などの公式文書にも記録は残っているし。
私自身、震災当時はまだ少年だった自分の祖父(川崎の市街地で被災)の口から…
自警団に襲われた朝鮮人の遺骸を「見物に行った」と、この耳で確かに聞いています。
この映画のタイトルになった「福田村事件」というのは…
讃岐(香川県)から関東に来ていた、行商人の一団が関東で震災に遭遇。
千葉県の、現在の野田市の一部であった「福田村」までやってきたところで…
竹槍や農具、日本刀などで武装した現地の人々から…
「言葉が通じない。不審だ。朝鮮人の集団なのではないか」と言われて…
(讃岐言葉は、あのあたりの「~だっぺよ」と言う人たちには外国語のように聞こえたようです)
興奮して群集心理に陥った集団によって暴行され、9人が命を落としてしまったという事件です。
犠牲者の中には、2歳、4歳、6歳の子どもたちも含まれていました。
実際手を下したのは、もう滅茶苦茶な現場で、誰が誰やら分からないという状態だったようですが…
在郷軍人会や青年団の人々、計6人が殺人の罪で、刑務所で服役する結果になりました。
ところが、たった2年5か月服役したところで、大正天皇の崩御に伴う「恩赦」を受けて、全員が出所しました。
さらに、こうした「田舎の闇」を垣間見るのは…
その「犯人」とされた人々の一人は、出所後に村長になり、さらに後に市議会議員になったということです。
この事件は、長い間歴史の闇に葬られていました。
被害者の人々が、被差別部落の人々だったために、生存者が故郷に帰った後「大事にするな」ということで…
口をつぐんでしまったのもあるようです。
ここ二十数年になって、事実が記録文書の中から発掘され、現地に慰霊碑が出来たのは西暦2000年。
野田市長が「個人的に哀悼の言葉を述べたい」と議会で述べたのは、今年、震災100周年の機会でした。
映画の中で何よりも印象的だったセリフは、行商団の親方が…
「朝鮮人だ」「日本人だ」の押し問答になった際に…
「朝鮮人ならころしてもいいってか!」と言った場面。
こうした凄惨な事件が起きたのも、そもそも、日本人の朝鮮人に対する差別やいじめが現実にあって…
「この騒ぎに乗じて、彼らが仕返しにやって来るに違いない」
という疑心暗鬼が生じたからです。
また政府や行政自体が「朝鮮人の襲撃」を警戒するように、関東近県の自治体に通達していたこと。
さらに新聞が「官」に迎合して、紙面で朝鮮人襲撃を煽るようなことを書いていた、という事実もあります。
権力に迎合したり、忖度して媚びたりする、今のマスコミと全く同じですね。
映画の終盤で、取材に来た新聞記者に村長が「頼む。書かないでいてくれないか」と懇願する場面。記者の…
「書きます。こんな事件が起きたのも、私たち新聞が真実を書かず、デマに加担したせいです」
「だからこんどは真実を書きます。それが私たちの罪滅ぼしです」
というセリフも、刺さりました。
今のマスコミ人にも、ぜひ観ていただきたいものです。
そして、すべての日本人にも観ていただきたい。
当時と今で、私たちの何が変わったのか。
もし今大変な災害や事件が起きて、まことしやかな噂が立って、多くの人々が不安や群集心理に陥った場合…
あなたは、どんな行動をとるか。
周りの「空気」に流されて我を忘れ、結局は隣の人と一緒に、子どもの体にまで竹槍や鍬を振り下ろす側に…
回らないと、本当に確信できますか?
100人の仲間のうち「ちょっと待て」と言う人が、たった2~3人で…
98人ぐらいが「みんなで一緒にやっちまおう!」と口々に叫んでいるような場面であっても?
そこまで「自分の意見」と「冷静な判断」を、押し通すことができますか?
考えさせられます。
ちなみに、繰り返しますが…
震災時の朝鮮人虐殺は、実際に多くの記録に残っている、覆しようのない事実です。
私のように、実際に見た人から直接話を聞いている人も、たくさんいます。
もちろん朝鮮人集団による「仕返しの暴動」や「井戸に毒を…」のような記録は、ただの一件も残っていません。
それが覆い隠され、事実の改ざんがなされようとしている現代。
私たちは、確実に危険な方向に向かっています。そのことを忘れないようにしましょう。
映画は各地の小さな映画館にかかって、入場者が思いの他多いため、まだ継続して上映されるようです。
スマホなどで調べて、観に行ける方は、ぜひ行ってみてください。