まずは、昨日のテレビニュースをひとつリンクします。
テレビ東京系で夜遅くに放送している『ワールドビジネスサテライト』という番組。
今のテレ東(テレビ東京ホールディングス)は日経新聞が筆頭株主ですし…
こうした一連のビジネスニュースには、見るべきものがある、と思っている人は少なくないかと。
こういうのを見れば「量子コンピュータ」が何かはよく(全然)分からないけれど、最先端の科学技術開発に…
ちゃんと日本の政府もお金を出して、科学技術立国の復活をまじめに考えているんだな、と感じますよね。
ちなみに、従来型のコンピュータとは全く違う、量子コンピュータの「仕組み」はともかく…
それがどんな期待を持たれているかは、こんな感じです。
量子コンピューターはスーパーコンピューターの1億倍以上の早さで複雑な問題を解き、脱炭素につながる素材や画期的な新薬の開発を実現する可能性を秘める。化学や製薬、自動車、金融など幅広い産業の競争力を左右する見通し。物質の電子の状態を精緻に予測して新機能の素材を開発したり、画期的な電池開発につなげたりする。
いかにも経済系の新聞記者が書いた、上手ではない説明というか…
どこかチャットGPTに書かせたっぽいような文章ですけれど、まあいいや。
現在はAIを改良し「育てる」ことに注目が集まっていますが…
それに続き、今後の全ての科学技術発展のカギのひとつとされているのが、この分野だと言っても良いでしょう。
そして、今はまだAIに比べてずっと「赤ちゃん」で、先行き不透明な量子コンピュータの開発の進展ですが…
やがてはAIそのものの進歩に関しても、大きな貢献をするのだと思われます。
産経新聞のデジタル版では、こんなことも報じられました。先月末の記事ですが。
日経クロステックの、去年1月に出た記事の一節には、こんな説明も。
そもそも日本には技術や人材に、一定の蓄積があります。現に、世界初の超伝導量子ビットのハードウエアや、特定の用途に利用できる「量子アニーリング」方式は日本発祥の技術です。現在も日本の研究者は世界の先頭を走る成果を上げています。
「量子アニーリング」の概念は、1998年に(四半世紀前、まだ日本の科学技術支援体制が壊れていなかった頃)…
当時東工大の大学院生だった門脇正史氏と、お師匠さんの西森秀稔教授が提唱したものです。
こういう書き方をされると、素人としては…
「ほら、やっぱり日本は最先端技術のトップに位置している国なんだ!」
とすぐ思ってしまいがち、ですが…
現実には上に挙げた記事の中の「一定の蓄積があります」というのは…
「過去に実績を上げてきた歴史があります」の耳障りの良い翻訳です。
「日本の研究者は世界の先頭を走る成果を挙げています」というのは…
「日本出身の」研究者の中には…と言う方が現実に即しているでしょう。
実態としては、人材の数も、研究資金も、国内の研究機関では圧倒的に不足しているようです。
ということを受けて、冒頭の西村経産相が昨日出した、一見頼もしい発表となるわけですが…
海外のライバルたちの、物量、資金量、人材の量に関して、推し量れる数字を挙げれば、こんな感じです。
米国は、年間約1900億円を量子コンピュータに投資。
中国は、今後5年間で約8000億円の投資計画を発表。
EUは、7年後の2030年までに約12兆円の投資を計画。
昨日、日本政府が胸を張って発表したのは、42億円。
開発の進展で、既に「米中に後れを取っている」という現状ではこの予算、ゼロが2つほど足りませんかね。
必要とされている100分の1の予算で、立ち向かえと?
日本人の頭脳は世界一優秀なのだから、何とかするだろうと?
それとも「大和魂」があれば大丈夫?
いやいやいや!こんなことだから、優秀な人材が海外の大学や企業の研究所に流れちゃうんでしょう。
「100倍の研究費と、10倍の給料を用意します」と言われて、それで自国で研究するのをやめた人を…
「愛国心がない」と責められますか?
あなたが研究者の立場で、現実にそう言われたらどうしますか?
たった42億円……しかも、それが本当に有効に使われるかどうかさえ、怪しいですよ。
日本での研究予算には、中抜きだ利権だと、チューチュー甘い汁を吸うアブラムシみたいなのが寄って来ますから。
反ワク論争はとりあえず置いておいて、mRNA技術を実用化するのに大きな貢献をした、ハンガリー出身の研究者…
カテリン・カリコ博士は、いったんは日本の製薬会社と契約して、研究するために来日していたのです。
しかし……
政府から下りると約束された研究補助金のうち、あまりに多くが使途のよくわからない使われ方をして…
実際に自分の研究に使えるのが、当初の約束の何分の一かになることを知って、不信感を持ち、米国に帰ってしまった。
あのとき彼女をつなぎとめて置けたら、某製薬会社は、今ごろ世界でトップの企業になっていたかも。
大魚を逃がしましたね。
目先の利得に目がくらんだ、先の読めないカネの亡者どものせいで。
先を読む力があったら……というかカネのことばかりでなく、科学のことをもう少し理解する知識(知性?)があれば…
つまらない中抜きや利権誘導で儲けたカネの、何百倍、いや何千倍という利得があったのに。
ジブリ映画『天空の城ラピュタ』で、悪役のムスカ大佐が、ラピュタの財宝に群がる軍人たちを見て言ったセリフ…
「バカどもにはちょうどいい目くらましだ!」
を思い出してしまいます。
ともかく、こんな現状を無視して、ただ「やったふり」をしたい政府の言葉だけを垂れ流しているようでは…
今のマスコミは、戦時中の「大本営発表」と大して変わりないですね、本当に。
狭い井戸の中に生きる蛙にとっては、それが外界の情報の全てだったりするんだから、怖いことです。
もっとも、井戸の外の世界で流れている情報も、すべて鵜呑みにしてはヤバいものばかりなんですけれど。
井戸の中と外の違いはひとつ。
「外」では、ちょっと教育を受けた人なら、ニュースにはすべて作った人のフィルターがかかっていて…
バイアスの全くない、完全に「中立な報道」なんてものは、この世に存在しないと承知している。
「中」では、それなりの教育を受けた人でも、権威ある報道機関が報じたのなら、疑問を感じない人が多いということ。
「中立」な報道がある、という幻想を信じていること。
(いったい何と何の真ん中なのか?)
受け手側ばかりでなく、送り手側にもそうした感覚がない。ないままに、ただビジネスとして報道をやっている。
これはやはり、学校教育の問題、大きな欠陥なんでしょうね。情報や報道に対する姿勢の誤りを導いてきた。
だから、報道にコロッと騙されたり、問題の本質から目をそらされたりしてしまう。
逆に送り手の方も、強いものへのおもねりから、多くの人を騙したり、視点をずらすような報道の仕方を簡単にする。
高市大臣の「辞めます」案件も、今度の岸田首相への爆弾?攻撃事件も、問題の本質から目を逸らして…
サル発言がどうしたとか、勇敢な漁師さんが容疑者を取り押さえたとか、あさっての方向に話題が逸らされてしまう。
単に「ウケる」ためだとしたら、大衆をバカにする→大衆がバカになる、のバカスパイラルですが、それはともかく。
そもそもメディア企業の幹部や重要人物が、権力を持つ人間から、接待で飲み食いを提供されるなんていうことは…
日本では日常的に、平気で行われていますけど、欧米だったら、もし発覚したら…
ジャーナリズムと権力の癒着、ということで、一発で首が飛ぶ案件なんですよ!
そもそも権力と癒着して美味しい思いをすることそのものが、よくないことだという認識が、庶民感覚としてない。
他人がやったら「抜け駆けしてズルい、妬ましい」だけど、自分のことだったらラッキー、という感覚。
……ということが、一昨日、父と食事していての会話で、改めてよくわかりました。
癒着できるものならして、美味しい思いをすればいい。それが利口な振る舞いだし、ラッキーなことだという考え。
正義感、倫理観、良心と矜持の欠如。
英語でいえば「integrity」の不在。
自分の親がそれなんだから、寂しいものです。いまこれを読んでいるあなたは、どうですか?
また脱線してきましたが。
いずれにせよ、科学技術ひとつとってもこうした現状があって、それを打破する機運が国内にないかぎり…
(根本的な仕組みから変えようという気概が、国民の多くに生まれない限り)
日本が、かつての栄光を取り戻すことは、絶対に無理でしょう。
科学と技術を武器に、かりそめにも一度は、世界で最も豊かな国民に登り詰めたんですけど、今はこのざま。
元首相をお手製の銃で狙撃したり、現首相にお粗末な手作り爆弾を投げつけたりする行為では、何も変わらない。
さらに「どうせ何も変わらない」と自分に対して言い訳をして、選挙に「さえ」行かないで…
社会のことを考えずに、自分の半径数メートルの世界の出来事に耽溺している人がこんなに多くては…
すべての分野でこの国は衰退して、国民は、持っているわずかなお金もハゲタカみたいな連中にむしり取られ…
いずれ若い者は、今まで馬鹿にしていたアジアの仲間の元へ、単純労働の仕事を逆にもらいに行くことになります。
(もう既に、オーストラリアに「ブドウの収穫」の季節労働者として行く日本人が出ています)
さもなくば、もう用済みの「金づる」=老い衰えた番犬ということで、事実上の「宗主国」様から見放されて…
「ウシ!いけ!」とけしかけられて…
大陸に向かって、国民総がかりで「バンザイ突撃」するはめになるか、ですよ。
ウソだ、そんなわけない、と思うのならしょうがないです。
それでも「なにもしない」ことを選ぶのなら仕方ないです。
でもそれじゃあ、後の世代に対して、あまりに酷い親、あまりに冷たい祖父母、だとは思いませんか?
「上の者」に向かって批判すること、怒ることを怖がるように…
学校とマスコミによって、こどもの頃から仕込まれてしまった私たちには、もうどうしようもないのでしょうか。
20歳前後ぐらいまでの世代には、完全に「仕込まれて」いない人も増えているように見えますが…
それでも、大人たちの愚かさ、社会のダメさ加減に「諦めて」しまっているみたいです。
どうすればいいんだろう。
「なるようになる」で済ませていると、確実に、ろくなことにならないのが分かっているのに……