欧州でも中間層が貧しくなっている。日本でもフードバンクを利用する正社員が増えているが（投資家の目線937（日米英の家計の悪化））、欧州では売れ残った食品を販売するサービスの登録者が大幅に増えている。ベルギーのブリュッセルでスーパーから消費期限切れ間近の食料品を集めて安売りするサービスのトラック並んでいた看護師は、『インフレの影響で「すべての費用を賄うには、ほぼ確実に二つ目の仕事が必要になっている」と不満を述べ』（「【焦点】貧しさ増す欧州人、中間層にも痛み」 2023/7/19 ダウ・ジョーンズ配信）ている。さらに同記事では、「インフレと購買力を調整後の賃金は2019年以降、ドイツで約3％、イタリアとスペインで3.5％、ギリシャで6％減少した」こと、支出の減少もあり、「米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や仏高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンなどの企業にとって欧州市場の魅力は薄れている」ことも報じている。生活が苦しくなれば、プロサッカーの試合を見に行く余裕もなくなりそうだ。観客減で欧州のチームの経営が苦しくなり、サッカーのメッカはアラブ諸国に移っていくのではないだろうか？
西欧諸国では「極右政党」が台頭している。イタリアではメローニ政権が誕生し、フランスではマリーヌ・ルペン氏の人気が高まり、ドイツではAfD（ドイツのための選択肢）が政党支持率で国内2位になり、スペインでも極右政党とされるVoXが台頭している。「【焦点】極右政党が台頭する西欧、注目のスペイン総選挙」（2023/7/21 ダウ・ジョーンズ配信）によれば、『こうした政党が人気を集める背景には、政府が労働者階級の経済的苦境への対処や難民危機の解決に失敗していることがある。一部の国ではロシアの侵攻を受けたウクライナへの「支援疲れ」も極右政党の追い風になっている』、ベルリン自由大学政治学教授のトマス・グレーベン氏は、『「中道左派の社会民主主義政党が、グローバル競争の激化を社会的に受け入れられる形で管理することに失敗した」のが発端だとみている』（同記事）という。米国防総省の監察官報告書は、ウクライナ軍に支援された武器の追跡が困難で、ウクライナの犯罪者や義勇兵、武器密売人などによって盗まれるリスクが高いことを指摘し（“Pentagon watchdog finds some Western weaponry sent to Ukraine was stolen before being recovered last year” By Natasha Bertrand and Haley Britzky, CNN July 21, 2023）、ロシア外務省のザハロワ報道官はウクライナに供与された西側の武器がフランスのデモ参加者の手に渡って警察に対して使用されていると語る（「西側がウクライナに供与した武器がフランスの抗議デモで使用されている＝露ザハロワ報道官」 2023/7/6 SPUTNIK）。ウクライナに供与された武器の元手となるものは西側諸国の人民が支払った税金だ。中道左派政権が生活悪化に有効な対策が打てないうえに、支払った税金で供与された武器が巡り廻って自国内の安全を脅かすようになっては、自国優先の政策を求めるのは自然な流れだ。「ウクライナでドナーを集め、診察に同行して、トルコやフィリピンなどで移植する」（『あっせんＮＰＯ、臓器売買網と接点…関与のトルコ人「移植は誰にも止められない」』 2023/7/20 読売新聞オンライン）と、読売新聞までウクライナでの臓器売買を報じだした。敗北が必至となったウクライナに都合の悪い情報を出すことで、今までのウクライナ寄りの報道とのバランスをとろうとしているのではないか？
16日、岸田首相はサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談した。「岸田総理大臣から、半導体や電池等の分野でサウジアラビアからの対日投資を拡大していきたい旨述べ、これらの分野で対日投資促進に向けて具体的な議論が進むことへの期待を表明しました。ムハンマド皇太子は今後も日本への投資を重視していきたいと述べました」（日・サウジアラビア首脳会談）。対日投資で普通株を保有すれば、サウジアラビアが企業経営に影響を与えることができる。サウジアラビアにとっては、クリーンエネルギー事業が破たんしても、クリーンエネルギーが潰れることでそれ以上に石油などの化石燃料の価値が向上すれば何も問題はない。ブラッドフォード・スネル氏は、米国で路面電車が衰退した原因として、代替品を供給する巨大自動車メーカーが鉄道網を支配したことを挙げていた。
