ケンカというのは、子供時代にはつきものだった。
大人になってからのケンカだと、犯罪になったり裁判になったりもするが、子供時代のケンカは一過性のものが多かった。
大人になると、体力以外の要素も関わってくる(例えば権力だったり、お金だったり、コネだったり)するが、子供時代の一過性のケンカは、もっぱら体力勝負、体格勝負だったりした。
ケンカには、弱い者いじめなケースもあった。
たいがいそんな時にいじめられるのは、体格が小さい子の場合だったりした。
体格が小さくても、大きな子に取り入ることで、いじめられる側にいることを免れてる場合もあった。
もしくは、派閥のような「仲良しグループ」が、普段誰かとつるむことが少なくて一人でいる子をいじめる場合もあった。
で、いじめられる子・・というのは、よくいじめられてたりもした。
普段いじめられてる子が、ある日突然「いじめっ子グループ」の中に居て、誰かをいじめる側にまわっているということは、あまりなかったように思う。
よくいじめられる子は、いじめられても我慢していた。
だが、あまりにもいじめられ続けると、もうそれ以上我慢できなくなる。
とはいえ、まともに敵ボスと1対1で戦っても勝ち目はなさそう。
でも、もう我慢は限界なので、おとなしくしていられる「心のバランス」はない。
そんな時。
その拳法は炸裂する。
やぶれかぶれ! 相手を選ばず。一人で数名に反撃。
その方法は、必殺・両手ふりまわし戦法である!
ついに出るのだ、その最終奥義が。
その戦法がでる時は、その子はたいがい泣き叫んでいる。
時には鼻水もたれている。
「う゛あ゛~~~~っっっ!!」
両手をプロペラ状に前後に回転させ、相手を選ばず突っ込んでくる。
もちろん、手の先は「平手」ではなく、グーを握っている。
ふりまわした両手が誰のどこに当たるかは、その子本人もわからない。
敵のどこを攻撃するかピンポイント的に狙いを定めているわけではないからだ。
ともかく手数がほしいのだろう。
振り回せば、両手のこぶしが、どこかで誰かに当たるだろう・・・・との、やぶれかぶれ戦法なのだ。
それまで大人しくしてた子が、防御を捨てたようなこの超攻撃的態勢で向かってくるものだから、いじめっ子も一瞬たじろいだりもした。
考えてみれば、この奥義で向かってきた瞬間は、いじめっ子も防御態勢をとるから、いじめっ子の攻撃は一瞬「止む」ことになるので、攻撃は最大の防御である・・ということになる。
だが、この戦法は一気に力を放出する。
著しく体力を消費するので、「攻撃は最大の防御」でありながらも、デメリットも大きい。
その戦法は長時間は持続しないのだ。
この「両手ふりまわし・やぶれかぶれ戦法」は、狙いが定まっていない上に、体力消耗も激しく、また、いよいよ追いつめられた時にしか発動しなかったので、効率は悪かった。
とはいえ、ケンカのやり方があまりうまくない「いじめられっ子」にとっては、「ケンカのやり方」を度外視した「下手な鉄砲も数撃ちゃあたる」もしくが「玉砕」の戦法であった。
この戦法、振り回す両手が、それこそ「扇風機」の羽のようなスピードで回転するのであれば、相当な必殺技になるのだが、いかんせんそこは人間で、しかも子供。
降りまわす両手のスピードはあまり早くない。
なので、相手としては、回転する両手を邪魔しさえすれば、止めることは容易だった。
しかも、この技は疲れやすいので、すぐにスピードが落ちてきたりする。
回転してる腕の手首などをつかんでしまえば、止まった。
そんな時、そのいじめられっ子は、泣きじゃくっていて、相手がよく見えてなかったりもし、腕をつかんで回転が止まっても、ただただ絶叫は続いていたりした。
そう考えると、ケンカとしては有効な戦法ではないのだが、普段おとなしくしてた子が、はむかって向かってくるという意味では、意義があった。
一瞬かもしれないが、相手はたじろいだから。
少なくても、やられっぱなしではなかったことになりはしまいか。
だが、先にも書いたが、この戦法が出るということは、いじめっ子は、よほどその子を追い詰めていたことになる。
普段おとなしくしている子を、反撃に転じさせるなんて、よほどのことだ。
そこまで相手を追い詰めるのは、いかがなものかと思う。
そういう体験は、悔しさと共に一人の人間の幼児体験として心に刻まれ、大人になってもトラウマのようになってしまっているかもしれない。
特に、そのいじめっ子に対して、相当悔しい思いをしていたであろう。恨みとなって残ってしまっているかもしれない。
いじめっ子は、もっと、前の段階で・・ほどほどのところで、やめておけばよかったのに・・とは思う。
もっとも、今は、もっとひどい状況になってしまう場合も多いようだ。
ほどほど・・を知らないということは恐ろしいのだ。
大人になっても消えないほどの恨みを買うか、もしくは相手を殺してしまう・・という「やりすぎ」まで行ってしまう場合もあるから。
昨今のニュースを聴いてると・・そう思う。
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