怪獣映画では、大スターとなった怪獣が何匹もいる。
ゴジラ。モスラ。ガメラ。この辺は、誰もが認めるスーパースター怪獣だろう。
怪獣ブームの時に、それらのスター怪獣は大活躍し、出演作品・主演作品は何作もあった。
だが、その影には、せっかく主演映画を制作されながらも、大スターになれぬまま消えていった怪獣も・・・いた。
その中で私がすぐに思い出せるのは「大巨獣ガッパ」と、「宇宙大怪獣ギララ」だ。
怪獣ブームの時、東宝は「ゴジラ」「モスラ」などを主役に怪獣映画ブームを牽引していたし、大映は負けじと「ガメラ」で対抗していた。
ゴジラやモスラで人気を博していた東宝や、ガメラで頑張っていた大映を横目に、大手映画会社であった日活や松竹は悔しい思いをしていたのかもしれない。
怪獣ブームに乗り遅れたような思いも感じていたのかもしれない。
そこで我も負けじと、東宝の「ゴジラやモスラ」、大映の「ガメラ」に対抗するように、日活が制作した怪獣映画が「ガッパ」であり、松竹が制作した怪獣映画が「ギララ」だったのだろう。
ガッパやギララが、ゴジラやガメラのような看板怪獣になってくれれば・・という思いはあったはず。
余談だが、松竹の「ギララ」は、松竹の看板映画「男はつらいよ」にも一度だけ出演したことがある。これ、嘘のような本当の話。看板映画「男はつらいよ」に登場したということは、松竹はそれなりにギララには期待してたのではないか?まあ、それはさておき。
当時は怪獣映画は大人気だったので、ガッパやギララもそれなりに話題にはなったと思う。怪獣映画が大好きだっただんぞう少年も、ガッパやギララはそれなりに気にはなった覚えがある。
だが、見たか?となると・・・実は残念ながら少年だんぞうは「ガッパ」も「ギララ」も劇場には見に行けずじまいだった。
小学生の分際では、あれもこれも見たい映画を劇場に見に行ける余裕はなかった。
そんなにお小遣いをもらっていたわけじゃなかったし。
見るとなると、夏休みなどに親におねだりをするしかなかった。
もしくは自分の貯めた少ないお小遣いの中から行くしかなかった。
おねだりする立場としては、そうそうあれもこれも頼めるわけじゃなかったし、自分のためた小遣いだと、金銭的にはなはだ心もとなかった。
ゴジラやモスラの映画もあったし、ガメラの映画もあったし、他には東映の「まんが祭り」もあった。怪獣ではなかったが特撮で「大魔神」もあった。
その中からぜいぜいどれかひとつを選んで「おねだり」するしかなかったのだと思う。
ゴジラやモスラやガメラはすでに有名で大スターだったし、東映の「まんが祭り」にも見たいアニメがあった。
そんな状況の中では、新参者(?)のガッパやギララは、私の中で優先度という意味では、少し後回しになってしまったのだと思う。
興味はあったし、見たい気持ちはあったのだが。さりとて、ゴジラ、モスラ、ガメラ、大魔神、東映まんが祭りを差し置いて・・・というわけにはいかなかった。で、結局「見ずじまい」になって、気づけばロードショーもいつしか終わってた・・・そんな流れだったと思う。
すでに大スターになっていたゴジラ・モスラ・ガメラ・大魔神相手では、ガッパやギララは知名度という意味で分が悪かったのだろう。
で、多分私と同じような思いをもっていた子供たちは多かったのではあるまいか。
「気にはなるけど、そこまでお金の余裕がない」という状況で。
ガッパやギララを見た代わりに、ゴジラやモスラやガメラや東映まんが祭りがを見れなくなってしまったら、悔いが残りそうな気もしたし。
ゴジラやモスラ・ガメラ、東映まんが祭りを見た代わりに、ガッパやギララを見れなくなるほうが、まだ諦めもつくような気もした。
当時、私のまわりで、ガッパやギララを劇場に見に行った子供はどれだけいただろう。
私の記憶では、あまりいなかった気がする。
もし居たとしたら、ゴジラやモスラ、ガメラや東映まんが祭りを見た上で、さらにガッパやギララも見た・・・そういう裕福な子供だったのではなかったろうか。
ガッパやギララに興味を持ちながらも私が見れなかった理由を探るには、同時期にどんな子供向け映画が公開されていたかを調べると、てっとり早いだろう。
で、ちょっと調べてみた。
まず、公開時期。ガッパもギララも、なんとどちらも1967年の春に公開されていた。
ギララは1967年3月。ガッパは1967年4月(ちなみに「大魔神」は前年の1966年だった)。
3月も4月も子供にとっては春休みの時期。
そう、ガッパもギララも1967年の春休みに「かぶって」いたのだ。
これだけでも、両者は不利だったはず。
さらに。
このガッパ対ギララの時期、他の映画会社では子供向けの映画でどんな作品を公開してたか。
これを調べて、私は自分がガッパやギララを見れなかった理由がはっきりわかった。
1967年の3月には、怪獣映画では大映の「ガメラ対ギャオス」が公開されていたのだ。
更にこの時期は、それだけではない。東映が公開していた「東映こどもまつり(後に「まんがまつりに改名」)では、なんと!サイボーグ009の2作目「サイボーグ009 怪獣戦争」が公開されていた。
なるほど・・。
これでは私はガッパもギララも見れるわけがない。
私には「サイボーグ009」は本命だった。何をさしおいても見た覚えがある。私には最優先だったはず。
さらに「ガメラ対ギャオス」も見た覚えがある。
ということは、この春休み、私は東映の「009」と、大映の「ガメラ対ギャオス」の両方見せてもらったことになるが・・。
同じ春休みに、2回も映画を見せてもらえたのだろうか。
いや、当時の私は1回の長期休みに映画を見せてもらえたのは1回づつだったはず。
ということは、「ガメラ対ギャオス」は、後のテレビでの再放送で見たのかもしれない。
ともかく、「サイボーグ009」「ガメラ対ギャオス」「ガッパ」「ギララ」の中から1作を選ぶとなると、私にとっては問答無用で「009」だったのは確かだ。
私の中では、009が相手では、「ガメラ対ギャオス」でさえタジタジだったのだから、ガッパやギララはとうていかなう相手ではなかった。仮にこの同時期にゴジラ映画が公開されていたとしても、私は009を選んだはずだ。
ちなみに、この1967年のゴジラはどうだったかというと、春休みには公開されてなかった。この年に公開されたゴジラ映画は「ゴジラの息子」で、公開されたのは12月だったようだ。
そう、ミニラが登場した映画で、これは確実に私は劇場に見に行った覚えがある。
ということは、ゴジラはガメラと時期がかぶらないようにしていたのかもしれない。
ガメラが春休みで、ゴジラは冬休みだったのだね。
これならどちらも劇場で見てもおかしくなかったのだが、いかんせんガメラは009とかぶってしまった。相手が悪すぎた。
もしも009がなかったら、私は「ガメラ対ギャオス」を見てたと思う。
そうなると・・どちらにせよ、私にはガッパやギララを見に行く余裕はなかったことになる。
ゴジラやガメラは怪獣界の2大スターだったのに、ゴジラやガメラを見ずに、ガッパやギララを見に行った子がもしいたら、今思うとその子はかなり「通」ぶれたのではないだろうか。
「ゴジラ?ガメラ?ふん、当たり前の選択だね。僕なんかガッパ(もしくはギララ)を選んだんだもんね。渋いだろ?」とでも、憎まれ口をたたいたかもしれない(笑)。
ただ、その憎まれ口をたたいた子が、更に「ゴジラやガメラなんて、もう古い。これからはガッパ(ギララ)の時代だね」とでも言ったとしたら、その子の予想は見事に外れたことになる(笑)。
ともあれ、私がガッパやギララを見れなかった理由は、他の作品の同時のラインナップを見て、よくわかった。
それにしても、ガッパとギララの両新人・・ならぬ両新怪獣が、よりによって同時期デビューだったとはね。
結果論だが、この年の怪獣映画が春休みがガメラで冬休みがゴジラだったのなら、ゴジラもガメラもいない夏休みの公開を目指せば、結果も少しは変わったのではないか。
ちなみにこの年の夏に主に子供をターゲットに公開された映画では、「キングコング」やウルトラマン映画があったようだ。
ただし、ウルトラマン映画はテレビ番組の再編集版だったようなので、ガッパやギララのライバルになりそうな映画は「キングコング」だったろう。
ガッパもギララも、相手がゴジラやガメラなら分が悪くても、相手がキングコングなら、善戦できたのではないかなあ、、、。
ギララもガッパも公開のタイミングが悪すぎたのではないか?
社運をかけて登場させたであろう日活と松竹の期待のルーキーなのだし、なにも同時期にぶつけなくても、、。
今思うと、そんな気もする。
そんなことを思うと、ガッパもギララも少し可哀そうな、不運な怪獣だった気もする。
ギララもガッパも、もしデビュー作が当たれば、ゴジラやガメラやモスラのようにシリーズ化されたのかもしれない。
日活も松竹も、本当はそんな下心もあったのではないだろうか。
結局、ガッパもギララも、1作作られただけだったようだ。
あの怪獣ブームの中で。
そういう意味では、ガッパもギララも、スターになりそこねた大怪獣だったと言えるのではないだろうか。
「ガメラ対ギャオス」を私はテレビでの後日放送で見たのだとしたら、ガッパやギララはテレビで放送はされなかったのだろうか。
もしされていたら、きっと見てたと思うのだが・・。
てなわけで、この記事を書いてる今現在まで、ギララとガッパの映画は、私は、まだ未見のままであり続けている。
「あの人は今どうしてる?」系の番組がたまに放送されることがあるが、ガッパやギララはその後どうしたのだろうね。
きっと、再び出番はあると思っていたんじゃないかな、両者とも。
ゴジラやガメラの次は俺たちだ!とばかりに。
なんか、こんな記事を書いてたら、無性に未見の「ガッパ」と「ギララ」が見たくなってきた。
私にとっては少年時代に、気にはなりながらも、縁がなかった怪獣。
なまじ、私にとって本命の「009」と時期がぶつかってしまったばっかりに。
レンタル屋さんに、置いてないかな。
そう思って最寄りのレンタル屋さんでDVDを探してみたのだが、ガッパもギララも置いていなかった・・。
ゴジラやガメラは何作もあったのだが・・。
そういう意味では、ガッパもギララも、いまだに冷遇され、報われていないのだろう。
ガッパよ、ギララよ。
「ふん、どうせお前は009の方がよかったんだろ?おかげでこちらは1作だけで終わってしまったんだぜ。いまさら何を。ほっといてくれ。選んでもらえなかった俺たちの気持ちなど、お前に分かってたまるか。」
なんて、言わずに・・・。
ただ・・・もしガッパを選んでたらギララは見れなかった。ギララを選んでたら、ガッパは見れなかった。どちらにせよ、君たち両方を見ることは、当時の私にはできなかったんだ。
だからもし恨むなら、「009」や「ガメラ対ギャオス」と、君たちを同時期にぶつけてしまった大人たちの事情を恨んでおくれ。
・・・公開当時、「ガッパ」や「ギララ」が気になりながらも、観損ねた子供たちは・・・きっと多かったのではないかなあ。そんな気がしてならない。
↑ 心なしか、孤独そうにも見えるギララ君。
あの頃の空前の怪獣ブーム、少年マンガ雑誌でも怪獣が、表紙を飾ったり
巻頭グラビアで特集が組まれたものです。
ボクは、テレビでの怪獣番組で満足していたし、子供には
入場料が高かったので、映画館に行って見るという発想は、なかったです。
東映まんが祭りも、残念ながら映画のポスターを眺めるだけでした。
小学生だけで映画館に入るのは、御法度でしたから。
ガッパもギララも、ググってみたけど造形センスは悪くないし、シナリオや
特撮技術も水準に達していただろうが、ヒットはしなかった。
いつの時代も新人を売り出して、スターに育て上げるのは大変ですね。
東宝はゴジラやモスラで、大映はガメラで怪獣ブームに乗っかってヒットさせてました。
テレビではウルトラマンが大人気で。
なので、日活も松竹もブームにあやかりたかったのでしょう。
たまに、怪獣映画をテレビで放送してくれることもあり、そんな時は楽しみでした。
ガッパやギララは、公開のタイミングを変えれば、もう少しなんとかなったかもしれないのに・・なんて思います。
ゴジラやガメラにぶつけるのは、新人怪獣には荷が重かったと思われます。
キングコングも人気はありましたが、元々は外国怪獣だったキングコングの映画を日本で製作して、夏に公開したんだと思います。
子供たちからの人気では、キングコングの人気はガメラやゴジラほどではなかったような気がします。
なのでガッパやギララは、夏に公開して、キングコングにぶつければ、よかったのに。
日活も松竹は、一日も早く公開したかったのかもしれませんが・・。
今回ご紹介された怪獣映画は、それを私に痛切に教えてくれました。
私は、「メカゴジラ」と「キングギドラ」といった悪役ファンなので、彼らを主人公にした映画が観たかったですね。
ガメラにぶつけるだけにとどまらす、ガッパてギララの両者も食い合いというか、つぶし合いをしたような、、、。
もったいなかったなあと思います。
ちなみにキングギドラは、私が最も好きな怪獣です。
造形的には、ゴジラやモスラやガメラに勝ってると思ってます。