自殺した竹内英明元兵庫県議会議員が調査していた阪神・オリックスパレード寄付金額リストが報道された(『【独自】自殺した兵庫県議が調査した「阪神・オリックスパレード寄付全額リスト」を公開する《生前に「斎藤知事最大のスキャンダル」と語っていた》』 2025/1/23 現代ビジネス)。カネの流れの調査中にでた犠牲者といえば、国の特別会計等の問題を追っていた石井紘基民主党議員刺殺事件が思い出される。神戸市に本社がある神戸製鋼所は金融機関などで総会屋事件が問題となった後の1999年まで総会屋に資金提供していた事件があった(『創業以来の「企業風土」に根付く「神戸製鋼」負の伝統』 フォーサイト-新潮社ニュースマガジン:時事ドットコム)。関西では悪事が温存される傾向にあるようだ。松井一郎大阪市長時代に発生した大阪湾のクジラ処理では、最大約1400万円減額の余地があったとされる(『大阪湾クジラ処理、担当外課長の関与「不適正」 外部調査』 2025/1/30 日本経済新聞電子版)。「水増し」された約1400万円はどこへ流れたのだろうか?
兵庫県知事選で斎藤陣営に関与したPR会社は西宮市にある。西宮市は銃撃事件があった朝日新聞阪神支局やグリコ森永事件の時のグリコ社長の自宅、雪印牛肉偽装事件が発覚する元となった西宮冷蔵があった-。朝日新聞銃撃事件は朝日新聞系の雑誌「朝日ジャーナル」が統一教会の霊感商法を追求している時期に起こった(「捜査対象でありながら事情聴取なく時効に…旧統一教会と“昭和の未解決事件”を結ぶ接点」 - 日刊SPA! - GREE ニュース)。グリコ森永事件も株価操作による資金獲得のためという説がある。雪印牛肉偽装事件は巨額の補助金詐欺事件に発展する。
関西では未解決の経済事件が多い。和歌山に本社があった阪和銀行の副頭取射殺事件、住友銀行名古屋支店長射殺事件は大阪にあった商社イトマン事件との関連が指摘されている。社長が射殺された「餃子の王将」は政治家の元秘書から多額の政治資金を要求されていたというが(「餃子の王将社長射殺事件」 一橋文哉著 角川書店p194~195)、引き出された資金はどこへ流れたのだろう。補助金事業が多い原子力発電所のある福井県高浜町では、関西電力若狭支社副支社長が反原発町長への襲撃を口にしたことがある(『関西電力「反原発町長」暗殺指令』 斉藤真著 宝島社p236)。2000年9月には、就任したばかりの日本債券信用銀行の社長が大阪市内のホテルで死亡しているのが発見された。自殺とみられている。
「闇社会の守護神」こと田中森一著「反転 闇社会の守護神と呼ばれて」(幻冬舎p208、232、234)では、「拓銀をつぶした男」と言われる経営者と親しい政治家として安倍晋太郎、竹下登、生長の家の玉置和郎、村上正邦(日本会議)、公明党矢野絢也(八尾市出身)、接待対象としては近畿財務局長、大阪府が出てくる。国会議員や大蔵官僚だけでなく、吉本興業とも関係の深い京唄子や横山ノックなどの有名人がその経営者からカネを受け取っていたことが書かれている。「拓銀はなぜ消滅したか」(北海道新聞社[編]p77~p78)では、債権の大幅カットが確実で、債権者に圧倒的に不利になるECCの和議に拓銀が同意したのは、「中岡はECCを通じて数百億円の資金を得て、その中から大蔵官僚や政治家ら幅広い筋にカネをばらまいていた。ECCが破産すれば第三者である破産管財人に財産管理がゆだねられ、そうした実態が明るみに出る。だからECCばかりでなく、中岡から資金提供を受けた政官界関係者としても何とか破産ではなく和議に持ち込みたかった。拓銀に対して、こうした政官界からの圧力があったとしても決して不思議ではない」と金融関係者が解説している。拓銀(北海道拓殖銀行)は1997年11月に経営破たんし、営業譲渡に伴い預金保険機構が総額約3兆4000億円を資金援助した。森友学園取引事件には親族で秘書だった安倍晋三氏、竹下亘氏(籠池氏の証人喚問を要求)、日本会議(籠池氏)、公明党の冬柴氏の次男、八尾市出身の松井一郎氏、近畿財務局、大阪府が登場する。中岡氏をめぐる人脈と森友学園事件の関係者は地縁、血縁などでつながるものばかりだ。森友学園事件に拓銀の時のようなカネの問題は存在しなかったのだろうか?大阪高等裁判所は森友学園問題に関する財務省の文書不開示の決定を取り消した(「森友文書、不開示を取り消し 大阪高裁で国が逆転敗訴」 2025/1/30 日本経済新聞電子版)。文書の開示によって新たな重要事実が出てくるのだろうか?
「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」(一橋文哉著 新潮社p120、204、265)には、有力企業舎弟の「ワシの仲間には東大出のエリートもいれば、大物政治家の秘書だった奴から元全共闘の活動家までいろいろとおる。カネ儲けの前には、左翼も右翼も関係ないわ」、警察内部から漏れ出てくる「政界や文化人の中に支持勢力を持っていて、すぐに捜査に対して抗議や圧力をかけてくる。」、「かい人21面相」からの手紙「おそらく、ボスの名前は永久に分からないでしょう。もしあなたがその正体を知ったら、驚くはずですよ。」といった文言が並ぶ。関西のカネの問題は、日本の政官界にはびこる制度化された裏の「システム」の問題のように見える。そのシステムを護るためには邪魔者には消えてもらいたいのかもしれない。しかし、今の日本にこのシステムを持続させるだけの経済・財政の余力はないだろう。