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気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

恋はせつなく   by  パトリック・シモンズ

2020年08月13日 | 音楽全般

 

 

   Have You Seen Her  by Patrick Simmons

 

70年代に音楽業界に大きなムーブメントを起こしたアメリカ・ウエストコーストロック。

そのウエストコーストロックの頂点にいたのが、イーグルスとドゥービーブラザーズであった。まさに双璧であり、両横綱だった。

パトリック・シモンズ・・通称パット・シモンズは、そのドゥービーブラザーズの中心人物の一人であった。

 

そのシモンズが、ソロ名義で発表したアルバムが邦題「メロウ・アーケード」であり、今回取り上げる「恋はせつなく」は、そのアルバムに収録されていた曲だ。

私はこのアルバムをレンタル屋で借りてきて、カセットに入れ、ウォークマンで毎日聴いてた時期があった。

それは大概、朝の通勤時であった。

 

家を出てウォークマンを再生しながら通勤してると、毎回通勤時の同じタイミングで同じ曲がかかることになる。

通勤ルートは毎日決まっていたし、カセットでは曲の長さも配列も一定だったから。

 

この曲は当時のLPでB面の途中に収録されていたので、通勤ルート上のほぼ毎回同じ駅でこの曲が流れていた。

その駅は、急行が停まる駅で、その駅に電車が止まると、この曲が流れていたので、その駅からの景色とこの曲は、私の中でシンクロしていた。

まぶしい朝日が、駅の近くの民家の屋根などに反射して、まるで屋根が発光でもしているかのように輝いていた。

季節はいつごろだったかもう忘れてしまったが、夏の暑い日差しを思わせるようなまぶしさであった。

その日差しを見るたび、まるで夏の海に来ているかのような錯覚を覚えたもんだった。

 

シモンズはドゥービーの中心人物で自作曲も書いていたが、この曲はカバー曲であった。

当初この曲のオリジナルバージョンを知らなかった私は、てっきりこの曲はシモンズのオリジナルかと思っていた。

だいぶあとになって、この曲はチャイライツ(シャイライツ)がオリジナルであることを知った。

 

シモンズのこのアルバムを私が最後に聴いたのはカセットの時代だったし、その後けっこうな年月が過ぎており、CDの時代になってからは聴き返していない。

なので中身の詳しい内容に関しては記憶がおぼろげだ。

だが、アルバムが好盤であったのは覚えている。じゃなかったら毎日聴いたりしていなかたと思う。

その中でも、私が一番気に入った曲が、この「恋はせつなく」だった。

 

ドゥービーブラザーズというと、初期のノリノリのロックンロールバンドのイメージと、後期のAOR路線のイメージがあるが、この「恋はせつなく」はどちらかというとAOR路線だった気がする。

 

個人的にはドゥービーは初期のロックンロールの路線の方が好きだった。

でも、シモンズのこのアルバムでは、この「恋はせつなく」が一番気にいった・・ということは、私がAOR路線も嫌いではなかったからだろう。

 

オリジナルのチャイライツはジャンルで言うとソウルで、ボーカルグループである。

「恋はせつなく」はチャイライツにとっては1971年の大ヒット曲でR&Bのチャートで1位、全米チャートでも最高3位を記録し、チャイライツの代表曲のひとつ。

後に、チャイライツのオリジナルバージョンを聴いてみたのだが、冒頭にけっこう長いセリフが入っている。

私はこの曲をシモンズのバージョンで初めて聴いたので、どうもシモンズのバージョンの方がなじみ深い。

長いセリフが入らず、イントロが終わるとすぐにボーカルが入る、シモンズのバージョンの方が。

 

当時の音楽界では、ソフトアンドメロウと名付けられた路線が人気があったのだが、同時にAORと呼ばれたジャンルもあり、私にとってはどちらも同じような路線に聞こえていた。

都会的で、耳触りがよく、けっこう売れ線で、ソウル音楽とフュージョン音楽とロックが混ぜ合わさった感じで、全体的にはソフトな音楽だった。

ソフトアンドメロウやAORと呼ばれたジャンルを、「軟弱」とか「売れ線すぎる」とかで毛嫌いする人もいた。

その一方で、女性にも受けが良く、ジャンルとしては人気のジャンルでもあったのも確か。

 

シモンズのこの「メロウ・アーケード」というアルバムの原題は「Arcade」であった。

それを日本で売る時にレコード会社が、当時流行っていたソフトアンドメロウというジャンルの「メロウ」を原題に付け加え、販売促進につなげようとしたのだろう。

 

ただ、ドゥービーズのロックンロールバンドとしての面を知っていた私としては、ドゥービーズの中心人物であったシモンズのソロアルバムに、流行りの「メロウ」という言葉を付け加えたことに、いささかの違和感を感じたものだった。

たとえ私がAORも嫌いじゃなかったにしても・・だ。

まるでシモンズが流行に便乗しているみたいで、どうも・・・。

なので、邦題もシンプルに「アーケード」でよかったんじゃないか・・・とも思ってたいたことを覚えている。

まあ、シモンズはドゥービーズでも、しゃれた楽曲も作っていたけどね。

「アーケード」というアルバム自体は、けっこうロックしていた曲も入っていると思ってたから、メロウという言葉はいらなかったのでは・・。

 

ただ、ジャケットは、ややAORっぽく見えたかな(笑)。

もしかしたら、日本のレコード会社は、そのへんも考慮したのかもしれないね。

 

 

ともあれ、この「恋はせつなく」という曲は、アルバムの中でも出色の出来だったと思う。

もちろん、「so wrong」という曲などもよかったけれど。

 

この曲を聴くと・・・今でも・・通勤途中の某駅から見えた民家の屋根が、強い日差しで照り返してまぶしく光っている光景が蘇ってくる。

まるで夏の海辺の民家のように。

 

 

 https://www.youtube.com/watch?v=A6HMmHSSkgI

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (鮎川愛)
2020-08-21 20:28:43
洋楽ならではのムード歌謡ですね。

静かな夜を過ごしたい時に流すと、最適です。

バンド音楽には無い、楽曲全体を覆うようなオーロラが見えました。

だんぞうさんの思い出も、この曲に乗せて、さらに美しく見えますね。
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Unknown (だんぞう)
2020-08-21 20:56:44
確かにムーディーな曲ですよね。
ソフトなメロディーや歌声、サウンド。
聴いてて心地よい曲です。

この曲にまつわる私の記憶は、何気ない通勤途中の風景の一場面です。
その駅は、今も私の通勤途中の駅であり続けています。
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