半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第19話

2017-09-08 11:41:16 | webブログ
皆さん、バレエ教師の半澤です!よっしゃ~っ、レッスンしましょう~っ!!
http://hanzanov.web.fc2.com/top.html (ホームページ)
http://hanzanov.web.fc2.com/index-J.html(オフィシャル ウエブサイト)
皆様、12月23日 天皇誕生日の祭日に私の発表会があります。
もし、良かったら出演してみませんか?バリエーションでも良いですし、
グランパドドゥでも良いですよ!もちろんコンテンポラリーでも
良いですし、オペラでも舞台で歌います?
どうぞ、どんどん出演してください。
私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus,eonet.ne.jp

連絡をお待ちしてますね!!

朝は11時から初中級レベルのレッスン、夕方5時20分から初級レベルの
レッスン、夜7時から中級レベルのレッスンがあります。
皆さま、お待ちしております!

Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

日曜日のバリエーションは「眠れるの森の美女」からオーロラ二幕の
バリエーションです。
ではクリスタル・ルームでお待ちしておりますね
連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第19話
ショージは20歳になろうとしていた。そんなある日、
通っている六本木のバレエスタジオの皆からけんも
ほろろに言われた。「お前、馬鹿じゃない?お前の
様な者がロンドンに行ってどうなるの?お前よりも
素晴らしくて子供の頃からバレエをやってきた先輩の
ダンサーたちでさえヨーロッパに行っても全然通用
しないというのに、技術もスタイルも持ち合わせて
いない様な男がヨーロッパに行ってどうしたいの?
馬鹿らしくて話にならない…」とまるで相手に
されなかった。

ショージは自分の目で本物のダンサーというのは
どんなものなのかを知りたくなったのだった。本物の
ダンサーたちの身体から絞り出される汗の香りや、
同じ空気を吸いたかった。

「何を指して本物と言うのかそれを知りたい…それに
親ももうこの世にはいない…東京にいてもどうしようも
無い…。それだったらいっそ僕は日本にいるよりも夢に
見たイギリスに行って、ロイヤル・バレエがどんなもの
なのか絶対に見てみたい…!出来る事なら学校に入れて
もらいたい…」

そう心に思いついた時からショージの運命は変わり
始めたのかもしれない。それまで灰色にしか見えな
かったこの世の全てが全く今までとは違うように見え
始めたからだ。ショージは必死で朝方まで働き、
バレエも1日に3回ものレッスンを休まずに受け、
コツコツと飛行機代を貯めた。バイトの金で生活し、
バレエのレッスンを3回もしながら金を貯めるのは
とても大変なことである。食事もギリギリ死なない
程度に制限していた。働いたお金はバレエに使い、
残れば全て貯金にまわした。お金は使ってしまったら
最後残らないからだ。

イギリスに行くためには高い航空券代を稼ぎ、貯金も
しなければならなかった。毎日腹が空いて仕方が
なかったが、決して諦める事はなかった。ショージの
夢だからだ。夢が無かったらどうやって生きていったら
いいのかショージには分からなかった。

「ああ…神様!本当にもし神様がいるのなら、夢を
実現出来るのならば、私は長生き出来なくても良いから
私の夢を叶えてください、お願いです!一生にたった
1回だけで良いから僕のこの夢を叶えてくださいませんか…
お願いです!」そう言って空きっ腹をさすったのだった。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第18話

2017-09-07 10:06:07 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
埼玉県狭山市から六本木に引っ越し
第18話
ショージは埼玉県の狭山市という田舎町に住んで
いた。六本木に行くには電車を何度も乗り換え、
2時間半も掛かった。つまり往復5時間を電車の
中で費やす事になる。交通費は新宿のフラメンコ・
レストランでのバイト代に含まれていた。だが
この5時間は非常に無駄な事だと気が付いた。
六本木に越してくれば無駄なこの5時間と言うものが
省けると言う事に気が付いたのだ。そして虎ノ門
と言う場所に6畳一間のボロアパートを借りた。
時間の節約の代わりにアパート代を新たに稼がねば
ならなくなった。

バイトも新宿のレストランを辞めて虎ノ門の
アパートの近くの花屋で朝早くから働き始めた。
アパートの窓を開けば、そこは東京タワーの真下だ。
バイト代からアパートの家賃とバレエのレッスン代
を出すとショージの手元には一銭のお金も残って
なかった。「もっとバイトを増やさなければ…」
しかしそれとは裏腹に「レッスンの回数ももっと
増やさなければ上達出来ない…」とも思った。
そんなショージの実情は腹が減り過ぎて死にそうで
あった。

ショージは食事が出るバイト先を探せば、食費が
掛からないと言う事に気が付いた。スタジオの傍に
鉄板焼きをやっているレストランがある。ショージは
数回ほど教師の小川に連れられて一緒に行った事が
あった。腹が減り過ぎたショージは取りあえず、
その店に行った。そして「三日以上も食べてなくて
死にそうだからここで働かせてくれないか…」と
店主に詰め寄ったのだ。

そこに居合わせた客、そして店主の奥さんも含め、
10人くらいでパーティーを催していたのだが、
この招かざる男が侵入し「ご飯を食べさせてください!
お金は全然持って無いんですがここで何でもして
働いて返します」と店主に必死に頼んだ。楽しんでいた
であろう店主の家族と客がこの男の言葉で静まり
返った。店主も困惑したが、「何でもいいか?」と
言って肉野菜ご飯を作った。

ショージは食べ終わってから、「金を持っていない
のでここで皿を洗わせてください!」と再び頼んだ。
店主は「金を持っていないのは食べる前に聞いたよ。
そんな皿洗いなんて事はしなくてもいいからまた
お腹が空いたらここに来なさい」と言った。ショージは
真剣な目で店主に食い下がった。「明日も必ず腹が
空きます。その次の日も、いや必ず毎日腹は空きます。
ですが私はお金を持っておりません。ここでバイト
させてもらえればありがたいのです!どうぞ頼み
ます!」と更に懇願した。パーティの最中だった
場はしらけてしまい、「もうバイトは男が一人いる
から雇えないんだ…」とマスターは繰り返して言った。

しかしショージの懇願する回数が店主の断る回数を
上回った。とうとうショージはこの鉄板焼き屋の
「アキ」で働き始める事に成功した。働き始めて
数日が経った時に新たな事実がショージを驚かせた。
この鉄板焼きレストラン「アキ」の店主はなんと、
元バレエダンサーだったのだ。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第17話

2017-09-06 10:06:48 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
動く彫刻の森
第17話
ショージが初めて見たバレエの稽古は上級者向きの
クラスであった。日本のトップダンサーたちが
レッスンに来ていた。数十人のスーパーダンサー
たちだった。ショージは「バレエってこんなに
凄いのか…どうやったらあんなに足を高く上げる
事が出来るんだろうか…]と愕然とした。およそ
同じ人間同士でも全く違う生物のように見えた。


目の前で踊っている人間たちがまるで「生きている
彫刻の森の美術館」であるような気がした。
ショージはその生きているミケランジェロの彫刻の
ような人たちが実際に動き始めた瞬間に、その凄さ
と美しさに我を忘れた。「な、なんて事だ…!?
この世にこんなものがあったなんて…この人たちは
本当に人間なのだろうか…」

ショージは次の日からバレエの練習に通い始めた。
しかも初心者クラスと言うものがあるにも関わらず、
それには行かずに朝一番に始まるこのミケランジェロ
の彫刻たちと一緒にレッスンを始めてしまったのだ。
何をどうしたら良いのか全く分かっていない、
まるで木偶の坊のようなショージに向かってバレエ
教師の小川亜矢子の声が大きくスタジオ内に響き
渡った。「このクラスはあなたのような初心者の人が
来るべきクラスではありません!あなたの来る時間帯は
夜のビギナーズクラスです!」

ショージは次の日から先生の言葉に従い、夜の
ビギナーズクラスも受けるようにした。夜のクラスは
朝とは違い、初心者ばかりなので素人が見てもあまり
見られたようなものではなかった。それでも自身が
一番分かっていないのだから仕方がないと思った。

ショージには稽古で先生がバレエ用語として使う
フランス語の意味が全く理解出来ず、一体何処の国の
言葉を喋って教えているのかさえ見当が付かないほどの
初心者だった。遂にカンカンになった先生の小川から
「朝のクラスは初心者には無理だから来ては駄目!」
と言われてしまった。それでもショージとしては
「絶対に“動く彫刻”と一緒にレッスンをしたい…
一度、素晴らしいものを見てしまうとそれを見なければ
バレエに近づけないのではないか…」と思ったのだ。
日に日にレッスンに通う事が好きになって行く自分が
そこにいた。

教師の小川亜矢子は「頼むからこのクラスには
来ないで!」と言い渡したが今度はショージが
「お願いですからこのクラスに参加させてください!」
と頼んだ。小川は苦虫を噛みつぶしたような顔で
「他の人たちの邪魔にならないように端っこでやり
なさいよ!」と諦めて折れた。向こう見ずのこの男が
どう考えても邪魔にならないはずがなかったにも
関わらずにである。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第16話

2017-09-05 09:28:29 | webブログ
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第16話
依然として狭山市に住んでいるショージはそこから
電車に乗れば一時間弱で行ける新宿で、コマ劇場の
地下にあるフラメンコを見せるレストランでのアル
バイトの仕事を見つけた。厨房で皿洗いをやれば
交通費も出してくれた。時間があればフラメンコも
勉強出来るかもしれないと思ったのだ。その厨房に
働く一人の先輩の青年がジャズダンスをやっていると
言った。また、同時にタップダンスも習っているのだ
と聞かせてくれた。

先輩が誘った。「君もどう?タップダンスをやって
みないか?」ショージは早速その先輩に付いて行き、
値段の高いシューズを買ってタップダンスを習いに
行ってみた。実際タップを習い始めた初日、その
リズムと速さに圧倒されてしまい、足が付いて行けず
棒のようになってしまった。2回目に行った時は
先生から「どうやら君にはリズム感が無いようだね。
多分、君はタップダンスよりもバレエをやった方が
いいのかもしれないぞ…」と言われた。

その日の先生の言葉でショージはタップを諦めた。
リズム感を持っていない自分が情けなくも感じた。
その場で他の人にそのタップシューズをあげてしまった。
貰った方の男は飛び上るほど喜んでいた。そのシューズを
買うのにどれほどバイトしたのか。自分に全くその
才能がないと分かると惜しげもなくただで「どうぞ…」
とあげてしまったのだ。バイト先の先輩がショージに
厨房で言った。「実は六本木の「一番街」でジャズダンスを
習おうかと考えているんだ…」

ショージは以前に「一番街」ではバレエをやっている
とは聞いてはいたがジャズもやっている事をその
先輩の話から知った。

バレエとの運命の出会い!
ある日ショージはテレビでモーリス・ベジャール振付の
「ボレロ」を見た。テレビに釘付けとなった。そして
「こんな踊りの世界が存在するなんて…す、凄い!」
前衛的なモダンなダンスに完全に魅了された。そして
ルドルフ・ヌレエフと森下洋子による「ジゼル」全2幕を
見に劇場に行った。この瞬間にショージは全身の肌から
鳥肌が浮かぶほど感動した。「こ、これだ…これが僕の
やってみたい事なんだ!」

ショージはバイト先の先輩に先駆けて六本木にある
「一番街」に行った。手ぶらだった。バレエをするに
あたって一体、何が必要なのかも知らなかったのだ。
まずは実際に目の当たりにしてからと思った。朝早く
行き、門を潜るとそこに一人の婦人が一生懸命に
掃除機で床のゴミを吸っていた。ショージは無造作に
「ねえ、おばさん、ここは何時からやっているん
ですか?」と尋ねた。

すると婦人は失礼な言葉には気を掛けずに「10時
からよ!まだ時間が早いわ!」と言った。「随分と
ガラガラ声のおばさんだな…」と思った。10時に
なった。さっき掃除をしていたおばさんが更衣室
辺りから出て来た。そのおばさんは真っ直ぐに稽古場に
入って行った。すると掃除をするどころか、皆が
一斉におはようございます!と頭を下げた。ショージは
「あっ!?」と驚き、口がふさがらなかった。その
おばさんが“一番街”の主宰者である小川亜矢子先生
である事に気が付いた時、ショージは目眩がした。
ショージは大先生に向かって「おばさん!」と呼んで
しまったからだった。「知らぬが仏…」とはこういう
事だった。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第15話

2017-09-03 08:26:46 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第15話
何とか無事に高校を卒業した後、ショージはある日
ミュージカルを見てとても感動した。劇団四季だ。
そして強く想った。「この劇団に僕も入る事は
出来ないだろうか…」幸い友人が劇団四季で働いて
いる事を思い出し、ショージはその友人にどうしたら
良いか相談をした。彼女はまず、バレエを習う事を
勧めた。「六本木にある“一番街”という名前の
スタジオに小川亜矢子先生という素晴らしい先生が
いるから、そこへ行ってバレエをならってみてはどう
かしら?ミュージカルをやりたいならまずはバレエよ!
そして四季に入りたいのなら小川亜矢子先生!」と。

これまでショージはバレエなど見た事もなかったので
その存在自体も知らなかった。そしてクラッシック
バレエが、ミュージカルと一体どう関連しているのか
さえ、見当が付かなかった。劇団四季を見た日から
「音楽、歌、そして踊って芝居をする事はとても
素晴らしい…僕もそんな世界を知ってみたい…」自分の
知らない世界を知った。

ある日、ショージはチラシを見て、何処かの劇団が
ミュージカルの出演者を募集しているのを知った。
それはテレビでもよく見かける人気歌謡グループの
ゴダイゴが歌う「孫悟空」、「モンキーマジック」
というミュージカルであった。しかし、そこに入る
ためにはオーディションがあった。即興で自分を
アピールする試験があるのだ。その試験のために
ショージは警視庁に働く従兄から本物の日本刀と
同じほどの重量のある模擬剣を借りた。自分で勝手に
武士らしい振りを付けて、武田信玄の「風林火山」の
歌詞を付け派手な袴(はかま)を着て模擬剣を抜刀して
歌ったのだ。

試験に立ち会った審査員たち全ての人が目を丸く
しながらショージの踊りに見入った。なんとショージは
オーディションに合格した。このミュージカルに出演
している人々はジャズダンサーが多かった。だが
ショージはジャズダンスなど全く習った事がない。
また芝居の勉強もした事がなかった。きちんと台詞も
言えず、歌も歌えず、この劇団の足を引っ張っていた
張本人だったと自分でさえ思った。

この劇団が行うミュージカル「モンキーマジック」には
有名人がたくさん出演した。「ジェットストリーム」で
名を馳せた城達也もいた。ラッキー池田と言う変わり
種のタレントもいた。いよいよ劇団は公演のための
リハーサルに入った。ショージの無能さに団員たちは
手こずった。ダンス指導のチーフは頭に手をやり「この
男は果たして本番に使えるだろうか…」

そして本番を迎え、十数回に及ぶ舞台の日々の中で
チーフはショージに向かって言った。「君はミュージ
カルよりもバレエをやった方が良いのじゃないかと
思う…」ショージはこの劇団と一緒にリハーサル、公演と
やった中で、楽しいと言う実感が湧かなかった。むしろ
こう言うのは自分には向かないと言う事を知った。
自分の無能さを痛感したのだった。
(つづく)