◆画像P&M ビル 鉄骨造
コンクリートのヒビについて続きです。
鉄筋コンクリートの場合、コンクリートのヒビ割れが出来る原因は複雑で、たいていの場合、原因は複数です。
しかもお互いに他の原因の影響を助長するように作用します。
しかし、ヒビを調べると鉄筋コンクリートの劣化の度合いを診断することができます。
温度変化による収縮によってできる細いヒビの場合、すぐに構造的な欠陥に繋がるわけではありません。
では、小さなヒビが段々と大きく深くなっているように感じたときはどうすれば良いのでしょうか?
また、どんなヒビに気をつけたら良いのでしょうか?
どんなヒビが構造耐力的に問題のあるヒビなんでしょうか?
一般に0.2~0.3mm以上のヒビ割れがあると、雨水などがヒビ割れに侵入すると言われます。
コンクリートは圧縮力に強く引張力に弱い。鉄筋は引張力に強い。
両方の長所を備えた鉄筋コンクリートの場合、
コンクリート内に埋め込まれた鉄筋は、コンクリートのアルカリ性によって半永久的な寿命を持つと考えられていますが、水分がコンクリート内部に侵入すると、鉄筋が腐食してしまいます。
腐食はどんどん進むわけではありませんが、
もしたくさんの鉄筋が腐食すると構造耐力上、影響が出てきます。
当然、耐震性などが低下します。
そして、雨漏りや水漏れなどの水密製や気密性などの機能が低下します。
コンクリート面の変形を招いて、美観が損なわれたり、事故を招いたりすることもあるかもしれません。
このように、コンクリートにできたヒビは、建物の老朽化を進めるのです。
だから、0.3mm以上のひび割れは補修することが望ましいと言われます。
鉄筋が露出しているとか、切れている、またはコンクリートが欠け落ちているときは、早速補修が必要です。
ヒビ割れ、錆汁、コンクリートが剥がれたりめくれたりしている箇所が連続している場合にも劣化が進まないように補修しておきます。
メンテナンス計画を立て定期的に補修しておくと安心です。
■不安で仕方がないとき
専門家に調査を依頼します。
1級建築士だからといって、問題を明らかにできるとは限りません。
原因は非常に込み入っているので、対応もさまざまです。
設計図をはじめとした契約時の資料や現地調査などから原因を探したり、あるいは非破壊検査などを受けて現状を把握します。
そして、地盤が悪くて建物が傾いているとか、構造耐力が足りないとか、コンクリートに問題があるとか、原因を明らかにします。
その結果によって、補修計画を立て補強・補修するなど、その後の対応を考えます。
インドのニューデリー南部には、チャンドラの鉄塔と呼ばれる直径40cm、高さ10mの塗装されていない鉄塔があり、1600年も屋外に暴露されているのに、錆びが進んでいないという。
鉄自身には特別な成分は何ら含まれておらず、雨が少なく空気が乾燥しているために、鉄がそのまま放置されていても錆びが進まないらしい。
この塔が、鉄筋コンクリートだったとしたら、1600年も健全な状態を維持できただろうか。
コンクリートは、からからに乾いた条件下ではたちまち中性化してしまうだろう。
それでも、屋内のコンクリートと同様に鉄筋はすぐには錆びてこないかもしれない。
しかし、鉄筋を覆っているコンクリートは多孔質材料であり、毛細管孔隙の中には蒸発しない水分が残留している。
雨が少ないとはいえ、降った雨はコンクリートの細孔内に入り込む。
長い年月の間には、むき出しの鉄塔と違って錆びが進んでしまったのではないだろうか。
『コンクリート内に埋め込まれた鉄筋は、コンクリートのアルカリ性によって不動態皮膜が形成され、半永久的な寿命を持つ』と言われてきたが、本当はむき出しの鉄に比べ、その維持管理は大変難しいものになってしまっているのが現状である。
※出典 ■私のコンクリート補修物語 堀 孝廣 氏 より抜粋
コンクリートのヒビ