小学校時代、授業の中で作文を書く授業があった方は多いのではないだろうか。
私の学校にもあった。
たぶん「国語」の授業だったのだろう。自分が何を書いたかは全く覚えていない。
だが、級友が書いた作文の中で1編だけ未だに印象深く覚えている作文があった。
それはSちゃんという女の子の級友で、彼女の書いた作文の中に、こんな1文があった。
「 いなか。 いなか。 いなかに行きたいなあ。 」
というくだり。
確か、つたない挿絵入りで書かれていたと思う。
私はSちゃんとは特別仲が良かったというわけではなかったが、かといって仲が悪いというほどでもなく、言わば「普通の級友」という感じの仲だったと思う。
家に行ったりしたこともないし、第一放課後に一緒に遊んだ覚えもない。
教室の中で普通に話す・・・そんな程度だったと思う。
なので、Sちゃんのことに関しては詳しくはあまりよく知らなかった。
彼女がどこに住んでいるかとか、彼女の親の田舎はどこなのかとか。
「いなかに行きたいなあ」と作文で書いているからにば、彼女は・・というか、彼女の親は地方から東京に出てきた人で、田舎にはSちゃんにとっての爺ちゃんや婆ちゃんが住んでいて、たまに親に爺ちゃんや婆ちゃんの住む田舎に連れていってもらってたのかもしれない。
ということは、Sちゃんは実際に自分の親の田舎を知っているわけで、そこには都心では望めない環境や風景があり、普段都心に住んでると中々そういう場所に行けないから、「行きたい」という気持ちにつながったのだろう。
そうじゃなかったとしたら・・彼女なりに「いなか」というものを想像して、その想像のなかの世界に都心を離れて行ってみたい・・・と夢想していたことになる。
まあ、それもありがちだろうと思う。
まあ「いなか」にも色々ある。
県庁所在地だったりすると、「地方」ではあっても、都心とあまり変わらない風景が多いだろう。
大きな駅があり、駅前にはロータリーなどもあり、そのまわりにはスーパーや飲食店街、ビジネスホテル、デパートなどがあったりして。人も多くて。
だが、Sちゃんの考えた「いなか」は、きっとそういう場所ではなく、地方の辺鄙な場所だったと思う。
縁側があったり、家の周りには里山があったり、田んぼがあったり、清流が流れていたり。
場所によっては海にだって近いかもしれない。
きっと都心の家より家は大きくて、庭があって、へたしたらトイレは「離れ」になっていたかもしれない。
少なくても、私が想像する「いなか」は、そんな感じだ。
Sちゃんの考えた「いなか」がもし、都心と変わらない開けた場所だったら、あんなに切実に作文に綴らなかったのではないか。
都心と違う環境、都心では望めない環境がある「いなか」だからこそ、行きたくなったのだと思う。
今にして思えば、Sちゃんに「君のいなかって、どこ?」とか「どんな場所?」とか聞いておけばよかった気もするが、当時そこまでしみじみと仲が良かったわけでもなかったので、聞きそびれてそのままになってしまった。
聞けば、きっと答えてくれたろうとは思う。
なぜ私がSちゃんの作文の中の1節をよく覚えているかというと、きっとその想いに私も共感したからだと思う。
私自身は生まれも育ちも都心だったが、母親の田舎は地方だったし、田舎の祖母の家にしばらく預けられていたこともあって、田舎の風景や環境に私は親しみを感じていたから。
祖母の家は決して山間の場所にあったわけではなく、人里にあった。
だが、古い家の佇まいや、古い家具、砂利道、池、川、大きな空、人通りの少ないやや寂れた町、近くの木材屋から聞こえた「木を切る音」などが好きだった。家は古かったが、広かった。
それらは普段私が暮らしていた都心では「無いもの」であった。
だからこそ、自分の田舎と、Sちゃんの「いなか」を重ね合わせていたのだと思う。
「その気持ち、わかるよ。ボクと同じだね。」などと思ったのだったと思う。
だから、Sちゃんの作文の一節を今でも覚えているのだと思う。
そのSちゃんの「いなか。いなか。いなかに行きたいなあ。」という文は、作文のラストであった。「しめ」というか。
その文にたどり着く前の段階の文章が、どんな内容だったかのかはわからない。
もっとSちゃんと仲がよかったら、全文読ませてもらったかもしれない。
そうしたら、「いなか」談義で盛り上がったのかもしれない。
前述の通り、その時は私も作文を提出したはずなのだが、自分の書いた作文は全く覚えていない。
自分の書いた作文は全く覚えていないのに、級友が書いた作文の1節だけ今でも覚えているというのもヘンな話ではある(笑)。
Sちゃんと同じように「いなか」をテーマにした作文を自分も書けばよかった・・・当時そんな風に私は思ったのではないか。
そう思えてならない。
あなたは、小学校時代に授業の一環で書いた作文で、どんなことを書いたか覚えているだろうか。
読者感想文は、書きました。
私はとりあえず「ナポレオン」と「織田信長」の伝記本の感想文を書いたのは覚えてます。
皆の前で読まされた覚えもないです。
私がSちゃんの作文のラストフレーズを覚えてるのは、確か、ちら見したからだったと思います。
きっと他の級友の作文も、ある程度はちら見してたんだと思います。
その中で印象に残ったのがSちゃんの作文だったのでしょう。
都会の子供が田舎の自然環境に憧れるのは、私自身もそうでしたから気持ちはわかります。
逆に、田舎の子供が都会に憧れるのは、当時の私にはあまり理解できてなかったと思います。
カブトムシやクワガタなど沢山の虫を捕まえたり、山や清流で遊んだりは都心ではできなかったので。
田んぼや畑、里山で遊ぶなんてことも都心では無理でしたし、、、
木綿のハンカチーフは、歌詞のドラマ性が好きでした。
ディランの歌詞をヒントにして書かれた歌詞でしたから、ディランファンの私には親近感を感じてました。
読書感想文、夏休みの思い出のことを、書いた記憶があります。
小学生なので、制約も少なくワリと楽に書けました。
ボクの学校では、先生に提出するだけで、みんなの前で読まされることは
なかったです。
「いなか」に憧れるSちゃんの気持ち、ワカる気がします。
都会の方は田舎を、田舎の方は都会に憧れるものです。
子供のころ、夏休みに帰省して母の実家のそばにある、
本物のたんぼや畑を見て、その広さに感動したものです。
収穫前のナスやキュウリ、スイカが、とても美しく見えました。
本物のカエルの鳴き声を聞けたり、養豚場で生きている豚を見れたり
なにもかもが新鮮に感じられました。
都会を初めて訪れた方も、きっと鮮烈な印象を感じたことでしょう。
都会に住む恋人を想う人の心を歌った、マイ・ペースの「東京」という曲が大好きでした。
太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」もイイ曲だったなぁ。