半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第34話

2017-09-24 08:27:51 | webブログ
谷町開設 祝 10周年 !!!! やった~っ!

皆さん、バレエ教師の半澤です!よっしゃ~っ、レッスンしましょう~っ!!
http://hanzanov.web.fc2.com/top.html (ホームページ)
http://hanzanov.web.fc2.com/index-J.html(オフィシャル ウエブサイト)
皆様、12月23日 天皇誕生日の祭日に私の発表会があります。
もし、良かったら出演してみませんか?バリエーションでも良いですし、
グランパドドゥでも良いですよ!もちろんコンテンポラリーでも
良いですし、オペラでも舞台で歌います?
どうぞ、どんどん出演してください。
私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus,eonet.ne.jp

連絡をお待ちしてますね!!

朝は11時から初中級レベルのレッスン、夕方5時20分から初級レベルの
レッスン、夜7時から中級レベルのレッスンがあります。
皆さま、お待ちしております!

Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

日曜日のバリエーションは考え中です。
ではクリスタル・ルームでお待ちしておりますね
連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
ロシアの偉大なる教師を持つダンサー
第34話
ショージが絶対に忘れる事の出来ないダンサーは元ロイヤル
バレエ団プリンシパルのスターダンサーのミスター・チンコ・
ラフィックだ。彼は世界中のバレエ学校の中でも名門中の
名門であるロシアの「ワガノワ・バレエアカデミー」出身で、
彼の先生はバレエ界では伝説のアレクサンドル・プーシキン
である。

フランスに亡命したロシア人の世界的なバレエダンサー、
ルドルフ・ヌレエフや同じくミカイル・バリシニコフを
育てたのはこのアレクサンドル・プーシキンである。
ショージはチンコ・ラフィックがゆっくりとオープン
クラスに現れるとテンションが最高潮に上がり、その日が
とても有意義な気持ちになる。

稽古場に現れたラフィックをじっとショージは見つめる。
センターアダージオ(ゆっくりなテンポの踊り)が始まり、
ショージは自ら第2グループに入る。何故なら第1グループの
彼の動きを見たいからだ。長い足のその先の甲とつま先は
目を見張るほど美しく、しかも使い方がとても丁寧である。
他のダンサーたち(イギリスにおけるプロダンサーのサドラーズ
ウェールズ・ロイヤル団のバレエダンサーやロンドンシティ・
バレエ団のダンサーたち)とはスタイルが全く異なり、特に
顔を向ける角度など、動き一つ一つが重厚だ。

ショージが「お早う御座います!」と挨拶すると、彼は
手を上げて「 やあ、元気かい?」と応える。ラフィックの
瞳はグリーンがかったライトブルーで男の目で見ても実に
格好が良かった。
 ある時、ショージがコベントガーデンにあるカフェで
コーヒーも注文せずに友だちとバレエ談義をしていると
そこへ憧れのラフィックが「 やあ!」と、となりの
テーブルに来た。「ご一緒させてもらっても宜しいです
か?」とショージたちは図々しくも半ば無理やりに
一緒のテーブルに座ってしまった。ラフィックはプライ
ベートな話をする際、ゆっくりと話すのであまり英語が
出来ないショージにでも理解する事が出来た。
 
「プーシキン先生はどんな先生だったんですか?」と
ショージが唐突に聞いた。ラフィックは微笑みながら
静かに「偉大な先生だったよ…」と感慨深く答えた。
ラフィックの横顔と瞳に見入っていたショージは、この
大先輩の彼のバレエに対する深い情熱を感じた。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第33話

2017-09-23 09:04:27 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
文無しの男の生活
第33話
ショージは自分の服もバレエのレッスン着も洗剤で
洗濯した事がない。それは単に金がないので洗剤が
買えないだけだからだ。汗で濡れた稽古着は学校の
水道で洗い、それを家に持って帰って干し、次の日に
またレッスンが終わったら学校の水道で洗うと言う
そんな毎日だった。

稽古着ははゴワゴワだった。普段の服もドロドロ
だった。女の子が見たら「オエッ!」となるであろう。
でも、仕方が無かった。必死に働いてもロンドンでは
労働賃金は安く、それでも黙ってこき使われるしか
無いのだ。そう言った訳でショージは文無しだから、
首の調子が悪いとか身体の調子が悪くなっても病院にも
行けない。ましてロンドンで最高の整体師に治療して
もらうなど思いつきもしない。

ショージの足先は生まれつき良い形ではない。良い
つま先とは関節が非常に柔らかく、甲が出ていて足先が
しなやかに曲がる形だ。足先を伸ばせば矢じりのように
見える足、そして両足を伸ばして床の上に直接座った
時につま先が床にくっ付く状態。これがバレエダンサー
にとって憧れの足の形である。

しかしショージの足の形はまったくそんな理想とは
かけ離れており、両足を伸ばして座ると足の先端は
床につくはずもなく、つま先が天井に向く。バレエ
ダンサーになる夢を持つ人間としては非常にやるせない
気持ちになってしまう。例えどんな足先の形をして
いようがバレエを続ける事が本当は最大の難関であり、
それが出来うる人間が結局どんな人生にせよ、どんな
形にせよ実になるのかもしれない。古人いわく「継続は
力なり…」だ。ショージに言わせるとすれば「継続は
奇妙な実をつける」かもしれない。

1日3度のレッスンを終えると走ってバイト先の日本
レストランへ皿洗いに向かう。これをしないと生活が
成り立たないからだ。ショージは路上を歩きながら思った。
「バレエのレッスンだけに専念できたらどれだけ幸せ
だろう…そうだ!バレエ団に入れば専念出来るんだ!
よし、バレエ団のオーディションを受けてみようか…」
バレエ団に入りたいのはダンサーであれば皆、同じ
である。何処の国の人間であろうが、プロダンサーを
目指す者たちの夢なのだ。

だがショージは英国籍を持っていない。バレエ団に入る
ためには労働許可が必要になる。もし仮にショージが
ソリストやトップダンサーのプリンシパルとして認め
られたとしたら、労働許可は直ぐに下りると校長から
聞いた。しかしショージは諦めた。自分にそのような
才能があるとは思えないからだった。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第32話

2017-09-22 10:37:29 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
鰹節の香りのレオタード
第32話
ショージはバレエ学校に着いてから、更衣室に行き、
自分のバッグを開いてその中身を見て白眼を剥いた。
「ギョエーッ!?」ショージのバレエの稽古着が
ご飯と鰹節でまみれているのだ。それだけなら良いが、
鞄を開いた瞬間に更衣室にいた全員が「うわーっ!
臭っせ~っ!」と部屋から飛び出して行った。
ショージも思わず自分の鼻を摘まむほどだった。
取りあえず食べられそうな飯つぶはラップに戻した。
それだけが唯一の昼飯なのだ。

「稽古着からくっついて離れないご飯と鰹節を除去
しなければ…」ショージは、近くのゴミ箱にその
稽古着に付いた飯を手で摘まんで捨ててしまった。
これがまずかった。ごみ箱に放置した状態では
更衣室に臭いが充満してしまう。せめてビニール袋に
入れて捨てれば良かったのだ。だがショージは
そこまで繊細な神経を持ち合わせてはいなかった。

あらかた飯つぶが取れたところで、ショージは
その稽古着に着替えた。それしか稽古着が無いの
だから仕方がないのだ。稽古着は完全に鰹節の
臭いになっている。だからといってバレエを休む
訳にはいかない。

ショージが稽古着に着替え終わり稽古場に入って
行った。そしてウォームアップをしていると女の子
たちは「キャーッ!臭過ぎる~!」と大袈裟に
叫んで出て行った。ショージはその日以来、皆から
異様な目で見られるようになってしまった。そして
挙句の果てに「スティンキー・フィッシュ」(臭い魚)
と言うあだ名が付けられてしまったのだった。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第31話

2017-09-21 10:32:44 | webブログ
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第31話
シェフが居ない時を見計らってダダダ!と厨房の真中まで
走ると、ひたすらご飯に鰹節をバラバラかけてラップに
詰める!隠しながらまた走る!バッグに仕舞う!これが
毎日のショージの基本姿勢だ。ウォンはいつもショージの
ために日本人シェフに隠れては「これ、今の内にパクッと
口の中に入れてよ!」ショージは皿洗い場から走っては
急いで口に入れてまた洗い場に戻った。毎日のように食べ
させてくれた国境を越えたショージにとっての大切な恩人
であった。

ある日、ショージはいつものようにサランラップにご飯を
包み、その上に鰹節をババッ!と掛け、日本人シェフに
見つからないよう急いでバレエレッスンに持って行くバッグの
中に仕舞った。これを明日の昼ご飯にするためだからだ。

臭う電車内の男

ロンドンの早朝、アンダーグラウンドと呼ばれる地下鉄
ピカデリー線の電車の中で異臭がするのに気づいた。それは
足の臭いなどでは無く、まさに異臭だ。何処と無く和風な異臭
でもあった。ショージはまず自分の両脇の臭いをチェックした。
だがショージ自身ではなかった。「あ、もしかしたらソックス
か?」だがそう言った臭いではなかった。

ショージは隣の席に座っている人を見た。「何て臭い人
なんだろう…!オエッ!」しかし、そのとなりの席の人が
今度はショージの顔を猜疑心を持って見返して来た。
「何だ、このおっさんは!?」ショージは視線を反らし
つつ、「ふん!」と遺憾に思ったが、段々とその車両の
乗客たちが「クンクン?ん…クンクン?」と異臭に気づき
始めた。

ショージには「この車両の何処かに異臭を放つとんでも
ない人間が絶対に紛れている!」と確信した。ショージは
コヴェントガーデンのいつもの駅で降りた。車両を振り返り
「ああ臭かった!まだあの臭いが鼻にこびりついてる!」
と思いながら、駅の階段を速足で上がって行った。

コヴェントガーデンの駅は恐ろしく深い地下の中に設けて
あり、階段は非常に長く、そして2台ある特大のエレベーター
は超満員で一旦上に上がったら中々降りて来ない。しかも
3回くらい待たないと乗れないのだ。だから厳しく長い
階段であっても頑張って自分の足で上がった方が早い
と言う事を知ったのだった。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第30話

2017-09-20 10:33:21 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
東京と同じような生活スタイル
第30話
数日が経ち、学校の生徒たちに助けられ中国人の経営
するとても臭く安いアパートも見つかった。
「これは漢方の臭いだと思えば良いのだ…」と自分に
言い聞かせた。 やがて学校にも慣れて来た。
「何処かアルバイトが出来る店はないだろうか…」
と街を歩いていたら店の張り紙に目が留まった。
リージェントパークにある日本レストランだった。
ほとんど文無しでロンドンにやって来たショージは
ロンドン暮らしの最初は東京での生活と同じように
大好きなバレエのレッスンが終わったら日本レスト
ランに直行して深夜までの皿洗いだった。

ショージの生活スタイルは日本からロンドンに場所を移した
だけで、バレエとバイトで目一杯であった。生活は貧困を
極めた。一週間単位で給料が出るのだが、そのほとんどは
アパート代と交通費で消えてしまう。つまり部屋の中が
暗かろうが寒かろうが電気代などの光熱費などは全く
無い。服も買う事も出来ない。ましてショージはバイトの
給料だけでは食べる事さえ出来なかった。

バイト先の厨房の奥にある洗い場で誰も見ていない時に
先輩の日本人コックが作った料理の失敗作をショージは
口に入れ、捨てるような物でも口の中に入れた。
それしか腹を満たす事が出来ないのだ。皿を洗っている
最中、日本人のコックがいなくなった瞬間に急いでサラン
ラップでご飯を盗み、そこら辺にあるゴマでも塩でも
鰹節でもあるものは何でもご飯に掛けて急いで隠した。
見つかったら最後、ショージは首になる。しかし悲しい
事にそうでもしなければ次の日は一日中、腹が減って
動けないのだ。

忘れる事の出来ない私の恩人

そんな時にショージを救ってくれたのは韓国人のコックの
ウォンだった。ショージがいつも腹を空かせているのを
ウォンは知っていた。「これ、味見していいよ…」と
誰にも聞こえないように小さな声で囁いておにぎりを
作ったのだ。ウォンはショージと同い年であった。

この日本レストランの厨房で他の韓国人がべっ視されて
いる中、ウォンだけは日本人と同じように揚げ物を任せ
られていた。日本語がとても達者で料理も上手と言う
非常に稀な男だった。ウォンはショージのために日本人の
シェフには内緒で「これ、君の明日のお弁当だよ!」
といつもこっそりおにぎりを作り手渡した。

他にも十数人の韓国人の下働きの人たちがいたが、
日本人のシェフとウォン以外は誰一人として厨房の
真中に立つ事が出来ない厳しい規律があった。ショージは
日本人ではあるが、このレストランの中の階級では一番下
であった。下働きの韓国人のその下にイタリア人が
いて、そのイタリア人は風貌がランボーに良く似ていた。
またそのランボーははかなりの
変人でもあった。

ショージが「そんな生の鳥肉を食べるとお腹をこわすから
食べない方がいいですよ!」と必死に止めてもニヤニヤ
しながら食べるのだ。そんなランボーを見てショージは
気持ちが悪いとしか言いようがなかった。いつも信じられ
ないような事をするこの変人の更にその下でショージは
皿洗いとして働いていた。変人のイタリア人もその上の
下働きの韓国人たちも厨房の真中までは恐れ多くて行け
ない。であるから規律に厳しい日本人シェフが厨房にいる
時には一番格下のショージが行けるはずが無かったのだ。
(つづく)