社長様、かく語り記

東北のとある社長の名言・行動から、人としてあるべき姿を探していきたいと思います。

企業内起業 後編(全二話②)

2013-06-21 16:32:46 | 日記
前回の続きでございます。


さて、
「社内起業制度」
とは何でございましょうや?

ご存知ない方にとっては、甘美なる言葉に聞こえるのかもしれません。


確かに…
「社内起業制度」を採用し、自社従業員に対して起業独立を支援するような奇特な会社があるとの記事を目になされて、はるかかなたの西方より海を越えて家族連れで入社なされた方もいたほどでございました。


わたくしの場合、幸運にもこの
「社内起業制度」
を実見する事が出来ましたので、一つの例として紹介させて頂きます。

あくまでも一つの例です、全てが同様であるとは思ってもおりませんので、ご承知おき下さいませ。


わたくしが入社してから一週間ほどで 、その「社内起業制度」の実態を感じ取る事が簡単に出来ました。
(すでに末期的症状が現れていたようにも思います。)

この会社の中で当時 社内起業されていた方は2名おりました。

1名が前述致しました、遠方より家族連れでいらして背水の陣で望む「HR氏」。

もう1名が社長殿の ご実弟「ST氏」でございました。

このST氏は、前編にて紹介致しました社長殿ご一族の第5序列のお方にございます。

1.社長殿
2.社長殿の奥方
3.社長殿の実妹(義弟の奥方)
4.義弟
この方→5.社長殿の実弟
6.草取り番長のご尊母(名誉職)


ぶっちゃけ結論を書いてしまいますと、縁故がなけりゃ「社内起業」なんてのは地獄を見ますね。

社内で独立なされた社長殿の実弟には、同種の加工機を扱うベテランに作業を教わりながら働けるような機会を与え、且つ独立しても作業上の負担は極力掛からぬような調整を行ないつつ売り上げが目標額に達するように仕事を与えておりました。

かたや、家族を連れて背水の陣で挑むHR氏にはこの方のみが担当する加工機を預け、短納期の作業を優先的に回して、常に足元を伺いながら作業単価も社長殿がほとんどお決めになります。
(仕事を受ける際に、大甘な納期&価格でもへっちゃらですね~)

まともな会社の社長であれば、なんの事はないこれが当たり前の話になります。

しかし…独裁者を気取り始めた社長殿は、

伝家の宝刀

「納期守れ~」
「コスト下げろ~」

を、ブンブンと振り回しながら

「気に入らなきゃ、おまえに仕事出さねぇよ!ナハハハ!」

と、見下した笑いを繰り出します。

わたくしが入社して数日後には既にHR氏の姿は見かけなくなり、加工すべき部品の入ったケースが山積みとなっておりました。

業を煮やした社長殿が、白い紙に赤ペンで、
「納期を守るように」
と書いて加工機に貼り付けてましたが、そんな貼り紙も本人が会社に来なけりゃなんの意味もありませんねぇ。

この時既にHR氏は社長殿を見限っていたのでしょう。

山積みとなったケースを眺め、ただ呆然とする社長殿なのでしたぁ~的な…。

まぁ県の行政が注目するような制度を思いついたモノの、己の心根の小ささ故に共に起業した仲間達からも愛想を尽かされてしまい、滅亡への道をひた走る事と相成りました社長殿でございました。

わたくしが退職した後も、辞める方が後を絶たず最後は共に起業した主要メンバー二人が去り、これが決定打となり廃業へと至ったとの噂でございました。
(廃業に至る事実関係は一切存じておりません、あしからず…)

後日談、遠方より来て社長殿を足掛かりに独立を果たしたHR氏は、その後パトロンを見つけて違う場所で新たに開業して成功を収めました。

そして早々に滅びた社長殿になり変わり、県の行政からの熱い注目を浴びる存在へと変貌を遂げるのですが、それから数年後には刑事事件を起こして逮捕されてしまい、こちらの会社もそのまま廃業となりました…
チャンチャン………

この辺の逮捕に至る下りは、以前に登場しましたわたくしの同僚であった「相棒」がこのHR氏の会社で以前働いていて、HR氏が逮捕された事により会社が廃業となって失業してしまったとの事でした。

この会社の話を詳しく聞いていくウチに、その社長HR氏をわたくしも存じ上げている事が判明したのでした。
(インターネットと云うのは、古い情報も炙り出しますねえ~恐い恐い…)


逮捕容疑は聞いて呆れましたが、傲慢になった結果&男が勝った結果なんだろうなぁと、少しも同情の念は湧かないような粗末な内容でございました。

全くのド素人から、東北と西方の二カ所に工場を持つに至った英雄の哀れなる末路とでもいったところでしょうかねぇ…。

さて、脱線続きでしたが
「企業内起業」
の結論はと言いますと、経営者として大事なのは
「外注先」
をどのように捉えて扱うか?にあるように考えます。

ただのコスト削減の為だけの関係性ならば、「外注先」はただの消耗品となってしまいます。

やはり共存共栄と捉えて末長く付き合う事が肝要であると感じます。

まぁ経営云々よりも人間性の評価に繋がりますかねぇ~。

さて、遅くなりましたが、社長殿からわたくし自身が受けたご恩はと言いますと、

その1.夜中12時まで残業して帰宅。
翌朝4時(睡眠2時間位かな?)に出社して、自分の車で関東までお客様の工場へ直納に赴く…。
(客先の強い要望で翌朝9時頃の納品だった気がします。わたくしが手当てとして支給されたのはガソリン代のみでした…社用車…ありません…。一度の移動距離は1,000km以上となり、これが常態化される前に退職しました。)

その2.金属を磨き上げる作業を受けた際に、社長殿に作業指示を頂き(磨き粉の番手)約4時間セコセコと磨き上げて判断を頂くと、

「ナハハハ、ダメだなコリャ。もう一回番手を上げてやり直して~ナハハハ」

と、やり直しにおおよそ5時間掛けてようやく終了。

社長殿はその磨き作業に習熟しておられましたので、仕上がり具合は充分にご存知でございます。

単純に嫌がらせの為に初めの作業指示でワザとウソを言い、やり直させると云う姑息な手段であります。

まぁ権力を手にした下郎が良くやりたがる姑息な手段でございますね。

この時にわたくしが確認したのは、受注金額との兼ね合いから、どれだけ時間を掛けて磨くのか?でした。

このような判断は受注金額を知っている社長殿に判断を仰がねばならぬのです。
金額を考慮しなくて良いならば、24時間だって磨きます。
(社長殿は、よほどやましいところがあったのか、現場には金銭に関する情報は一切流しませんでしたねぇ。)

結局、わたくしは半年で退社し、それから1年ほどで社長殿の会社は倒産とあいなりました。

後日、地元テレビ局より、社長殿の会社倒産に関するインタビューを求める電話がわたくしのところにまで入り色々とコメントしました。

結局、わたくしのコメントが地方テレビ局の報道番組内で流されていたそうです。

放送の数日後、いきなり遠く離れた友人より電話が入り…

「◯◯よぉ、おめ~こないだテレビでしゃべってたべ~、話し方ですぐわかったぞ~ウヒャヒャヒャヒャヒャ」

なぁ~んて電話を貰いました。

そんなに変な喋り方かしらん………

結論として、「男の約束は守ろう!」