蟷螂の独白

世に背を向けた蟷螂です。喜怒哀楽を綴って18年、モットーは是々非々の団塊世代です。

遠くの名医

2020-12-20 00:18:00 | 徒然

蟷螂は幼少時から蒲柳の質だったので、主治医は浅草から遠く離れた地の、新宿職安通りにあったM医院でした。

看板には『東京大学医学部卒、医学博士』と嫌味っぽくなく大書してありましたが、行き倒れにも治療を施す、とても優しい先生でした。
その先生にはよく、『ドイツの新薬』を処方された記憶があります。
診察室はクラシカル、時折先生のお嬢さんの弾くピアノの音が聞こえてきましたが、その反面、行き倒れのホームレスが担ぎ込まれている現場に出くわしたこともありました。
 
結婚して世帯を持ち、浅草から川向こうの本所へ移っても、発熱時には深夜にタクシーを飛ばして診察を受けに行ったものです。
愚母のO蔭の同窓生にピアノを習っていたので、その人の御亭主の医院にもかかりましたが、ちょび髭が好きになれず、診察もおざなりだったので『あ、この先生はヤブだな』と肌で感じて、結局結職安通りのM医院ということになるのです。
親父が慈恵に眼の手術で入院した際に、乳首から膿血が出たと担当医に話したら、『それは女性化乳房である』と取り合ってもらえず、退院したのちにM医院へ行ったら即癌研を紹介されたことがありました。
癌研の診察の結果は異常なしだったので、その旨を伝えに親父がM医院へ行くと、『それはおかしい』と言って、今度はがんセンターを紹介され、そこで初めて0期の男性の乳がんであると診断された次第です。
男性の乳がんは乳首に発生することが多いと、最近通いはじめた乳がん専門のクリニックで聞かされ、何十年ぶりかで納得しました。
肝臓を痛めると女性ホルモンが分解されにくくなり、男性のお乳が大きくなるそうです。
親父は結核の手術の輸血で肝炎(当時は非A非B、現在はC型肝炎)に感染し、しばらく薬を投与されていました。
M医院の先生も、親父の肝炎が気になっていたのかもしれません。

『遠くの親戚より近くの他人』はマンション住まいをしている蟷螂たちにとってはもはや死語、隣の人がどのような仕事をしているかなんて、全く知りません。
『近くの他人より遠くの親戚』なのです。
そうなると、『近くのヤブより遠くの名医』もありだと思います。
一時は蟷螂も心臓手術で金沢大学まで行かなければダヴィンチによる手術を受けられないと諦めていましたが、偶然浜田山にダヴィンチによる心臓手術の草分け的存在の金沢大の先生が開業していることを知り、メールを送ると即診察ということになったのです。
城東から浜田山までは3本の電車を乗り継ぐほど遠く、動悸のしていた蟷螂にとってはハードでしたが、先生はとても気さくで、新宿の名医を彷彿とさせました。
その一方で、近くのクリニックには10年通って聴診器を当ててもらっていましたが、一度も心雑音を指摘されたことがなく、あろうことか紹介状には『以前から聞こえていた心雑音が大きくなり』と書かれてあることを知り、怒りがふつふつと込み上げてきました。
ヤブにも色々ありますが、狡猾なヤブはいけません。
『医は仁術』はM医院で途絶えたのでしょう。
 

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2 コメント

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Unknown (呑兵衛あな)
2020-12-20 14:28:16
いわゆる赤髭先生のような町医師がいなくなりましたね。
東京ですらそうなのですから、当のような田舎にはいるのでしょうか?
探し回るわけにもいかないのでおとなしくしています。
しかし、訪問診療すると看板を上げている医院がありますので、近いうちに内科系は転院するつもりです。
総合病院といっても、各診療科ごとに連携しているわけではありませんし、いざ手に負えなければ大病院に紹介状を書いて転院するだけですから、町医者と変わりがないと思い始めました
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Unknown (蟷螂)
2020-12-20 15:53:29
コメント、ありがとうございます。
地方であると、ドクターの選択は即命に関わるので慎重さが求められますね。
大学病院は研修医の若造に診てもらうか講師レベルに診てもらえるかの不安との戦いです。
からといって町医者はヤブが多いので、ネットで探し当てた医者の経歴や論文などを見て、腕の良し悪しを判断することにしています。
浜田山の渡邊先生は、医大は国立でなければ医学を学ぶ意味がないと著書で述べています。
しかし、最近の東大は医師国家試験の合格率が下降傾向にあるので、微妙ですね。
私は医者の出身高校が一番問題であると思っています。
少なくとも◯成出にはかからない方が無難でしょう。
この記事の10年間雑音がわからなかった医者は◯成でしたから。
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