汨羅の観察人日記(一介のリベラルから見た現代日本)

自称『リベラル』の視点から、その時々の出来事(主に政治)についてコメントします。

覚醒剤としてのアベノミクス

2013-05-02 00:59:16 | 政治全般

巷間、アベノミクスの効能が喧伝されている。やれ円安で輸出企業が生き返る。やれ、株高で景気が上向く云々。

日本銀行は白川総裁時代の金融政策は忘却の彼方か。日銀総裁は2%のインフレターゲットを達成するため、異次元の金融政策をやると大見得を切った。

大手マスコミは、あたかも日本経済は復活する。ただ、円安による物価高は心配といったような、基本的にはアベノミクスを肯定する記事を書き綴っている。

しかし、端的にいえば、アベノミクスなどバブルを発生させるに過ぎず、日本経済の復活など出来はしないということは、若干の経済学の知識、それもネットで検索できる程度の知識でわかる。そして、もう少し深く考察すると、日本経済を破滅に追い込みかねない、愚作であるということもわかる。

では、まず、アベノミクスとやらで日本経済は復活しないのか。簡単である。少子高齢化社会で生産労働力が減る上、国内市場が縮小する中で、短期的政策で経済成長など出来るわけがないのである。

少子高齢化の影響について若干捕捉する。経済成長は①生産労働力人口の増加、②技術革新及び③資本蓄積の増大によってもたらされる。少子高齢化社会においては、①の生産労働力人口の増加は、まさに人口の増減が直結する話である。③の資本蓄積の増大について、縮小する市場において設備投資等の資本蓄積を行う必要性そのものが減少するということは容易に理解できる。残るは②の技術革新だけとなる。①と③の要因で経済成長を望めない以上、短期的政策で経済成長を目指すということ自体に無理があるのである。

このようにいうと、やれヨーロッパ云々、アメリカ云々指摘する輩が出てくる。しかし、ヨーロッパは欧州そのものが一つの市場であり、経済に占める貿易の割合が2割の我が国とは根本的に経済構造が違う。具体的にいうと、西欧は中欧及び東欧も含めて経済圏にしているので、個々の国を見れば少子高齢化は進行しているが、欧州全体でみると、少子高齢化社会ではない。アメリカに至っては、移民で人口が増えている。

つまり、今の日本に必要なのは目先の経済成長ではなく、少子化対策をしっかりとやって人口増を図り、または女性の社会進出、65歳以上の高齢者が働き続けることの出来る社会システムの構築であり、いわば「漢方薬」的な政策である。

一方、アベノミクスとやらは、目先の株高と円安により、あたかも経済が強いと言われていた時代の日本を彷彿とさせ、一見、日本が復活したように見える。これに釣られ、極短い期間、経済は上向く可能性はある。しかし、経済成長の前提となる事項は何も変わらないのだから、経済成長するわけはなく、いずれ期待はずれに終わり、株は売られ、再び経済は冷え込む。言い換えると、アベノミクスとやらは、日本社会に覚醒剤を打ち、一見、元気になったと勘違いさせるだだということである。

ここで覚醒剤といったのは、単に短期的によくなったと勘違いさせるだけではなく、強烈な副作用があるからである。その副作用とは「日本国債」の価値下落である。

日本円を今まで以上に刷るのだから、短期の投機的な動きは別として、中・長期的には、貨幣量が増えて日本円の価値が下がるのであるから、通貨の価値と連動する国債の価値も下落するということは、一般論として理解できるであろう。国債の価値が下がるということは、国債発行時の利回りが高くなるということである。国債発行時の利回りが高くなると、将来的な償還が問題となる以前に、日本の金融機関が有する日本国債の価値が減ってしまい、結果、日本の金融機関は大量の不良債権を持つということになる。

ここで注意が必要なのは、国債は償還金額で発行されるので、国債の市場利回りが増えると、それより当該金利より低利で調達した時と比し、国債の価格が下がるということであり、金融機関の資産は目減りするのである。自己資本比率で縛られる今日の金融機関の多くは、安全な金融資産として大量の日本国債を有している。これが不良債権化するのであるから、アベノミクストやらを継続すると、日本経済はパニックに陥るのはほぼ間違いないといえる。現に、このリスクが高いからこそ、白川総裁は次元の違う金融政策など拒否をしてきたのである。

これこそ、私がここでアベノミクスは覚醒剤であり、かつ、愚作であると指摘する理由である。

最後になるが、アジアにおいてEUのような経済共同体を形成すれば、西欧諸国のように、少子高齢化ながらも経済成長云々という議論もあると思う。しかし、このブログを作成している段階(平成25年5月1日)の状況を鑑みるに、何を勘違いしたか、靖国神社及び憲法改正で中韓の神経を逆撫でする外交政策を行っているので、東アジアにおける単一市場など安倍政権では、その萌芽すら望むべくもないであろう。