投資家の目線

投資家の目線575(都知事選と東京五輪と増税)

 6月21日、舛添東京都知事が辞任した。7月31日に都知事選が予定されている。舛添知事といえば、かつて東京五輪の会場整備費の負担を巡って下村文科相(当時)を批判していた。

 巷ではよく、東京五輪による外国人観光客の増加が期待されている。そこで、過去の五輪、特に直近の五輪であるロンドン五輪と、日本で開かれた大きなスポーツイベントである日韓サッカーワールドカップ(日韓W杯)を見てみたい。

 過去の五輪については国土交通省の「平成25年度 観光の状況」に取り上げられている。それによると、国内で行われた1964年の東京五輪では約4万1千人の外国人観光客が来日したと推計している(札幌、長野の冬季五輪については国内外の観光客を合わせた数値しか記されていない)。次に、ロンドン五輪後に外国人観光客の増加がみられるが、五輪期間を含む2012年第Ⅲ四半期では外国人観光客が逆に前年同期比4.2%減少したことが指摘されている。


平成25年度 観光の状況 国土交通省HP



 また日韓W杯に関して、公益財団法人日本交通公社の「ワールドカップ来訪者の概要」がW杯目当ての外国人観光客は約5万人(同資料3ページ)、日本滞在中の総予算額は246,000円(同資料6ページ)と推計している。後者を一人当たりの金額と仮定して計算すると、外国人観光客がW杯のために使った金額は123億円程度ということになる。またW杯では欧州や中南米など比較的日本から遠い国からの観光客が多かったという特徴がある。

ワールドカップ来訪者の概要 公益財団法人日本交通公社 HP


 東京五輪を見物に訪れる外国人観光客は5万人から6万人に過ぎないと考えるのが妥当ではないだろうか?また、猪瀬直樹元東京都副知事(のちに都知事)は2012年7月27日に「誤解する人がいるので言う。2020東京五輪は神宮の国立競技場を改築するがほとんど40年前の五輪施設をそのまま使うので世界一カネのかからない五輪なのです。」とツィートしていた。
 
 しかし、国立競技場はいつの間にか取り壊されてしまった。再開発や建設工事などにかかわる利権の影響であろうか。例えば埼玉県で東京五輪にプラスの影響を見込むのは、建設資材の保管や輸送の需要を見込む「運輸・倉庫」業や、インフラ整備や施設の建設増加を見込む建設業が多かったという(『東京五輪「プラス」4割、県内企業、建設需要見込む民間調べ。』2016/6/30 日本経済新聞 地方経済面 埼玉)。

 消費増税延期に対して批判する声もあるなか、東京五輪開催に関して、収入に見合うぐらいにコストを抑えるという発想がないのだろうか?こんな一部の人間の利益にしかならないような税金を使われては、増税に納得するわけがないだろう。

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