パーティーは2時間予定されていた。すでに30分は経っていたが、
まだ時間はある。
芳雄さんの隣りに立ちサングラスの奥の目を見ていた。
最初、何を話していたのかよく思い出せない。
今日見た映画の事、『竜二』を残して亡くなった金子正次さんのこと。
松田優作さんのこと、桃井かおりさんのこと、・・そんな感じだったかなあ。
芳雄さんと僕の前のテーブルにはビールと日本酒が並べてあった。
芳雄さんに聞いた「バーボンの方が良かったんじゃないんですか?」
芳雄「うん、もうビールはいい。よし!バーボン飲むか!」
そう言ってマネージャーらしき人に「俺のバッグ、持って来て!」
そして、大きめのバッグを手にとり中からボトルを取り出した。
ワイルド・ターキー。
おもむろにキャップをひねって開け、テーブルの上にとんっ!と置いた。
「飲んでいいよ!」
僕に言ってる。
僕はただうつむいて「ありがとうございます」・・しか言えなくて。
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残ったビールを飲み干し、そのコップに2センチほど注いで飲んだ。
美味しかった!今まで呑んできたどんなお酒よりも・・・・
当たり前だ。これは正真正銘、芳雄さんが自分で飲むために買っていたやつ。
それを僕は芳雄さんより先に呑んでしまったんだ。
僕が一気に飲み干すのを見て、笑いながら芳雄さんが今度は注いでくれた。
僕はもう、舞い上がっていたんだ。
また、一気に飲み干す。
また、注いでくれる。
また、飲み干す。
芳雄さんが叫んだ。「もっと、ゆっくり飲め!ビールじゃないんだから。」
「すいません!」
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そろそろ、肝心な話をしなければ・・・・そう思っていたら、
「バンドはどんな曲をやるんだい?」
げ!げ!げ!驚きの逆質問やないかい。
僕「はあ。まあ、一応オリジナルを・・・」
芳雄「ちょっと、歌ってごらん」
僕「えっ!はあ、そうですね・・・・・・・」
オイオイ!俺が歌わされそうじゃないか!
いったい!どうなるんだー!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思い出の写真。左がやせてた頃の僕。左から3番目は映画評論家の
西村雄一郎さんですね。芳雄さんのななめ後ろに蓮司さんです。