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第四章 JR体制への移行と国労の闘い
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第六節労働委員会闘争をはじめとする権利闘争
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七 国労バッジ着用差別
国鉄時代から一貫して、国労組合員は着用して勤務していた。
国鉄時代もJRになってからも、勤務時間中の組合バッジ着用について、利用客から苦情が出されたことは特になかった。
ところが、JRは、就業規則に「社員は、勤務時間中に又は会社施設内で会社の認める以外の胸章、腕章等を着用してはならない。」、「社員は、会社が許可した場合のほか、勤務時間中に又は会社施設内で、組合活動を行ってはならない。」などの規定を設け、職場で、組合バッジを着用しているのが国労組合員だけであることを利用して、執拗にバッジ取り外しを求め、従わない組合員に対しては、厳重注意、訓告処分を発し、夏期手当や年末手当のカットを行っているのである。たとえば、JR東日本の大量処分(89年5月25日)、JR東海の大量処分(89年6月7日、7月14日)など、多くの組合員が、バッジ着用のみを理由に低く考課査定され、経済的不利益だけでなく、担務差別が行われたり、あるいは分会活動に支障が生じる配転が強行されるなど、国労の団結権を侵害する差別事件が多発している。
東京地本新幹線支部事件は、東京保線所小田原支所、東京第一運転所、東京第二運転所などに所属する国労組合員75人に対して、国労バッジの取り外しを執拗に求め、バッジ着用を理由に、厳重注意を行い、87(昭和62)年夏期手当を5%減額した事例である。職制が国労組合員に対して、国労バッジの取り外しを執拗に求めた態様は、就業時間中に組合員を呼び出して「首覚悟でやっているのか」とか「子供も奥さんもいるのだから」とか、「バッヂを着けて仕事をしても仕事じゃない」とか「目ざわりだから業務に支障があるのだ」などと発言したり、あるいは、「こんなものをつけているからお前は運輸部へ配属されたのだ」との発言で、組合員にバッジ取り外しを迫るものであった。東京地労委1989年2月7日命令(交付は3月2〇日)は、厳重注意ならびに夏期手当の減額は、「組合員が国労にとどまることに不安を抱かせることによって国労の組織を弱体化せんとした支配介入行為である」とし、労組法第7条3号に該当する不当労働行為にあたるとした。これに対して、JR東海は行政訴訟に持ち込んだ。
ほかにも、神奈川地労委1989年5月15日命令(918人が夏期手当カット)、埼玉地労委1993・4・23命令(5?6名夏期手当カット)、岡山地労委1993年9月17日命令(組合員11人に対して、国労バッジを着用するなど、勤務成績が特に良好でなく、昇給欠格条項に該当するとして昇給1号俸減じた昇給差別事件)、神奈川地労委平成6年7月29日命令(4194人が対象となる夏季手当カット)などがあり、いずれも不当労働行為にあたると判断されている。
また、国労バッジ着用の組合員25人に対する夏期手当5パーセント減額について、不当労働行為に該当し、不法行為に基づく損害賠償義務を認め、減額分の支払いを認めた広島地裁1993年10月12日判決も出されている。
国鉄鹿児島自動車営業所事件は、国労バッジの取り外し命令に従わなかった国労組合員であるYを本務から外し、10日間にわたって、営業所構内に降り積もった火山灰除去作業に従事させたことが業務命令権の濫用であり、不法行為にあたるとして、営業所所長と助役に対する慰謝料を請求した事例である。
一審の鹿児島地裁1988年6月27日判決は、組合員バッジを着用しての勤務は、当時の国鉄のおかれた状況および労使関係の状態等からみて、職場規律を乱すおそれがあり、職務専念義務に違反するところがあるから、その取り外し命令には合理的理由があるとしながら、バッジの取り外し命令を拒否したYに対し、1〇日間にわたって、営業所構内に降り積もった火山灰除去作業に従事させたことは、本件業務命令がバッジ取り外し命令に従わなかったことに対して「懲罰的に」発せられたものであり、同人に「かなりの肉体的、精神的苦痛を伴う作業を懲罰的に行わせるというのは業務命令権行使の濫用であって、違法であり、不法行為を成立」させると判断し、慰謝料1〇万円を認めた。そして、二審の福岡高裁宮崎支部1989年9月18日判決もこれを維持した。
ところが、最高裁第二小法廷1993年6月11日判決は、一転して、「本件バッジを着用したまま点呼執行業務に就くという違反行為を行おうとしたことから、自動車部からの指示に従って、被上告人をその本来の業務から外すこととし、職場規律維持の上で支障が少ないものと考えられる屋外作業である降灰除去作業に従事させることとしたものであり、職場管理上やむを得ない措置ということができ、これが殊更に被上告人に対して不利益を課するという違法、不当な目的でされたものであるとは認められない」とした。
続く