高校時代、友達の家で聴いた、古井戸の「賛美歌」という曲の衝撃は忘れられない。
すごいインパクトがあった。
これはチャボの語り(朗読?)で綴られる曲で、チャボの語りのバックに加奈やんのハミングが時折入る構成になっている。
「賛美歌」という曲は本来「ぽえじー」というアルバムに収められていた小品・・という感じの曲だったが、「古井戸ライブ」というライブアルバムに収められたバージョンは鬼気迫るものがあった。
オリジナルアルバムに収められた時とは比較にならない「すごみ」があった。
まるで遺言のようでもあり、死者から現世へのメッセージのようでもあり、この世への追憶のようでもあり。
聴いてると、まるで自分が死者・・というか、死んで魂だけの存在になったような気分になった。
で、現世への未練や楽しかったこと、悲しかったこと、辛かったことや切なかったことなどが、死者になったつもりで走馬灯のように思い出されるような気がした。
暗い・・というより、切なく悲しい。たまらなく悲しい。
そして、現世というものがたまらなく愛しく感じられた。
なんでも、このライブは語り草になり、なかば伝説化したそうな。
それもこれも、このライブでの「賛美歌」での感動が凄まじい反響をよび、事件化されるような感動を人に与えたからだそうだ。
で、その「事件」ともいえる出来が、このライブアルバムにしっかり収められている・・というわけだ。
曲が進むにつれ、観客の女の子たちが感極まって泣き出し、その泣き声がどんどん大きくなり、しまいには場内の泣き声でチャボの語りが聴こえなくなったそうで、その異様な状況が「感動」を通り越して「事件」と呼ばれているようだ。
このライブアルバムを聴いてると、チャボの語りは決して客の泣き声にかき消されてはいない。
ちゃんと録音されている。
だが、それは、客席にいたらきっと聴こえないくらいぐらいだったのだろうなあ。
なんてったって、初めてこのアルバムの「賛美歌」を聴いた時の私ですら、異様なものを感じたくらいだったもの。
よくこんな「詩」をかけたものだ・・。
なんなんだろう、この曲は。
どういうことがきっかけで、こういう詩を書いたのだろう。
この詩のバックボーンは何?
・・と、やたら興味がわいたことを覚えている。
この曲を会場で聴いていた女の子に、この時のことを聞いてみたいくらいだ。
古井戸には良い曲は実に多い。
でも、一番凄い曲は何?と聞かれたら、私はこの「賛美歌・ライブバージョン」をあげる。
最高傑作とか、名曲とか、そういう比喩とは違う「何か」だ。
インパクトという意味では、屈指の曲である。
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