SEPPは、シングルエンディッド・プッシュプル・アンプのこと。出力トランスが不要の回路構成(OTL、アウトプット・トランスレス)になるのが最大のメリット。出力トランスは今となっては、入手が難しい部品。しかも、音質があまりよろしくない印象がある。今回、参考にしたのは、RFワールド・ウェブ・ブックス「ラジオで学ぶ電子回路」の「第13章 オーディオアンプ」。トランジスタによるA級シングルアンプ、B級プッシュプルアンプ、そしてSEPPアンプの動作原理と回路図が記述されている。
今時、個別部品のトランジスタでわざわざアンプを作る時代ではないけど、その昔、ラジオ少年だった頃、SEPPアンプは、憧れで、いつか作ってみたいと思っていた。たまたま、部品箱の一山いくらで入手したトランジスタの中に、コンプリメンタリ構成が可能なものがあったのがきっかけである。もう一つのきっかけは、前記のドキュメントの回路に、ダイオードが利用されていなかったことである。SEPPアンプといえば、終段のベース回路に、何故かダイオード(定電圧のバイアスと温度補償のためらしい)が数本挿入されているのが常で、これが型番指定で入手し難い。前記のドキュメントでは、同じ型番のトランジスタを向かい合わせで実装し、ベースとコレクタを直結してやればダイオードの代わりになるとあった。なるほどと思った。
使用したトランジスタは、中華のS8050(NPN型)とS8550(PNP型)。最大コレクタ電流が500mAで割と大きく、1Wぐらいは出る。しかも安い(まとめて買うと10円/個以下)。あと、定番の2SC1815(オリジナルは東芝)を初段に使用した。これらのトランジスタ、パッケージはモールドタイプで同じなのにリード線の配置が異なる。中華は、EBCの順、東芝はECBの順である。注意が必要。理由は不明であるが、ベースには、入力があり、さらに固定バイアスを掛けるので部品が集中する。真ん中にあるより外側にある方が都合が良いと思うがどうだろう。
回路上、2Ωと指定されていたR2~R5は、手持ちの都合で、3Ωに変更した。またR1は、1KΩから430Ωに変更、VR1は、100KΩに固定した。電源は、UCBからの5V供給に変更。終段のエミッタの電圧が、2.5VになるようVR1を調整する必要があるが、100KΩでは、2.1V位になった。出力特性として、若干歪みがあるかもしれない。以上を、5cmx7cmの基盤上にステレオ構成で実装した。なお、ドキュメントの最後にある入力側の平衡回路は実装していない。
使用してみた感じでは、音質は好印象、音量も十分、歪もそんなに感じない。まずは、成功の部類か。利得が高いので、入力は10KΩ:1KΩ(GND側)に分割減衰した。ボリュームは必須だと思う。
電源はUSBから取るようにしたが、驚いたことが2つ。スマホの充電アダプタから取ると、DC-DCコンバータの発振周波数がそのまま聞こえる。これはダメ。パソコンから取るとマウスを動かす度に、「ギュルギュル」と雑音が入る。これもダメ。結局、スマホのモバイルバッテリーから電源を取るようにした。