12月3日、大韓民国に非常戒厳宣言が出されたが、数時間で解除された。尹錫悦大統領は緊急談話で「従北勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守るため非常戒厳を宣布する」(『尹大統領が非常戒厳令発令 「従北勢力を撲滅し憲政秩序守る」』 2024/12/3 聯合ニュース)と述べている。尹大統領の弾劾訴追案は与党議員の退席で廃案になったが(「市民からは憤り・失望の声 尹大統領弾劾案の廃案受け=韓国」 2024/12/8 聯合ニュース)、国内対立はのっぴきならないものになりそうだ。フランスでは内閣不信任案が可決、ウクライナ支援基地になっているルーマニアではNATO懐疑派が勝利した第1回投票の結果を憲法裁判所が無効とし(「ルーマニアの憲法裁判所、大統領選第1回投票を無効と判断 勝利候補への影響工作が明るみに」 2024/12/7 BBC)、2008年にはロシアに惨敗したジョージアではEU加盟交渉中断を決断した政府に対して親EU派の抗議活動を激しくなっている(「ジョージアの首相、新たな選挙を拒否 EU加盟手続き延期への抗議続くなか」 2024/12/2 BBC)。西側報道はロシアの介入の可能性を報ずるが、ロシアとの対決の最前線に立たされることを望まない人民がNATO懐疑派やEU懐疑派の支持にまわることはおかしなことではない。親バイデン・EUかバイデン・EU懐疑派かで、西側諸国では路線対立が激しくなっている。
革新系のハンギョレ新聞(「ウクライナ戦争発のフェイクニュースを楽しんだ代償を払わされる韓国【コラム】」 2024/11/28)は、「米国防総省のサブリナ・シン副報道官は25日、北朝鮮兵500人の死亡や北朝鮮軍のウクライナ領土派兵はいずれも確認できないと述べ、事実上否定した」と大韓民国の国家情報院などが公表した朝鮮民主主義人民共和国(DRPK)の軍隊がウクライナで戦っているという情報をフェイクニュースと報ずるなど(確かに、この交戦情報はフェイクニュースのようだ)、革新系勢力は尹大統領にとって都合が悪いようだ。「DRPKのウクライナ派兵」を口実に大韓民国軍をウクライナに派遣すれば報道はウクライナ一色になり、金建希大統領夫人のスキャンダルから人民の目をそらすことができる。非常戒厳を敷き、国会活動を禁止し、集会の自由を制限すれば、派兵反対のデモンストレーションは難しくなる。野党批判の多い保守系の朝鮮日報さえ、夫人のスキャンダルに対しては野党の主張に賛同している(「韓国検察は金建希夫人の弁護人のようだ」 野党の主張にも一理ある【記者手帳】 2024/10/27)。
12月3日の岩屋外務大臣記者会見で、「ポーランドの元労働副大臣のピョートル・クルパ氏は、ウクライナのメディアのインタビューに答えて、ウクライナの役人が、米国を始め、日本など西側からの支援金を横領しており、更には、米民主党へも還流している。横領額は、最大で50%に及ぶと指摘しています。」と記者から質問がなされた。岩屋大臣は「横領のような話は全く承知をしておりません。」(岩屋外務大臣会見記録|外務省)と答えていたが、米国の裏ガネ作りはスケールがデカいようだ。ミッチ・マコーネル上院少数党院内総務(共和党)のPACは、破綻したFTXから破産宣言の数日前に$100万を受け取っていた(”FTX McConnell Bankman-Fried Super-PAC Donation r” Bloomberg 2022年11月25日)。「AidForUkraineは、受け取った暗号資金を法定通貨に変換し、寄付をウクライナ国立銀行に送る暗号通貨交換所FTXと協力しています」(『ウクライナ「暗号資産72億円寄付」の衝撃 ~多額の寄付を集めるウクライナ暗号資産寄付プラットフォームの秘密~ | 柏村 祐 | 第一生命経済研究所』 2022/3/25)というから、共和党の中にもウクライナ支援で潤った人はいるようだ。日本政府は、米国政界の裏ガネ作りに協力したいのだろうか?