投資家の目線

投資家の目線1020(中東情勢の急展開)

 IAEAの機密報告書によると、イランは月に核爆弾1個分で高濃縮ウランを生産し、核爆弾計6個分を備蓄しているという(「イラン、高濃縮ウランの備蓄を急拡大 核爆弾6個分」 2025/2/27 ダウ・ジョーンズ配信)。イスラエルは年内にもイランの核施設を攻撃するとも報じられているが(「イスラエル、年内にイランの核施設攻撃計画か 米紙報道」 2025/2/13日本経済新聞電子版)、ここまで来て攻撃はできないのではないか?実際、トランプ政権はイランの原油輸出の妨害という経済制裁でことを解決しようとしており(『トランプ大統領、イランに「最大限の圧力」再び 原油輸出を阻害』 2025/2/5 日本経済新聞電子版)、国家の信用力に関わるイラン通貨の下落という成果は出ている(「イラン通貨、大統領就任後も3割下落 対米関係で不透明感」 2025/2/26 日本経済新聞電子版)。ただし、イランの人口の9割はイスラム教シーア派である。シーア派もいくつかの宗派に分かれるが、ハメネイ体制がシーア派のイスラム法解釈から外れたことをしなければ、体制を倒すことはできないのではないか?イスラム教に破門制度はないようだが、イスラム法を守っている政府を打倒しようというような人物は、キリスト教で言えば教会から破門を言い渡されるような、社会から爪弾きにされる人物だろう。

 

 トルコの反体制組織クルディスタン労働者党(PKK)が、1日に停戦を宣言した(「クルド反政府組織が停戦宣言 武装解除は明言せず トルコ」 2025/3/1 時事通信)。ガザ停戦交渉が動き出しているのと関連したものだろう(「イスラエル・カタール、エジプトへ交渉団派遣 協議開始」 2025/2/28 日本経済新聞電子版)。中東諸国がガザ問題解決の協力する代わりに、PKKにシリア内のクルド人勢力への支援を止めさせ、UAE、サウジアラビア、トルコ間の経済回廊開設の邪魔にならないようにするためではないのか?PKKも外部から資金などの支援がなければ活動できないだろう。トルコのイスタンブールでは、米ロ双方が在外公館の正常化の話し合いが行われたばかりだ(「米ロ、在外公館正常化で対話継続 トルコで高官協議」 2025/2/28 日本経済新聞電子版)。トルコには親ドイツの人が多いという。そのドイツでは「社会民主党」などの与党勢力が先の選挙で敗北したが、勝った「キリスト教民主・社会同盟」は「ドイツのための選択肢」を第2党に押し上げたドイツ人民の意思よりEUの盟主にしがみつくことを選択するようだ(『独保守、社民と連立折衝 「極右」阻止は一致』 2025/2/28 日本経済新聞電子版)。

 

 トルコのエルドアン政権与党の公正発展党は、首相も務めたエルバカン氏が率いた福祉党の後継政党に当たる。エルバカン氏はドイツのアーヘン工科大学で博士号をとる一方で、イスラム神秘主義ナクシュバンディー教団出身のヌルシー師が始めたヌルジュ運動の影響を受けていたと言われている。日本人のトルコ思想研究者がこの動きを、「和魂洋才」を捩って「イスラム魂洋才」と表現されていた。ヌルジュ運動は西洋の技術を積極的に取り入れて地力をつけるイスラム復興運動に思える。ナクシュバンディー教団は16世紀にマフドゥーミ・アーザムが「導師は民衆のみならず君主やその取り巻きをも教え導かねばならぬとして、政治への積極的関与を理論化」し、「ウズベク諸王朝だけでなく、東トルキスタンやインド、さらにはオスマン帝国でも大きな影響をふるう礎が作られていった」(「中央ユーラシア史 新版世界各国史4」 小松久男編 山川出版社p239)という。ヌルジュ運動がトルコ政治に大きな影響を与えるのは、このナクシュバンディー教団の伝統が影響しているものと考えられる。

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