社長様、かく語り記

東北のとある社長の名言・行動から、人としてあるべき姿を探していきたいと思います。

買付営業 前編(全三話①)

2013-06-28 18:33:12 | 日記
社長様のネタも尽きたなぁ~と少々寂しい…などと勘違いを始めておりましたが、ふと思い出しました。

社長様が営業のプロフェッショナルであり、その卓越した技の一つが以前紹介しました
「トップダウン営業」
でありましたが、最近もう一つ社長様ご自慢の卓越した営業手法を思い出しましたので、ご紹介させて頂きます。


その営業手法、ひじょうにネーミングに悩みましたが強引に名付けてみました…

その名を
「買い付け営業」
と呼ばせて頂きます。

昨今流行っている、押し買いにも似てるような気もするのですがね…まぁさておいて…


社長様には「トモダチ」が沢山いらっしゃいます。

特に、社会的地位のある方と何かの会合で2~3分も話を交わせばもう「トモダチ」と呼ばせて頂き、己の人脈に加えて差し上げます。

「あ~◯◯社長ね、俺トモダチだから連絡とってやろうか?」みたいな案配ですね。

そんな「トモダチ」が会長をなさっております、従業員300名程で関東にも営業所を持つ会社が、好景気に沸き人手が足りないようだと聞きつけた社長様、「俺はあそこの会長とトモダチだからよぉ、今度行って来るわ。」と、溢れている仕事にありつこうと画策なさりました。
(とは言っても、本当はそこに下請けに入っている社長さんの紹介ですけどね。)

数日して「トモダチ」のおかげでその会社の役員様との面会が叶う運びとなり、わたくしもお供をさせられる羽目となりました。


面会当日は社長様にとっては「トモダチ」の会長様ですが、先方からすると会長様と知り合いかもしれない社長様に対して、部長様課長様係長様等々4~5名様にてお出迎え、そしてご丁寧な対応を頂き至極ご満悦の社長様でございました。
(相変わらず身の程知らずだなぁ~…お相手の部長様は部下が百人位居ますよ。一方の社長様の部下は社員2名パート従業員6名でございます。)

あっそうそう、社長様の「トモダチ」である会長様はご多忙のせいかお姿を拝む事はかないませんでした。
友達っぷり見たかったなぁ~。

さて、工場内を部長様直々にグルリと案内して頂き、正直「社長様の会社じゃ無理っしょ」と、云うレベルの高さは理解出来ました。
(わたくし含めですね。)

扱う装置が医療用の検査機器ですから、品質面において相当に厳しい事は想像に難くありません。

正直、すぐに手抜き指示をするクセがあるようないい加減な人間(社長様)には、到底お付き合い願える作業内容じゃありません。

まぁ社長様は目利きですから、己に実力が無い事も認識出来ず、何でも簡単に出来そうに話しております。

隙あらば
「あっこんなヤツ、以前やった事あったよなぁ!」
と、わたくしを巻き添えにしようとなさり…

わたくし…内心では…
「アンタの言ってる安い作業とは、品質レベルが天地程違うよ…」
と、思いつつも
「そうですねぇ。」
と、返す他無く…本当に見る目が無いんだなぁと辟易とさせられておりました。

しかし…さすがに自信を持って会話出来る作業が無いとは判っているようで取っ掛かりを見つけられずにいたのですが、工場内の通路沿いに置かれていた古臭い装置を見つけ、目をキラキラさせながらこう仰いました…

「この装置を売って下さい!」

お客様そしてわたくしも含め、その場に居た人間達は皆一様に両目をまぁるくしてしまいました…

現場担当の係長が少々焦りながら、

「この装置、ここが壊れていてまともに動きませんから!」

と、言いながら社長様の荒ぶる心を鎮めようと致しますが聞く耳持たず…

「かまいません、大丈夫です!治せますから、ぜひ売って下さい!」

と、意気揚々自信満々でおっしゃります…

さすがに部長様も即答は出来ずに、苦笑いしながら
「じゃあ上の者と相談してみますから。」
と、その場から離れるように促しております。


わたくしも、一目見て壊れているのは判りましたし、何より…ウチの会社にこんな装置(大量生産用)を使わなきゃならん仕事は入りませんよねぇ…しかも治すのは誰の仕事?と、思ったのですがね…。


脱線。

この打ち合わせから数ヶ月後、社長様の小さな会社にこの装置及び付属品が搬入されました。

工場内面積の20%程を占拠し堂々と鎮座なされました。

案の定、壊れた装置を直すのはわたくしの役目…

ホームセンターから適当に部品を見繕い、辛うじて動く程度には復活させましたが到底本来の作業に使えるレベルではありません、ただのパフォーマーとして来社したお客様にガタガタガタ…と動かしてお見せするだけの存在となり、そのまま何年か経過したのでした。

そんな彼に転機が訪れましたのは大震災でした。

大震災当日、彼は大きな揺れに合わせて右往左往…第3波の大きな揺れで壁にアタック!

その衝撃により、面した窓の鍵が全て引き千切られ窓が開き、柱の上下部分の壁及び床面にはひび割れが生じ…会社の建屋は崩壊寸前となりました…

社長様の怒りに触れた彼は、それから程なくしてスクラップ業者に手荒にぶっ壊されつつ工場を去っていったのでありました。

ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪…


本題に戻ります。

社長様、何とか足掛かりを見つけて会社に戻る道すがら…潰れた鼻を高くしながらご自慢なさります…

「あの装置を買えば、仕事が来るようになってんだよ。ハハハ、仕事を取るってのはそういうもんなんだよ。」

と、自らの営業活動が成功し大層ご満悦になり会社へと戻るのでした。

さて、まだまだ話は続くのですが、本日はこれまで…

あしからず…

企業内起業 後編(全二話②)

2013-06-21 16:32:46 | 日記
前回の続きでございます。


さて、
「社内起業制度」
とは何でございましょうや?

ご存知ない方にとっては、甘美なる言葉に聞こえるのかもしれません。


確かに…
「社内起業制度」を採用し、自社従業員に対して起業独立を支援するような奇特な会社があるとの記事を目になされて、はるかかなたの西方より海を越えて家族連れで入社なされた方もいたほどでございました。


わたくしの場合、幸運にもこの
「社内起業制度」
を実見する事が出来ましたので、一つの例として紹介させて頂きます。

あくまでも一つの例です、全てが同様であるとは思ってもおりませんので、ご承知おき下さいませ。


わたくしが入社してから一週間ほどで 、その「社内起業制度」の実態を感じ取る事が簡単に出来ました。
(すでに末期的症状が現れていたようにも思います。)

この会社の中で当時 社内起業されていた方は2名おりました。

1名が前述致しました、遠方より家族連れでいらして背水の陣で望む「HR氏」。

もう1名が社長殿の ご実弟「ST氏」でございました。

このST氏は、前編にて紹介致しました社長殿ご一族の第5序列のお方にございます。

1.社長殿
2.社長殿の奥方
3.社長殿の実妹(義弟の奥方)
4.義弟
この方→5.社長殿の実弟
6.草取り番長のご尊母(名誉職)


ぶっちゃけ結論を書いてしまいますと、縁故がなけりゃ「社内起業」なんてのは地獄を見ますね。

社内で独立なされた社長殿の実弟には、同種の加工機を扱うベテランに作業を教わりながら働けるような機会を与え、且つ独立しても作業上の負担は極力掛からぬような調整を行ないつつ売り上げが目標額に達するように仕事を与えておりました。

かたや、家族を連れて背水の陣で挑むHR氏にはこの方のみが担当する加工機を預け、短納期の作業を優先的に回して、常に足元を伺いながら作業単価も社長殿がほとんどお決めになります。
(仕事を受ける際に、大甘な納期&価格でもへっちゃらですね~)

まともな会社の社長であれば、なんの事はないこれが当たり前の話になります。

しかし…独裁者を気取り始めた社長殿は、

伝家の宝刀

「納期守れ~」
「コスト下げろ~」

を、ブンブンと振り回しながら

「気に入らなきゃ、おまえに仕事出さねぇよ!ナハハハ!」

と、見下した笑いを繰り出します。

わたくしが入社して数日後には既にHR氏の姿は見かけなくなり、加工すべき部品の入ったケースが山積みとなっておりました。

業を煮やした社長殿が、白い紙に赤ペンで、
「納期を守るように」
と書いて加工機に貼り付けてましたが、そんな貼り紙も本人が会社に来なけりゃなんの意味もありませんねぇ。

この時既にHR氏は社長殿を見限っていたのでしょう。

山積みとなったケースを眺め、ただ呆然とする社長殿なのでしたぁ~的な…。

まぁ県の行政が注目するような制度を思いついたモノの、己の心根の小ささ故に共に起業した仲間達からも愛想を尽かされてしまい、滅亡への道をひた走る事と相成りました社長殿でございました。

わたくしが退職した後も、辞める方が後を絶たず最後は共に起業した主要メンバー二人が去り、これが決定打となり廃業へと至ったとの噂でございました。
(廃業に至る事実関係は一切存じておりません、あしからず…)

後日談、遠方より来て社長殿を足掛かりに独立を果たしたHR氏は、その後パトロンを見つけて違う場所で新たに開業して成功を収めました。

そして早々に滅びた社長殿になり変わり、県の行政からの熱い注目を浴びる存在へと変貌を遂げるのですが、それから数年後には刑事事件を起こして逮捕されてしまい、こちらの会社もそのまま廃業となりました…
チャンチャン………

この辺の逮捕に至る下りは、以前に登場しましたわたくしの同僚であった「相棒」がこのHR氏の会社で以前働いていて、HR氏が逮捕された事により会社が廃業となって失業してしまったとの事でした。

この会社の話を詳しく聞いていくウチに、その社長HR氏をわたくしも存じ上げている事が判明したのでした。
(インターネットと云うのは、古い情報も炙り出しますねえ~恐い恐い…)


逮捕容疑は聞いて呆れましたが、傲慢になった結果&男が勝った結果なんだろうなぁと、少しも同情の念は湧かないような粗末な内容でございました。

全くのド素人から、東北と西方の二カ所に工場を持つに至った英雄の哀れなる末路とでもいったところでしょうかねぇ…。

さて、脱線続きでしたが
「企業内起業」
の結論はと言いますと、経営者として大事なのは
「外注先」
をどのように捉えて扱うか?にあるように考えます。

ただのコスト削減の為だけの関係性ならば、「外注先」はただの消耗品となってしまいます。

やはり共存共栄と捉えて末長く付き合う事が肝要であると感じます。

まぁ経営云々よりも人間性の評価に繋がりますかねぇ~。

さて、遅くなりましたが、社長殿からわたくし自身が受けたご恩はと言いますと、

その1.夜中12時まで残業して帰宅。
翌朝4時(睡眠2時間位かな?)に出社して、自分の車で関東までお客様の工場へ直納に赴く…。
(客先の強い要望で翌朝9時頃の納品だった気がします。わたくしが手当てとして支給されたのはガソリン代のみでした…社用車…ありません…。一度の移動距離は1,000km以上となり、これが常態化される前に退職しました。)

その2.金属を磨き上げる作業を受けた際に、社長殿に作業指示を頂き(磨き粉の番手)約4時間セコセコと磨き上げて判断を頂くと、

「ナハハハ、ダメだなコリャ。もう一回番手を上げてやり直して~ナハハハ」

と、やり直しにおおよそ5時間掛けてようやく終了。

社長殿はその磨き作業に習熟しておられましたので、仕上がり具合は充分にご存知でございます。

単純に嫌がらせの為に初めの作業指示でワザとウソを言い、やり直させると云う姑息な手段であります。

まぁ権力を手にした下郎が良くやりたがる姑息な手段でございますね。

この時にわたくしが確認したのは、受注金額との兼ね合いから、どれだけ時間を掛けて磨くのか?でした。

このような判断は受注金額を知っている社長殿に判断を仰がねばならぬのです。
金額を考慮しなくて良いならば、24時間だって磨きます。
(社長殿は、よほどやましいところがあったのか、現場には金銭に関する情報は一切流しませんでしたねぇ。)

結局、わたくしは半年で退社し、それから1年ほどで社長殿の会社は倒産とあいなりました。

後日、地元テレビ局より、社長殿の会社倒産に関するインタビューを求める電話がわたくしのところにまで入り色々とコメントしました。

結局、わたくしのコメントが地方テレビ局の報道番組内で流されていたそうです。

放送の数日後、いきなり遠く離れた友人より電話が入り…

「◯◯よぉ、おめ~こないだテレビでしゃべってたべ~、話し方ですぐわかったぞ~ウヒャヒャヒャヒャヒャ」

なぁ~んて電話を貰いました。

そんなに変な喋り方かしらん………

結論として、「男の約束は守ろう!」

企業内起業 前編(全二話①)

2013-06-14 21:56:39 | 日記
今回は社長様とは違う方のお話となります。

20世紀が終焉を迎えようとしていた頃、わたくしが半年ほど在籍しておりました会社の社長殿のご紹介です。

その社長殿、わたくしが愛してやまない社長様とは大いに異なり、カミソリの如き脳みそと目つきを備えている方でございました。
(まぁ何を切るかによりますね。他人の事ばかりスパスパやってると人望を失ってしまいます。)

この会社は、90年代の始めにわたくしが在籍していた会社から7名+αの方が一斉に退社して起業なされた「株式会社」でしたので、皆 顔見知りでございました。
(何故わたくしが誘われなかったか…については、お考えになりませぬよう…)

起業されてから約2年後に、わたくしもお世話になる事と致しました。
(高飛車な奴め…)


さて入社した初日に まず驚いた事がありました。

以前の職場で ご一緒させて頂いた顔見知りの皆々様のところへ入社の挨拶に回っていてようやく…わたくしと同い年の

「彼が居るからあの会社は大丈夫だろう。」

と信頼しておりました お方が既に退社していた事実が判明…
ガ~ン………


ん~彼は営業職でしたので、面接で会社を訪ねた際に、居らずともおかしいな?とは思いも付かず…
(不覚ナリ………どおりで面接した時 皆に挨拶してたら社長殿がついて回るなぁ~と思ったんですよね…)

次に驚きましたのは、社長殿が社内で妙に威張っている点でした。
(確か、皆が株を持ち合っているから対等の立場なハズなんだけど…)

その後しばらくして判明したのは、起業時に7人で約束していた、

「増資は行わない事」
「増資する場合はきちんと話す事」

と云う取り決めを社長殿があっさりと破り、社長殿の実母より1,000万円を出資させ増資を行なっていた事実でした。

(確か…当初の資本金は1,200万円~1,400万円でしたから、一躍 筆頭株主でございますね。)

立ち上げメンバーには社長殿の義弟も居ましたから、共謀になってしまうのでしょうねぇ。

さてここまできて、ようやく会社敷地内の草取りをしていた偉そうな態度の婆さんの正体が判明したのでした…

その婆さんが会社の大口オーナーであった訳でした…


社長殿グループは、事務に社長殿の奥方と実妹を据えていたので、

1.社長殿
2.社長殿の奥方
3.社長殿の実妹(義弟の奥方)
4.義弟
5.社長殿の実弟
6.草取り番長のご尊母

と、社長殿含め6名も社内に食い込んでおりました。

社員12名中の6人を社長殿の親族で占めてしまい会社を独占した訳です。


経営陣の人間関係がマズい場合、当然会社経営や仕事の運営自体もマズくなるでしょう。


さて、そんな状態の会社ではありましたが、県の行政からは大変注目を浴びておりました。
(当時たまたま写したテレビ番組に社長殿が出演していたりしてましたねぇ~)


それは、

「社内起業制度」

を積極的に推進していたからでございます。


「社内起業制度」

お役所の方々が喜びそうなフレーズでございます…。

雇用した人間に対して、社内の設備を貸与するから、

「会社の中に居ながらにして個人事業主になろう!」

との掛け声勇ましく独立を助けて援助しますよ!と云う触れ込みでございました。

本日はこれにて…

間が空きますが、つづきます…