レバノンのヒズボラの拠点が空爆され、指導者のハサン・ナスララ師が死亡した。遺体に損傷はなく、爆撃の衝撃波による死亡と考えられている(Sputnik 日本 on X: "🎥 ヒズボラの指導者ハサン・ナスララ師が殺害された場所をレバノンのメディアが公開した。イスラエルの空爆で同師が司令官らといた本部の場所には巨大な穴が穿たれた。写真や動画はSNSで拡散されている。 ロイター通信のこれまでの報道では、ナスララ師の遺体はすでに運び出されている。 https://t.co/zcNPZwIcjs" / X 2024/9/29)。ナスララ師と他の幹部らは、「ベイルート南部の地下60フィート(約18メートル)に設置された地下壕に集まっていた」(「ナスララ師の殺害、どう行われたのか」 2024/9/29 ダウ・ジョーンズ配信)という。
このヒズボラの地下トンネルは、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)とイランの支援で造られたものだという(『「北朝鮮が掘ったクモの巣トンネルのおかげ」…イスラエルの猛爆にも持ちこたえるヒズボラ』 2024/9/27 中央日報)。大韓民国が地下施設を攻撃できるミサイル「玄武5」を初公開したのは、DPRKの地下施設も破壊できるというメッセージと見られている(『韓国軍が新型「怪物ミサイル」初公開 北への警告メッセージ』 2024/10/1 聯合ニュース)。
日本には、防御だけでなく攻撃用の巡航ミサイルを発射できるタイフォン・ミサイル・ランチャーが配備される模様だ(Sputnik 日本 on X: "【視点】日本の盾となる任務を負ったタイフォン 🇺🇸🇯🇵 2024年9月4日、来日中のクリスティン・ウォーマス米陸軍長官は、タイフォン・ミサイル・ランチャー(発射機)を含むマルチロール部隊の日本配備について話し合いが進められていることを明らかにした。 https://t.co/tkSSzOGshc" / X 2024/9/24)。攻撃兵器の配備となれば、日本に「敵国条項」が適用され、安全保障理事会の決議なく攻撃を受ける恐れもある。ピーター・ナヴァロ著「米中もし戦わば 戦争の地政学」(赤根洋子訳 防衛省防衛研究所主任研究官 飯田将史解説 文藝春秋p.228)には、『「抵抗力を高める」とは、「中国のミサイル攻撃の第一撃(特に、第一列島線上の基地インフラに対するもの)を確実に吸収できるようにすること」である、とトシ・ヨシハラは説明している』(注トシ・ヨシハラ氏:米海軍大学教授・アジア太平洋研究部長などを歴任)とあり、第一列島線に含まれる日本にミサイル・ランチャーが配備されれば、そこがミサイルの吸収スポットとなることが予想される。中華人民共和国の国防部は、米国の中距離ミサイルシステムを配備しないよう日本に警告を与えている(「中国国防部、ミサイル配備で米国に迎合しないよう日本に勧告」 2024/9/27 recordchina)。
ところが日本は、「国民保護法に基づき指定された避難施設は全国で約10万か所あるが、ミサイル攻撃の爆風から身を守る地下施設は約4000か所で全体の4%に満たない」(「シェルター整備促進へ、自民の議連が政府に働き掛け…台湾有事への懸念など念頭に 」 2024/8/12 読売新聞オンライン)。ヒズボラの例を見ても、地下シェルターがあれば完全に安全だとは言えない。衝撃波対策も必要だ。昨年、ロシア軍はウクライナ西部のリボフ近郊の地下120メートルにあったウクライナとNATOの共同指揮通信センターを極超音速ミサイル「キンジャール」で攻撃し、約300人のNATO将校が死亡している(詳細判明(但し非公式);約300人NATO将校が死亡 AFUの地下壕への攻撃、他 Gazeta ロシア語翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授) (eritokyo.jp) )。ロシア軍にはここまでの攻撃力がある。ただし、『米国ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、イスラエルは「新秩序(New Order)」と命名された今回の作戦に「バンカーバスター」と呼ばれる米軍の2000ポンド(907キログラム)級BLU-109など爆弾約100発を打ち込んだ』(「ヒズボラ首長ナスララ師の遺体収拾…損傷なく完全な一体だった」 2024/9/30 中央日報)とされる。地下施設の破壊には相当コストがかかり、そう回数はこなせないと考えられ、地下シェルターはあった方が望ましい。
ヒズボラは、ページャー(ポケットベル)等通信機器の爆発で多くの兵士を失った(「レバノンで2日連続爆発、20人死亡 ヒズボラの通信機器」 2024/9/19 日本経済新聞電子版)。7月には世界中でマイクロソフト社のWINDOWSに影響を与えてブルースクリーン現象になる障害があった(『世界でシステム障害、空港など幅広く クラウドストライクのソフト「ファルコン」起因か』 2024/7/19 日本経済新聞電子版)。イランの弾道ミサイルはイスラエルの防衛網を圧倒した部分がある(「イランのミサイル攻撃、イスラエル防衛網を一部圧倒=専門家」 2024/10/05 ダウ・ジョーンズ配信)。戦術と軍事バランスのパラダイムシフトが進んでいる。