蟷螂の独白

世に背を向けた蟷螂です。喜怒哀楽を綴って19年モットーは是々非々の団塊世代です。

迷いは禁物

2022-08-11 16:09:14 | 文学

佐藤泰志に迷いは禁物というタイトルのエッセイがあり、軽く読めて面白かった。

芥川賞候補になること5回(最多は阿部昭、島田正彦の6回)、全て落選し、失意の中で自殺した作家です。
『きみの鳥はうたえる』を読んで、あ、この作家は文章をきちんと整えれば、確実に芥川賞をとってもおかしくない作家だと確信し、佐藤泰志の作品を全て読むことを決意して、同居人の『また本、買ってる』というクレームにも負けずに買い続け、そうなると高校生時代の初期の作品も読んでみたいという衝動に駆られて『光る道』をamazonの中古書籍で見つけて購入。
一気読みしました(今のところ最後のエッセイだけ一気読み)。
エッセイの『迷いは禁物』は日刊アルバイトニュースのNews P lazaに、1984年5月23日から1985年7月2日まで56回連載されたものです。
軽く笑える文章で、一番筆が乗っている時期に書かれたものなので、当時の日常が描かれていてブログを書く心得のようなものが伝わってきます。
 
エッセイでは彼の机上が紹介され、ノーマンメイラーや大庭みな子、丸山健二などの書籍がフクロウのブックエンドに挟まっているとあります。
ん。
マルケンの読者なのかな?
『犬、笑うな』でもマルケンの『夜、でっかい犬が笑う』をモチーフにしていますが、佐藤は犬が大嫌いで、道を歩いていて前から犬が来ると、くるっと踵を返して反対方向に歩き出すそうで、そうなると、犬嫌いの泰志を見たら、マルケンが大笑いするでしょう。
まぁ会うとしたら、マルケンがあっち側へ行ってからになりますが・・・
所持品もシンプルで、格安モンブランのペン書き一本槍、時計は義父からもらったオメガを酔っぱらって喧嘩をして壊すという破滅型作家ぶり。
 
1990年10月10日、秋の爽やかな日に自死した佐藤泰志は、蟷螂のひとつ上の団塊世代、芥川賞を5回落選した原因は開高健でしょう。
『書くことの重さ』というビデオを見た限りですが、あの時期は有能な作家がバタバタと落とされて、受賞作なしが何回もありました。
作家の将来性をすべて否定するような選考の仕方に疑問が残ります。
あの頃は文学が不毛の時代で、このエッセイ内でも読売新聞に掲載された当時の小学生の、将来なりたい職業が紹介されていて、男女とも1位はアナウンサー、小説家は男子では33位、女子では45位だったそうです。
今だったらどうでしょう。
 
羽田圭介は高校大学の後輩だけど、彼の書いたものは同窓会のパンフレットでしか読んでいません(蟷螂の気を引く文章ではなかった)。
おそらく彼も本気で作家になろうと考えていなかったのではないでしょうか。
流されて、行きがかり上作家になったようなヤツで、そもそも蟷螂の読書傾向とはかなり離れた所に位置しているので、あっち側にでも行って暇ができたら読んでみようと思っています。
ただ、羽田は駿河台校舎末期の質実剛健の男子校卒業(現在は調布の上共学)なので、今後骨っぽいものを書くようになったら、1冊くらいは読んでみようかとも思っていますが。
 
小中高大の同窓生の俳人が国分寺に住んでいるので、今度電話でもあったら佐藤靖志終焉の地は今どうなっているか訊ねてみよう。
 
 
 

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