時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

独身アパート・どくだみ荘

2007年10月26日 | 漫画・アニメ、そして特撮

私は毎週金曜日、ある漫画週刊誌を買うことにしている。
その週刊誌とは「週刊漫画」。
青年向け漫画週刊誌だ。

この週刊誌を買い始めたのはもう相当前だ。当時の、ある連載漫画にハマり、その作品読みたさに毎週「週刊漫画」を買うようになった。その連載漫画が終わってからも、なんとなく習慣でこの雑誌を買い続けている。
今連載されてる漫画の中では「蔵の宿」「解体屋ゲンさん」が好き。風俗系の宣伝が雑誌にけっこう掲載されてるので、女性は買いにくい週刊誌だろう。


で、この週刊誌を買うきっかけとなったその漫画とは、随分前に連載されていた「独身アパート どくだみ荘」だった、
作者は福谷たかしさん。


この漫画、けっこう下ネタが多く、卑猥な表現も多数ある。
だが、この作品は単なるエロ漫画ではなかったと思ってる。
全体的には、ペーソスあふれる切ない作品だった。
都会で暮らす貧乏な若者男性の悲哀があふれていた。
笑いながらも、身につまされて笑いきれないものもあった。


作品の傾向としては、松本零士さんの「男おいどん」の青年向けバージョンみたいな雰囲気があった。
「男おいどん」は大好きだった。ああいう作品はもう無いのかな・・と思ってたら、ひょんなことから見つけた「どくだみ荘」がそれに近いような気がした。
卑猥な描写がけっこう出てくるので、女性にはあまりお勧めできないけど(笑)。


この漫画は確か映画化もされたはずだ。
見に行こうかどうか迷ってるうちに、気づけば終わってた。
レンタル屋さんから借りてきたいなとは思ってるんだが、あいにく我が家の近くのレンタル屋さんには置いていない(泣)。


主人公の堀ヨシオ君は、「金ない、職ない、女いない」の3拍子そろった24歳の若者。
確か・・・元々は、ミュージシャンを志して東京に出て来た(はず)のだが、東京での現実は厳しく、どん底生活。
恋すれど、いつもいつも悲惨なフラれ方をするばかり。救いようが無い人生を送っているようではあるが、強い生命力で辛い世の中を生きていく。どうしようもない奴のように思えるが、実は心の中は優しい奴なのだ。
オンボロな四畳半のアパートで、悲惨な青春を送るこのヨシオ君に、私は大いに感情移入してしまった。


この作品は、「週刊漫画」の看板作品だった。この漫画のおかげで「週刊漫画」は相当読者を増やしたのではないだろうか。

でも、最後の方は段々ストーリーがパワーダウンしてきてしまい、気づけばうやむやのうちに終わっていたような気がする。
確か、連載再開したこともあったような気がするが、往年の輝きは戻らなかった・・それが残念でならない。


そうこうしてるうちに時は流れ、ある日、私は作者の福谷たかしさんの急死を知ることになった。
愕然とした。残念だった。
結局、ヨシオ君は、な~~んも良い事がないまま作者と共に居なくなってしまったのだった・・。
最終回らしき「結び」が描かれぬまま。


この作品を読んでると、不恰好な生き方をするヨシオ君には親近感を覚えたもんだった。
自分に似てる部分もあるし、私の友達にも似たようなヤツがいた。

で、自分自身にもツキの無さみたいなものはあるが、このヨシオ君に比べたらまだマシかな・・と、妙な元気づけをもらえたのだった。
だからつい応援したくもなった。

「おいおい、ヨシオ。きっと、この次は、きっとなんか良いことがあるよ」と、声をかけたくなった。
いつか、この漫画の中で、このヨシオ君にも何か良い事があるに違いない、何か「救い」が描かれるに違いない・・そう思って読んでいた。


でも、結局は、な~~~んも良い事などないまま・・・だった・・。


作者がこの世にいなくなってしまったんじゃ、このヨシオ君には、何も良い事がおきそうもない。
ある意味、これも現実なんだよね。


人生、運のいい奴もいるが、反面、運の悪い奴もいる。
生きてれば、「俺ってなんでこんなにツキがないんだろ」と思いたくなることもある。
「運に恵まれている奴には、こんな心境分かるまい」・・と憎まれ口を叩きたくもなる。
そんな時、ヨシオ君は、世の中のツキのない奴の「ツキの無さ」を集めて背負って生きてるような気がした。社会の底辺で。


だから・・つい感情移入してしまったのかもしれない。今、思うに。



私にとって「独身アパート どくだみ荘」という作品は、どうにも忘れられない作品。
で、哀愁のボヘミアン・堀ヨシオ君が、今どこかで救われた人生を送っていてくれることを願うばかりなのです。
例え架空の存在であったとしても。


かつて「どくだみ荘」という名の独身アパートがあった。そこには、哀愁のボヘミアンが住んでいた。
破れても破れても、夢を見ていた。フラれてもフラれても、女性に恋してた。
そして、世の中に踏みつけられても、裏切られても、しぶとく生きていた。







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