アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

黒澤明DVDコレクション第31号~第71号ランキング

2020-11-26 05:36:01 | 昔のアニメ、ゲーム、実写、音楽、本、雑誌
*「黒澤明監督作品全30作ランキング」(2019-09-19 の記事) も、よかったら読んでみてね。

 今年の9月19日の第71号をもって、ようやく完結した「黒澤明DVDコレクション」(朝日新聞出版)ですが、黒澤明監督作は全部で30作しかない。

 では第31号から最終巻の第71号までは何を取り上げていたかというと、黒澤明が制作主任をしたとか、助監督をしたとか、脚本だけ書いたとか、そういった作品を扱っています。

 ですから、これから私なりに評価の高い順にランキングを発表するのだけれど、はっきり言ってあんまり意味のないランキングと言えます。

 このランキングが何かの役に立つかと言えば、この「黒澤明DVDコレクション」全71巻を貸してくれる知人や友人がいて、「じゃあ、黒澤監督作品以外に、どれを見ようか」といったときに参考になるといった程度でしょうか。

 でもね、せっかく見たんだから、何か書いておこうというのもあるし、私と同じように全71号見た人は、他の人はどれを評価しているのか、ちょっと興味があったりするでしょうからね。

 さて、前置きが長くなりました。早速始めますが、第71号は黒澤監督の「乱」のメイキング・ドキュメンタリー2作品なので、ランキングから除外してます(期待して見たんだけど、あんまり面白くなかったです、ハイ)。だから正確には第31号から第70号までの全40作品のランキングとなります。

 で、そのランキング結果は以下の通り。括弧内は黒澤明の担当したところ。製作主任とはチーフ助監督を指すこともあるらしいです。

 1位   姿三四郎(製作、脚本)第37号
 2位  吹けよ春風(脚本)   第46号
 3位 あすなろ物語(脚本)   第43号
 4位 地獄の貴婦人(共同脚本) 第47号
 5位   土俵祭 (脚本)   第49号
 6位    獣の宿(脚本)   第50号
 7位 日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(共同脚本)第48号
 8位  翼の凱歌(共同脚本)第70号
 9位  暁の脱走(脚本)  第44号
10位 藤十郎の恋(制作主任)第59号

11位    地熱(制作主任)第60号
12位  美しき鷹(制作主任)第63号
13位 銀嶺の果て(脚本)  第40号
14位    肖像(脚本)  第32号
15位 愛と憎しみの彼方へ(脚本) 第41号
16位    日本女性読本(助監督)第68号
17位      戦国無頼(脚本) 第35号
18位 戦国群盗伝 総集編(助監督) 第56号
19位   戦国群盗伝(潤色)  第38号
20位  ジャコ萬と鉄(脚本)  第33号

21位  ジャコ萬と鉄(共同脚本)第57号
22位   殺陣師段平(脚色)  第39号
23位   殺陣師段平(脚本)  第66号
24位 四つの恋の物語(共同脚本)第42号
25位       馬(制作主任)第31号
26位      雪崩(助監督) 第54号
27位    綴方教室(制作主任)第52号
28位 良人の貞操 総集編(助監督)第65号
29位    青春の気流(脚色) 第51号
30位 東京ラプソディー(助監督)第58号

31位 消えた中隊 ソ満国境2号作戦(共同脚本)第45号
32位    エノケンの千万長者(助監督)第61号
33位   続エノケンの千万長者(助監督)第62号
34位 エノケンのちゃっきり金太〈前・後編〉(助監督)第67号
35位  エノケンのざんぎり金太(制作主任)第69号
36位     ロッパの新婚旅行(制作主任)第55号
37位 エノケンのびっくり人生、エノケンのがっちり時代(制作主任)第64号
38位    孫悟空〈前・後編〉(制作主任)第53号
39位      天晴れ一心太助(脚本)第34号
40位 荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻(脚本)第36号

 1位が「姿三四郎」になってますが、これは黒澤明監督のデビュー作のリメイク(主演は加山雄三、三四郎の師匠役が三船敏郎)。

 これが1位ってことは、あとは推して知るべしなんですが、ただし2位の「吹けよ春風」が1位でもおかしくなかった。これは面白かった。

 3位の「あすなろ物語」も良かった。原作はベストセラー小説となった井上靖の同名小説だそうですが、純文学の典型的な面白さがここにある。

 4位の「地獄の貴婦人」は、黒澤明のシェイクスピア作品への造詣の深さが良く表れている。ハリウッドでリメイクしたらいいのに、と思ったのは私だけか。個人的にお気に入りです(それ故、見出し画像もこれにしちゃいました、趣味丸出しでスミマセン)。

 5位の「土俵祭」は、何と題材が大相撲。これが意外と面白かった。6位の「獣の宿」も良かった。こういう映画を昔は日本も作っていたのね。

 7位の「日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里」は黒澤明が監督していたらと思うと残念でならない。もっとすごくなっていたに違いない。

 8位の「翼の凱歌」は国策・戦争映画なんだけど、意外と見れます。9位の「暁の脱走」は、もっとすごいのかと思ったら、今見るとそうでもなく。ちょっと肩透かしでした。

 10位の「藤十郎の恋」は文芸映画の大作。なかなか見応えがありますが、ぎりぎり退屈しないで済むという微妙な作品。

 11位の「地熱」は、かつての日本映画の典型だと思われる。主人公は心優しい、懐の深い、良い人。で、この主人公に対抗する人が出てくるが(これが主人公のライバルでないからややこしいのだが)、こちらに喜怒哀楽の感情がある。このパターンだと見ていて退屈する。
 主人公は、なまじ懐が深い、つまり包容力、キャバがあるだけに、どんなにひどい目に遭おうが、耐えられる、我慢できる。逆なんだよね、主人公に対抗する人を主役にしないと。

 12位の「美しき鷹」には不思議な魔力があり、好きな人にはたまらないらしい。それはよくわかるけど、私の趣味じゃないかな。13位の「銀嶺の果て」は言わずと知れた三船敏郎の俳優デビュー作。まだ見ていない人は見ておきましょう。

 「美しき鷹」は私の趣味じゃないけれど、16位の「日本女性読本」は好みです。なかなか良かった。17位の「戦国無頼」は、7位の「日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里」同様、黒澤が監督していたら、もっと迫力があって面白い映画になったに違いない。惜しいし、もったいない。

 20位と21位の「ジャコ萬と鉄」は面白さはどちらも同じ。やや物語がわかりやすい分、リメイク版の方が上かもしれませんが、やはり丹波哲郎と高千穂ひづるの組み合わせより月形龍之介と浜田百合子の組み合わせの方が神秘性が出ているということで、オリジナル版が20位に。

 22位と23位の「殺陣師段平」も面白いっちゃ、面白いんだけど、主人公の喜怒哀楽が強調されない分、退屈しないでもない。24位の「四つの恋の物語」なんですが、こういうの好きです。こういう映画を作るだけの力が昔の日本映画にはあったんですね。

 26位の「雪崩」は微妙。もっと心理描写が必要だったということなのかなあ。何か中途半端。もっと徹底していたら、よかったのかも。

 27位の「綴方教室」なんですが、黒澤自身は高く評価していたらしいんですが、映画に精通していない私のような凡人には、さほど魅力的に映らず。

 28位の「良人の貞操 総集編」なんですが、もうちっと面白くできたんでないの? 作られた時代のせいなんでしょうか、何か製作者側が遠慮しているような気が(気のせい?)。

 30位の「東京ラプソディー」は実に興味深い映画。これは今で言う、ビデオクリップ、ミュージックビデオなんですね。こんな映画が昔に作られていたとは! もちろん、藤山一郎ファンは必見。

 31位の「消えた中隊 ソ満国境2号作戦」なんですが、何だか中途半端。脚本を変更したそうなんですが、反戦映画なのかどうかがよくわからない。この映画の狙いはどこにあったのかなあ。

 32位以降にはコメディー映画が並びました。私にはこうした映画の良さがちょっとわかりませんでした。注目すべきは38位の「孫悟空〈前・後編〉」ですかね。世界初の西遊記の映像化だそうです。力作なのはわかりますが、今見るとつらいかな。

 それを言ったら39位の「天晴れ一心太助」はもっとつらい。いくらなんでもこれはないのでは。そして40位は「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」になってます。意外に思われる方、お怒りになる方もおられるかと思いますが、もはや黒澤明のチャンバラを見てしまった後では、後の祭りかなと。

 以上、駆け足ですが、ランキングを振り返ってみました。それにしてもよく見ました、全号。そして意外とよく覚えていますね。

 こうしてみると昔の日本映画って、多様性があって、宝の山なんだなと思います。

 この記事を書けて、これで私と「黒澤明DVDコレクション」のつきあいも一区切り。肩の荷が下りました。

 このランキングが何かの参考になってくれれば幸いです。

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