松本の朝は寒い
昨日の夜友人のKと会ってこじんまりと忘年会をしたのだが、店に行く道すがら「今日はあったかいよ」と言っていた。
その時は そうか・・と思っていたのだがやはり盆地の冬の朝だ 仙台と比べても一味違う。
ホテルの窓からは松本城が見えている、女鳥羽川沿いのホテルにして正解だ しかも5階の部屋で良かった。
しかしお城の右手前に見えるビルはかなり痛みがひどい。 「古い城下町だからなあ・・・」 景観を損ねてはいるがどうしようもないのだろう。
昨夜の忘年会の後、ほんとに久しぶりで「締めのラーメン」を食べてしまいお腹がどうなるかと心配だったが意外にすっきりしている。
しかし飲みながらあまり野菜を食べていないことに気づき今朝のバイキングは野菜中心でいくと決めた、そして納豆ご飯に味噌汁だ。
2階の朝食レストランには2番手だった、川に向かって座るカウンターに席を取った。バイキングは品数は少ないがなんとなく丁寧に作られた感じがした、これでいい。
席からは女鳥羽川の水面が見えないのが残念だが冬のこの時期だからやむを得まい、サラリーマンらしき人たちが数人会社に急いでいた。
今日は火曜日・・・か
ホテルをチェックアウトして松本駅に向かった。駅構内を歩くとガラス張りのスタバでコーヒーを飲むOL風の人、どこの駅にもある朝の風景だ。
さて目指す穂高駅は大糸線、松本からは各駅で30分程度のところにある。
2両編成の車両の4人掛けの席に座って発車を待つ、平日だが意外に空いている。
発車して約20分、「豊科」だ。 途中で知っている駅はここぐらいか 近代美術館があるらしいが初めて知った。
豊科を出て10分ほどで穂高駅に着いた。 乗ってきた列車が発車したあとで踏切を渡る形で改札がある、いかにもローカルの作りだ。
木を使った外壁の駅舎がそれらしい雰囲気を醸し出していた。それにしてもやはり寒い
駅前の案内看板で美術館の場所を確認する、線路沿いの遊歩道のような道に沿って行けば良さそうだ。
マフラーを少し上にあげて歩き出す、左手に目をやると線路の彼方に信州の山並みが連なり、白い雲がその稜線を曖昧にしていた。
「さすがに長野県の山はちがうなあ」 高1まで長野県に居たのに今ではすっかり東北の人間だ。
7~8分で着くかと思ったがまだ見えてこないので前から来た中年男性にたずねると 「あそこに赤い屋根が見えるでしょ、あの脇だで」
と教えてくれた、下諏訪の自転車男とは違った。
それにしても「だで」は懐かしい、昔諏訪に住んでいた時によく耳にした語尾だ、
そうそう長野県は「だで」だよなあ・・・
その通りに赤い屋根のところで踏切を渡るとそれはあった、「碌山美術館」 いい佇まいだ。
入館料700円を払ってまずは「碌山館」へ向かう。 おそらく貸切状態だろう、そう思ってドアを開けた 驚いた。
シルバー世代が沢山いる、ツアー客だ。 まずい!と一瞬思ったが視線を左にやると学芸員の人が解説をしていた。 例の「女」の像である。
「あ 解説は一緒に聞かせてもらおう・・・」後は人並みが去ったあとでじっくり観ればいいのだ、と頭を切り替えた。
案の定人並みが去るのは早かった、説明が終わればそんなにゆっくりと鑑賞するツアー客はいない。
貸切状態になった、なんという贅沢。 解説にあったらせん状のねじれを前後からじっくり観ることができた。
どの作品も素晴らしいのだがこの「女」という像の存在感はすごい、そして美しい。
実は友人のNが書いた小説の中にこの「碌山美術館」と「女」が出ていた。
美術館は前から言ってみたかったところの一つだったが、この像のモデルが「相馬黒光」であったというところに興味が沸いた。
相馬黒光は宮城の出身だが激しい人生の流れの末、夫婦で新宿中村屋を始めた人だ、私も歴史本で知っていたぐらいで碌山とのつながりは知らなかった。
なぜ人妻の像を、しかもあの苦しげに体をねじった像を作ったのだろう・・・そんな興味で今回この美術館を訪れた。
実際の制作モデルは違う人らしいが(あまりの苦しいポーズに5分と耐えられなかったとか)イメージは黒光さんだという。
やっぱり碌山は黒光を愛していた、想像はついたがそれにしてもこの像を完成させて間もなく亡くなっているというのは・・・
碌山の苦しみが伝わってくる、そして黒光もまた・・。
外に出て碌山館を振り返る、やっぱりいい いい建物だ。
冬木立の中を歩いて別館へ進む、杜江館・第1第2展示室と観て「グズベリーハウス」に入った、誰もいない。
たぶん少し前までツアー客で騒がしかったのだろうがいいタイミングで入った、ストーブの近くに座る。
しばらくするとさっき解説をしていた学芸員の人が入って来た、ちょこんとお互いに頭を下げる、なにか操作をして出て行くとビデオが流れ始めた、「碌山の生涯」ビデオだ、私のために点けてくれたのか・・いい人だ。
中庭の像もいい感じで設置されている。 来てよかった・・・
ゆっくり歩いて門を出た、さてお昼どき そばでも食べようかと思ったら目の前が手打ちそば屋だ。どんな店かは分からないが信州安曇野だ、大丈夫だろう。
入っていくと1番乗りだった。 安曇野らしいメニューはないかと探してみると「わさびそば」とある、そうそうこの辺は山葵だった。 即決した。
少しして観光客らしい4人組の女性が入って来た。 メニューを見ていたが「大盛り」と一人が言うと店主が出てきてう~んと唸っている。
「食べられますかね、400gですが」 1人前は普通100~120g位ではないのか・・・400とは
「じゃあ中盛りは?」と聞くと300gですと答えた、それでも無理だ・・私は思ったが彼女らの中の2人は「中で」と頼んだ。
ということは普通のわさびそばは何g入っているのだろうと考えていると「お待たせしました」と言って運ばれてきた。
唸った。やっぱり麺が多い さらにこのナルトのセンス・・・まあいいか、わさびをときながら食べる。
温かいそばのわさび味は新鮮だが全体に普通だ しかもぬるい、なにより腹がいっぱいになる。
左手を見ると2人が300gをこともなげに完食していた、負けた。
美味しい蕎麦屋は調べていくべきだがこんな経験も仕方ない、思い出にはなる。
遊歩道を戻って駅前まで来た、やっぱりコーヒーは飲みたいがカフェと名のつくものが・・・駅舎の斜め右に看板が見えた。「ひつじ屋」
ひつじ屋かあ、名付けのセンスが今ひとつどうだろう。 しかしまだ時間がある。
店に入るとマスターが1人座っていた、客は居ない 予想通りの貸切だ。
コーヒーとチーズケーキを注文した。
この時期は客も少ないだろうしチーズケーキの出来たては望むべくもない、その通りのものが出てきた、そして分厚いコーヒーカップ・・・
「ひつじ屋」らしい。
食事が美味しいと旅の充実感も増すものだが今回はこれでいい、残念続きだがこれでいいのだ。
改札を通ってホームに立つ、遮断機が降りて松本行きの電車が入って来た 2両編成だ。
各駅停車でゆっくりと松本へ向かう、 そうこれでいいのだ・・・
完
昨日の夜友人のKと会ってこじんまりと忘年会をしたのだが、店に行く道すがら「今日はあったかいよ」と言っていた。
その時は そうか・・と思っていたのだがやはり盆地の冬の朝だ 仙台と比べても一味違う。
ホテルの窓からは松本城が見えている、女鳥羽川沿いのホテルにして正解だ しかも5階の部屋で良かった。
しかしお城の右手前に見えるビルはかなり痛みがひどい。 「古い城下町だからなあ・・・」 景観を損ねてはいるがどうしようもないのだろう。
昨夜の忘年会の後、ほんとに久しぶりで「締めのラーメン」を食べてしまいお腹がどうなるかと心配だったが意外にすっきりしている。
しかし飲みながらあまり野菜を食べていないことに気づき今朝のバイキングは野菜中心でいくと決めた、そして納豆ご飯に味噌汁だ。
2階の朝食レストランには2番手だった、川に向かって座るカウンターに席を取った。バイキングは品数は少ないがなんとなく丁寧に作られた感じがした、これでいい。
席からは女鳥羽川の水面が見えないのが残念だが冬のこの時期だからやむを得まい、サラリーマンらしき人たちが数人会社に急いでいた。
今日は火曜日・・・か
ホテルをチェックアウトして松本駅に向かった。駅構内を歩くとガラス張りのスタバでコーヒーを飲むOL風の人、どこの駅にもある朝の風景だ。
さて目指す穂高駅は大糸線、松本からは各駅で30分程度のところにある。
2両編成の車両の4人掛けの席に座って発車を待つ、平日だが意外に空いている。
発車して約20分、「豊科」だ。 途中で知っている駅はここぐらいか 近代美術館があるらしいが初めて知った。
豊科を出て10分ほどで穂高駅に着いた。 乗ってきた列車が発車したあとで踏切を渡る形で改札がある、いかにもローカルの作りだ。
木を使った外壁の駅舎がそれらしい雰囲気を醸し出していた。それにしてもやはり寒い
駅前の案内看板で美術館の場所を確認する、線路沿いの遊歩道のような道に沿って行けば良さそうだ。
マフラーを少し上にあげて歩き出す、左手に目をやると線路の彼方に信州の山並みが連なり、白い雲がその稜線を曖昧にしていた。
「さすがに長野県の山はちがうなあ」 高1まで長野県に居たのに今ではすっかり東北の人間だ。
7~8分で着くかと思ったがまだ見えてこないので前から来た中年男性にたずねると 「あそこに赤い屋根が見えるでしょ、あの脇だで」
と教えてくれた、下諏訪の自転車男とは違った。
それにしても「だで」は懐かしい、昔諏訪に住んでいた時によく耳にした語尾だ、
そうそう長野県は「だで」だよなあ・・・
その通りに赤い屋根のところで踏切を渡るとそれはあった、「碌山美術館」 いい佇まいだ。
入館料700円を払ってまずは「碌山館」へ向かう。 おそらく貸切状態だろう、そう思ってドアを開けた 驚いた。
シルバー世代が沢山いる、ツアー客だ。 まずい!と一瞬思ったが視線を左にやると学芸員の人が解説をしていた。 例の「女」の像である。
「あ 解説は一緒に聞かせてもらおう・・・」後は人並みが去ったあとでじっくり観ればいいのだ、と頭を切り替えた。
案の定人並みが去るのは早かった、説明が終わればそんなにゆっくりと鑑賞するツアー客はいない。
貸切状態になった、なんという贅沢。 解説にあったらせん状のねじれを前後からじっくり観ることができた。
どの作品も素晴らしいのだがこの「女」という像の存在感はすごい、そして美しい。
実は友人のNが書いた小説の中にこの「碌山美術館」と「女」が出ていた。
美術館は前から言ってみたかったところの一つだったが、この像のモデルが「相馬黒光」であったというところに興味が沸いた。
相馬黒光は宮城の出身だが激しい人生の流れの末、夫婦で新宿中村屋を始めた人だ、私も歴史本で知っていたぐらいで碌山とのつながりは知らなかった。
なぜ人妻の像を、しかもあの苦しげに体をねじった像を作ったのだろう・・・そんな興味で今回この美術館を訪れた。
実際の制作モデルは違う人らしいが(あまりの苦しいポーズに5分と耐えられなかったとか)イメージは黒光さんだという。
やっぱり碌山は黒光を愛していた、想像はついたがそれにしてもこの像を完成させて間もなく亡くなっているというのは・・・
碌山の苦しみが伝わってくる、そして黒光もまた・・。
外に出て碌山館を振り返る、やっぱりいい いい建物だ。
冬木立の中を歩いて別館へ進む、杜江館・第1第2展示室と観て「グズベリーハウス」に入った、誰もいない。
たぶん少し前までツアー客で騒がしかったのだろうがいいタイミングで入った、ストーブの近くに座る。
しばらくするとさっき解説をしていた学芸員の人が入って来た、ちょこんとお互いに頭を下げる、なにか操作をして出て行くとビデオが流れ始めた、「碌山の生涯」ビデオだ、私のために点けてくれたのか・・いい人だ。
中庭の像もいい感じで設置されている。 来てよかった・・・
ゆっくり歩いて門を出た、さてお昼どき そばでも食べようかと思ったら目の前が手打ちそば屋だ。どんな店かは分からないが信州安曇野だ、大丈夫だろう。
入っていくと1番乗りだった。 安曇野らしいメニューはないかと探してみると「わさびそば」とある、そうそうこの辺は山葵だった。 即決した。
少しして観光客らしい4人組の女性が入って来た。 メニューを見ていたが「大盛り」と一人が言うと店主が出てきてう~んと唸っている。
「食べられますかね、400gですが」 1人前は普通100~120g位ではないのか・・・400とは
「じゃあ中盛りは?」と聞くと300gですと答えた、それでも無理だ・・私は思ったが彼女らの中の2人は「中で」と頼んだ。
ということは普通のわさびそばは何g入っているのだろうと考えていると「お待たせしました」と言って運ばれてきた。
唸った。やっぱり麺が多い さらにこのナルトのセンス・・・まあいいか、わさびをときながら食べる。
温かいそばのわさび味は新鮮だが全体に普通だ しかもぬるい、なにより腹がいっぱいになる。
左手を見ると2人が300gをこともなげに完食していた、負けた。
美味しい蕎麦屋は調べていくべきだがこんな経験も仕方ない、思い出にはなる。
遊歩道を戻って駅前まで来た、やっぱりコーヒーは飲みたいがカフェと名のつくものが・・・駅舎の斜め右に看板が見えた。「ひつじ屋」
ひつじ屋かあ、名付けのセンスが今ひとつどうだろう。 しかしまだ時間がある。
店に入るとマスターが1人座っていた、客は居ない 予想通りの貸切だ。
コーヒーとチーズケーキを注文した。
この時期は客も少ないだろうしチーズケーキの出来たては望むべくもない、その通りのものが出てきた、そして分厚いコーヒーカップ・・・
「ひつじ屋」らしい。
食事が美味しいと旅の充実感も増すものだが今回はこれでいい、残念続きだがこれでいいのだ。
改札を通ってホームに立つ、遮断機が降りて松本行きの電車が入って来た 2両編成だ。
各駅停車でゆっくりと松本へ向かう、 そうこれでいいのだ・・・
完