「安倍晋三回顧録」(安倍晋三著 橋本五郎(聞き手)、尾山宏(聞き手・構成)、北村滋(監修) 中央公論新社 p131)によれば、当時のオバマ大統領と「すきやばし次郎」で会食した時、雑談もしないうちに自動車の貿易問題の話になったが、米国の自動車会社の努力不足を指摘して話は決裂したという。恒常的に巨額の貿易赤字が発生するということは、国内で生産財に投資されておらず、労働者の賃金にもお金が回らないため消費にも寄与しないことを示唆する。そのため、米国から見れば国富の流出である。経済力がなければ軍事力も維持できない。米国の貿易赤字は対中国が最大だったが、日本やドイツに対しても赤字になっていた。多額の貿易黒字を抱える国が、赤字国の軍事力に頼るのは矛盾している。
安倍氏は首相当時、トランプ大統領にも経済対話や巨額の対米インフラ投資を提案したが、それ以降その話は尻すぼみになった。民間企業の米国産トウモロコシ購入に協力するという約束(令和元年8月25日 日米貿易交渉に関する日米両首脳の記者会見 | 令和元年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ)も結果は出せず、ライトハイザー米通商代表が数か月後に日米貿易交渉を再開すると議会証言した次の日に行ったきり、首相辞任会見をするまでは記者会見も行わなくなった(投資家の目線787(朝鮮半島情勢と安倍首相の辞任))。安倍氏は言ったことも実行しない「No Action Talk Only」の人だ。接待はできても、仕事はできない。
安倍氏はジョージ・ソロス氏から「そんなにトランプと仲良くしたら、いろんな批判を受けることになりますよ」と忠告されたが、「米国は日本にとって最大の同盟国だ。同盟国のリーダーと日本の首相が親しくするのは、当然の義務です」と反論したという(同書p248)。ソロス氏はオバマ元大統領と同様グローバリスト側、一方トランプ氏はそれとは正反対のアメリカ・ファーストである。権力者が変わればそちらに寝返るのは、日本人としては珍しくない処世術でも、欧米人にとっては理念に一貫性のない最も信頼できないタイプの人間なのだろう。
5月20日のrybar forceによれば、スロバキア内務省はフィツォ首相の暗殺事件では単独犯でない可能性を検討しているという。スロバキア首相暗殺未遂事件では、要人警護の甘さが指摘されている(「甘い要人警護、代行不在 スロバキア首相暗殺未遂の教訓」 2024/5/27 日本経済新聞電子版)。安倍元首相暗殺事件の時も警備の甘さが指摘されていた。