アトリエ天藤一級建築士事務所 ATELIER TENDO

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聴竹居

2008-09-19 | コラム 

Photo 画像は聴竹居 南側外観です。

今月初めに建築士会の催しで「聴竹居」(ちょうちくきょ)を見学する機会にめぐまれました。
環境の世紀を見越していたような昭和の初期に建てられた理想の住まいの形、そして小さいながらも建築家たちをひき付ける魅力をたたえた美しい建築です。
多くの方に関心を持たれて、「チルチンびと」49号に掲載されたりしています。

■「聴竹居」 
建築家 藤井厚二自邸 
昭和3年完成
京都大山崎

■藤井厚二1888年生 49歳で没す
竹中工務店設計部の基礎を築く。
その後、当時新設の京都帝国大学建築学科に迎えられる。
わが国固有の環境に調和し、その生活に適応すべき真の日本文化住宅」をつくることの重要性を主張し、実際に5軒の自邸を建て、身をもって実験を重ね、ついに「聴竹居」という傑作を生んだ。
彼はその著「日本の住宅」の中で「其の国の建築を代表するものは住宅建築である」と訴えているが、彼の生涯をかけたものは正に”日本の”住宅建築で有ったと言える。(アプローチ152号)

■聴竹居
伝統的な日本の木造デザインと、現代的なデザイン、プランニング、環境に配慮した住宅へ取り組みが、すばらしいです。
洋風とか和風とかの括りを超えた空間がみごとに調和し、日本の住宅建築の近代化への道筋が現れているような建築だと思いました。

彼は大学で建築設備を担当していたせいか、日照や換気などの工夫が多く見られ、気候風土に適応することをとても重視していたようです。

日本の気候には閉鎖的な個室は向かないと考え、この実験住宅でも夏季の高温多湿の影響を防ぐことを主に考えられ、開放的で対流の起こる”一屋一室”の考えを展開しています。
外壁は熱容量の大きい土蔵壁が用いられ、畳間の床下から冷気を取り入れて天井から排気したり、引戸を多用するなど、さまざまな工夫がされています。

部屋は、窓が多く設けられています。

縁側の隅はガラスを付きあわせていますが、80年前の技術の確かさに驚きます。
そしてたくさんの窓は、風や風景を取り込み、陰影に富み、射し込む光の明暗がさわやかで、とても心地よい空間を作り出していました。

この住宅は昭和3年に建てられたのですよ!

「聴竹居」

(参考 アプローチ152号)