当時ピアノを弾いていて没我できるっていう経験は全くなかったです。
弾いているピアノはクラブハウスのピアノだったり、
クラブの発表会ではいつも芦屋のルナホールだったので、
そこのグランドピアノを使いました。
オスカー・ピーターソンの曲をコピーしたのをやりましたが、
弾いていて結構楽しめましたが、
没我までは行きませんでした。
年令を重ねて、最近ベーゼンドルファーを
弾くようになって、ピアノのイメージが実に変わりました。
このピアノは実に歌うピアノです。
またとにかく鍵盤のレスポンスがいいので、弾き手が集中すればするほど
それに応えてくれるピアノです。
そして1時間のライブの中で一瞬のことですが、
体中に身震いするくらいの感動と集中が
広がる時があります。
これはもう言葉ではなかなか表現できないのですが、
自分の存在が、まさに目の間で鳴り響いている音の中に溶け込んでいくような
感動です。しかし別のところではその状態を
見ている別の視点があって、冷静にそれを
見ている自分もいます。ものすごい音に集中できるのです。
音は確かに弦から立ち上ってくるのですが、一種の静寂の中で佇んでいる境地です。
こういう境地はうまく演奏しようとか、聴いてもらおうとか
微塵も頭のなかになく、ただひたすら没我している自分がいます。
この瞬間はものすごく心地よく、演奏そのものに
深い喜びを感じます。
自分が出している音を自分で聴いているのですが、
その瞬間はストップモーションです。
この不思議な感動を味わいたくてライブをやっているといっても
過言ではありません。またそういう演奏の時に
見知らぬ聴衆者が演奏後声をかけて頂いて、
「感動した」と言っていただけます。
この感動をより深くさらに大きくしたいと思っています。
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