10月27日の衆議院議員選挙で、自公与党は議席数が過半数を割る敗北となった。大規模政党の議席より、国民民主党やれいわ新選組のような比較的小規模の党の議席が伸びた。現在の有権者は旧来の勢力に飽き飽きし、目先の新しい勢力を求めているのかもしれない。
欧州でも旧来の政治勢力に代わって新しい政治勢力が生まれている。英国の選挙では保守党に代わり労働党が政権を取ったが、マスコミがポピュリスト政党と揶揄する「リフォームUK」が14.3%の得票率で5議席を獲得した(『「反移民」しか響かない 独英に押し寄せるポピュリズム 混迷のヨーロッパ(3)』 2024/7/31 日本経済新聞電子版)。ドイツでは「ドイツのための選択肢」が支持を伸ばし、フランスでは与党が左派と組むことで「国民連合」を第三勢力にようやく抑え込むことができた(「フランス下院選挙で極右失速、各国から安堵の声」 2024/7/8 日本経済新聞電子版)。オーストリア下院選でも極右と報じられる「自由党」が第一党となった(『欧州「親ロ派ベルト」形成も オーストリアで極右勝利』 2024/9/30 日本経済新聞電子版)。オランダも自由党が主導の政権となった(「オランダで極右主導のディック・スホーフ政権が発足 元情報機関トップが首相」 2024/7/3 日本経済新聞電子版)。欧州ではグローバリズムの進展で、価値観の異なる異教徒の移民に廂を貸して母屋を取られるような状況には耐えられなくなっているようだ。パレスチナでは移民のシオニストに母屋を取られているが。
モルドバのEU加盟路線の憲法明記を問う国民投票は、国内票は反対が多かったものの在外投票の賛成多数で逆転し、賛成(50.46%)が反対(49.54%)を僅差で上回った。大統領選はサンドゥ大統領がリードしたものの過半数に届かず、決選投票を行うことになった(「EU加盟路線、賛成50.46% モルドバ国民投票」 2024/10/24 日本経済新聞)。現在のEUは経済協定だけでなく、NATOを補完する軍事同盟の要素が表面化してきている。安全なところにいる在外居住者と違って、モルドバの国内居住者は対ロシアの最前線に立たされることになり、たまったものではないだろう。ジョージアの議会選では、ロシア寄りとされる「ジョージアの夢」が勝利した(「旧ソ連圏、強権ドミノの恐れ 深まるロシアの政治介入 本社コメンテーター 秋田浩之」 2024/11/2 日本経済新聞電子版)。ジョージアは2008年に西側の鉄砲玉となってロシアと戦い、こっぴどくやられたが、ジョージアの人民は二度とその轍を踏みたくないのだろう。なお、サンドゥ政権与党は、国民投票を求める野党の要求を無視して公用語をモルドバ語からルーマニア語に変更する決議を議会だけで行った(『公用語の表記「ルーマニア語」に モルドバ議会が可決』 2023/3/17 日本経済新聞電子版)。自身の理想社会に耽溺するサンドゥ政権をモルドバ人民は選択するだろうか?
世界経済フォーラムの賛同者のような西側のグローバルエリート層は、人民の生活の困窮など無視し、かつ自分たちの理想に従わない多数派をポピュリストと蔑み、コスト高の電気自動車を押し付ける「脱炭素社会」や使い勝手の悪い「デジタルトランスフォーメーション」など、自身の理想社会建設に執着しているようだ。米国のトランプ候補への支持もそれらに対する「NO」の一環だろう。欧米の例と同じように、今回の衆議院選の結果はグローバルエリート層への「NO」のように思える。