投資家の目線

投資家の目線1011(トランプ氏の発言)

 ドナルド・トランプ氏が、『カナダが米国の関税を回避したいなら「51番目の州(になるべきだ)」と冗談を飛ばした』(『トランプ氏、「トルドー氏は州知事」 関税巡りやゆ』 2024/12/11 日本経済新聞電子版)という。『一八四五年のアメリカ大統領選挙で当選した民主党のジェイムズ・ポークは「北緯五四度四〇分か戦争か」の選挙スローガンを掲げ、アラスカ国境までの領土拡張を認めねば対英戦争も辞さぬとの戦闘的姿勢を露わにし、大陸全体への合衆国の膨張こそ「明白な天命(マニュフェスト・ディスティニー)であるとの主張が声高に叫ばれ始め」たという(「カナダ史 新版世界各国史23」 木村和男編 山川出版社p161)。トランプ氏に領土拡大の意思はないと思うが、かつて米国は英領カナダを領有しようとした歴史があった。もっとも、カナダ側でも米国との関税を相互撤廃してカナダ経済の回復をはかろうとする米加通商同盟運動の理論的指導者ゴールドウィン・スミスは、著書「カナダとカナダ問題」(一八九一年)において「カナダがアメリカと別のナショナリティを構築すること自体が、地理的、経済的、社会的に不可能でしかないと断言」していたという(同p209)。米加間の関税をめぐるやり取りは、19世紀からあったことになる。

 

 トランプ氏は、グリーンランド購入にも意欲を示している(『トランプ氏「グリーンランド、必要」 購入意欲を再表明』 2024/12/24 日本経済新聞電子版)。「第二次世界大戦中、グリーンランドはアメリカとイギリスをつなぐ連合国空路のハブとなりました。しかしデンマークがドイツに占領されたため、デンマークとの接触が完全に断たれてしまいました。そこでグリーンランド政府はアメリカに協力を求め、アメリカはグリーンランドの防衛に合意しました」(デンマーク王国大使館HP 歴史と文化)という。グリーンランドが米国と欧州間を結ぶ間にあるという地理上の問題は当時と変わらない。欧州が米国とのNATOを維持したいというのであれば、欧州はコストをかけてもグリーンランドを防衛する必要があるだろう。

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