結婚するまで乗っていた、プジョー205GTIに「プーちゃん」。

(こちらの写真は実車でなく拾い物です)
今でも乗っている、アルファロメオ155 2.0TSに「メメ」。

妻の初代専用車、ルノールーテシアに「ルル」。

妻の二代目専用車アルファ156 2.0スポーツワゴンに「ロロ」。

妻の三代目の車として買ったのに、今やメインに近い形で使っているアルファ156 2.5V6に「ペッピーノ」。

機械とか、生き物でない物に名前をつけるのが子どもっぽいとかキモいとかいろいろご意見もありましょうが…
でも、マシンの特定の機種にニックネームをつけるというのは、かなり昔からある習慣ですよね。
日本では少し前まで、家電にまで「霧ヶ峰」だの「うずしお」だの名前をつけていました。
「ある個体」に名前をつけるというのは、それとは違うという方もいるでしょう。
でも、船舶に対しては歴史的に、固有の名前をつける習慣があったじゃないですか。
コロンブス(実際の名前はコロンボですけど)の第一回航海のときのサンタ・マリアとか。
日本でも平安時代ぐらいから、舟に〇〇丸という名前をつけていた記録があります。
軍艦だって(ほぼ)同じ設計で作られた同型艦でも、個別に名前をつけてたでしょ。大和、武蔵とか。

船だけじゃなくて、飛行機にも名前がついていましたよ。
かつての日航機は、ダグラスDC‐8型機には観光地の名前、ボーイング737型機には川の名前をつけるのが慣例だったそうです。
(ハイジャックされた「よど号」とか)
また刀剣に名前をつける習慣も、洋の東西を問わずありました。
天叢雲剣とか鬼切丸とか山鳥毛とか、エクスカリバーとかズルフィカールとかジョワユーズとか。
人間は、愛用するもので、ある意味「命を預ける」ことになるような性格をもつものには、特定の命名をしてきたのでしょうか。
だとしたら、文字通り命を預けることになる自動車に、特定の名前をつけて愛してやったって、そんなにおかしくないのでは?
という屁理屈はともかくとして、クルマに名前をつけたからって、笑われるほどのことではないかと。
で、うちの愛車の命名の由来ですが…
「プーちゃん」にかんしては、プジョーのプを取っただけの他愛ないものです。ご想像の通り。
「メメ」は、息子が幼児だったころ、アルファロメオと発音できずに「メメ」と言っていたことから来ていますが…
彼が生まれた朝、妻を産院まで運んだ車ですから、それ以前には別の名前がありました。

「ヴィットリオ」といういかめしい名前。
戦前、アルファロメオのレーシングチーム「アルファコルセ」のチーフエンジニアを務めて黄金時代を築いたほか…
終戦直後まで、レース用、ロードカー含め、アルファの名車のほとんどを生んだ天才エンジニア、ヴィットリオ・ヤーノからとりました。

先日の「オートモービルカウンシル」で見た、6C 1750 グランスポルトも、もちろんヴィットリオ・ヤーノの作品です。

戦前にはグランプリ以上の人気と権威を誇った公道レースで、勝って勝って勝ちまくった名車。
その栄えある名前も、息子の幼児言葉の可愛らしさには勝てませんでした。
「ルル」は、ルノーのル、です単に。笑
「ロロ」はなんとアルファ156の「6」から取ったもの(日本語かい!)笑
そして3か月ほど前に新しくお迎えした、優秀な新入りである「ペッピーノ」の名前は…

これに搭載されているガソリン内燃機関の歴史的名機のひとつ「ブッソV6エンジン」の設計者、ジュゼッペ・ブッソから来ています。

「ペッピーノ」というのは、実は「ジュゼッペ」という名のイタリア人の愛称なんです。
(昔の世界名作劇場のアニメ『母を訪ねて』に出てきた「ペッピーノ一座」は、座長さんの名前がジュゼッペだったんでしょうね)
アメリカ人のロバートさんが「ボブ」とか「ボビー」と呼ばれたり、ウィリアムさんが「ビル」「ビリー」と呼ばれたり…
日本で、健太郎君が「ケンちゃん」と呼ばれるのと同じですね。
つまり、ペッピーノもヴィットリオと同じく、アルファロメオの歴史上の功労者からつけられた名前なんです。
ちなみにジュゼッペ(ペッピーノ)・ブッソは、名高いブッソV6(ブッソーネV6)エンジンだけでなく…

105系ジュリアシリーズに積まれていた、これも名高いエンジン「アルファツインカム」の生みの親でもあり…

またアルファロメオの「ティーポ33」や「モントリオール」に積まれ、アルフィスタの伝説となったV8エンジンの設計も主導しました。

彼は、スクーデリア・フェラーリのエンジニアをしていたこともあり…
戦後フェラーリの最初の栄光を担ったV12エンジン、通称「コロンボV12」もまた、ジョアッキーノ・コロンボは下地を作っただけで…
実際に完成させる作業をしたのは、ジュゼッぺ(ペッピーノ)ブッソでした。
まさにエンジン開発の天才だったんですね。
というわけで我が家のペッピーノ君は、ちゃんとした由緒がある名前を、久しぶりにもらったクルマなわけです。

「メメ」が「ヴィットリオ」だった約10年間と、その後メメとしての約10年間、完全ノートラブルの超優等生だったのと同じく…
「ペッピーノ」も故障なく、元気で長持ちしてもらいたいです。