2016/11/5 13:07情報元日本経済新聞 電子版
洋上風力発電所を沖合に比べて事業化を進めやすい港湾内に整備する動きが広がってきた。北九州市は北九州港(福岡県)で事業者を選定中。秋田、能代両港(秋田県)では丸紅を中心とする企業グループが事業化調査に着手した。国もルール作りなどで普及を後押ししており、国土交通省によると全国で9港が導入を検討している。
北九州市は北九州港内の2700ヘクタールを洋上風力発電の利用区域に設定。事業者の公募を10月に締め切り、現在は選考作業を進めている。2017年1月下旬にも事業者を決め、21年度に着工する予定だ。
秋田、能代両港では丸紅が特別目的会社(SPC)を設立した。大林組や東北電力子会社、秋田銀行なども参加し、現地で事業化調査に入った。出力は14万5000キロワットを想定している。丸紅は鹿島港(茨城県)でも事業化を検討している。
石狩湾新港(北海道)では風力発電開発会社のグリーンパワーインベストメント(東京・港)を中心とする企業グループが、出力10万キロワット規模の風力発電所を計画。20年春の稼働を目指している。
地元自治体は「洋上風力発電立地を機に、エネルギー産業を誘致するなど、地元経済の活性化につなげたい」(北九州市)考えだ。
洋上風力発電は安定して吹く海風を利用するため、発電効率の高い再生可能エネルギーとして欧州を中心に普及している。日本の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度でも、洋上風力は1キロワット時当たり36円と、大規模な太陽光(24円)や陸上風力(22円)に比べて高い価格を設定している。
しかし日本周辺の海域は利用ルールが曖昧な場所もあるうえ、漁業関係者との調整などに時間がかかり、福島県沖など実証実験段階にとどまっているところが多い。
これに対し港湾内は、原則として自治体が管理しているため、施設の設置に必要な手続きが明確だ。洋上風力発電に参入しようとする企業にとっては、事業が滞るリスクが減り、収益計画を立てやすいなどの利点がある。国も7月に施行された改正港湾法で、港湾内での洋上風力発電の事業者公募手続きを定めるなど普及を支援している。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、15年度末の国内の風力発電施設の発電能力は前年度末より6%増え、311万7000キロワットになった。これは原子力発電所3基分に相当する。洋上施設の整備が進めば、風力発電は今後さらに伸びる可能性もある。