先日、AIによる音声分離技術によって、ジョンレノンの70年代後半頃に録音されたデモテープからノイズが除去され、カセットテープに録音されたレノンの声がクリアになり、それをもとに、かってのジョージのバッキングギターと、健在であったポールとリンゴによって新たな演奏が加えられ、その結果ビートルズ名義での新曲が公開された。
それが記憶に新しい状況下、今度はAIに手塚治虫さんの過去作品を覚え込ませ、AIによって手塚さんのブラックジャックの「新作」が世に出た。
ビートルズの場合は、レノンの声、ジョージのギター、ポールのベース、リンゴのドラムは、あくまでも本人の手による作品であった。
だが、手塚さんのブラックジャックは、手塚さん本人はまったくタッチしない(というか、亡くなられてる以上タッチできるはすがない)、AIによって生み出された作品ということになる。
もっとも、AIが提示してきたアイディアをもとに、手塚プロジェクトの生身の人間たちが手を加えアレンジして、出来た作品らしい。
なので、厳密には完全にAIによって作られた作品ということではないのだろう。一応生身の人間性が、手を加えてるのだから。
でも、こういう手法がAIの進化と共に広く普及していくようになるのだとしたら、どうも個人的には釈然としないものがある。
この手法なら、才能ある生身の人間がいなくなったとしても、いくらでもその元となった作者の名前と共に新作がAIによって作られていくことが可能になる。
この場合、生身の作者が全く関知してないのに、その作者の名前が引用されるほどオリジナリティがあるのだろうか。
その辺、正直複雑でもあり、怖くもある。
そういや。先日。ビートルズの曲を多数AIに覚え込ませ、ビートルズ風の曲をAIに自動作成させた音源を聴く機会があった。
数曲聴いてみたうち、1曲は「まあまあビートルズ風」の曲に聴こえたが、それ以外のAIビートルズ曲は、はっきりいってつまらなかった。
AIに自動作成させたビートルズ風の曲という知識がなかったとしても、イマイチ。
曲がグチャグチャしており、ビートルズ曲にあったキャッチーさは全くなかったし、ぼやけたような曲だった。ビートルズの曲には、キャッチーさがあったし、人間のリスナーが聴いて覚えやすくもあった。ビートルズの曲には、一回聴いただけで、ある程度すぐに覚えられる要素もあった。
また、人間の感情に訴えかけてくる要素もあり、心地よさもあった。人の感性のツボをついてくる要素もあった。
たがAIビートルズ曲には、そんな要素や魅力はなかった。
やはり、何かをクリエイトする時は、感情があるかないかの違いは大きいし、リスナーにとって心地良さかあったり、リスナーの感情を揺さぶるものがないと、中々生身の人間を感動させる曲を作るのはむずかしい。すくなくても今の段階では。
そのへんのツボは、まだわからないのだろう。
曲は人間が感性で作ることもできれば、AIの進化によってデータで作ることもできるようになった。だが、クリエイトする作業というのは、感性の持つ要素は大きい。データで作ったものは、現状では新鮮味や感動はイマイチだと思う。
仮にデータで作った作品ではあっても、人間が人間に聞かそうとする場合は、感性を持った人間が手を加えないと、作品は「生きた」作品にはならないのではないか。
そういう意味では。AIが作ったブラックジャックには、データで作ったベーシックに人間が手を加えているから、成立したのかもしれない。
AIには現時点での限界は、まだある。
だがこの先は?いずれAIは感情や感性を持つようになるのだろうか。
その辺はまだわからない。
もしAIが感情や感性を持つようになったら、けっこう怖い。
人間はAIをそこまて進化させるのだろうか。
たとしたら何のために。
こだわる?
仮にAIが感情や感性を持ったとしても、アトムやドラえもんみたいな性格ならいいんだけどね。
AIが残酷な独裁者みたいな性格を持ってしまったら、人間に対抗策はあるのだろうか。
その場合、ロボット三原則なんて意味はなくなるだろうし。
感情や感性を持ったAIはロボット三原則を守るだろうか。
以下、ロボット三原則。
1.ロボットは人間に危害を与えてはならない
2.第1項に反しないかぎり、ロボットは人間の命令に従わねばならない
3.第1項・第2項に反しないかぎり、ロボットは自分の身を守らねばならない
もしも、感情や感性を持ったAIと人間がケンカしてしまった場合、AIはどう反応するのだろうか。ちょっと想像してみてほしい。
そのへんを想定すると、怖い。
写真は、アトムやプルートゥの作品中で、私が好きだったロボット、エプシロン。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます