国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

国鉄労働組合史 193

2011-06-08 10:00:00 | 国鉄労働組合史
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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○三 新会社の設立と国鉄清算事業団│
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分割・民営化される新事業体への採用通知

 さて、国鉄改革法第23条によると、設立委員は国鉄を通じて「その職員に対し、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して、職員の募集」を行い(第一項)、それをうけて国鉄は「職員の意思を確認し、承継法人別に、その職員となる意思を表示した者の中から……採用の基準に従い、その職員となるべき者を選定し、その名簿を作成して設立委員等に提出」し(第2項)、その名簿に掲載された国鉄職員のうち設立委員等から採用する旨の通知をうけた者は「承継法人の成立時において、当該承継法人の職員として採用される」(第3項)という仕組みになっていた。
 そこで、2月12日に開かれた第3回設立委員会は、国鉄から提出された採用候補者名簿を了承し、各新設会社などの組織・機構を決定した。それによると、希望退職者数が予想を上回っている状況の中で採用者総数は20万5586人となっており、これは所定定員(政府「基本計画」)の21万5000人に対して9414人の定数割れであった。ところが、北海道と九州では約7400人が不採用となっており、また本州旅客3社と貨物会社では9124人の定員割れであるにもかかわらず労働処分などの理由で約80人の組合活動家が不採用となっていた。これら〝欠員"を会社別でみてみると、東日本5197人、東海3259人、西日本457人、貨物211人となっており、北海道と九州の2社をはじめ6事業体は〝定員"通りであった。 この採用候補者名簿はもとより国鉄が作成したものであるが、国鉄当局はその作成にあたり「職員の希望を最大限考慮した」とのべ、①健康状態の判断は弾力的に解釈し、②在職中の勤務状況から新会社の業務にふさわしくない者は名簿に記載せず、③派遣経験者・直営売店経験者・復職前提休職者などは最大限名簿に記載し、〝欠員"については④業務の円滑な運営を行っていくための必要な要員は確保されている、などと説明した。
 国労はこの第3回設立委員会の決定に対して同日、要旨次のような「声明」を発表し、政府と設立委員会への抗議の意思を明らかにした。
  「第3回設立委員会の決定内容は、差別・選別が完全にふっしょ くされたものではない。名簿記載の判断にあたり『新会社にふ さわしくない者』を何ら客観的基準を明示しないまま除外して いることは、明確な差別・選別である。このような重大問題をはらんだ今回の選定は、第107臨時国会における付帯決議や 政府答弁に反するものであり、断固として抗議する。
  設立委員会の決定は、国会軽視、民主主義の形骸化と軌を1にしており、われわれは一人の首切りも許さず、国鉄労働者の雇用確保にむけてねばり強く闘うとともに、政府・設立委員会の責任を追及し、国民の意思を結集して立ち上がる。」
 国鉄当局はこの設立委員会の決定をうけ、2月16日から18日にかけて職場ごとに採用通知を行った。〝定員割れ?の本州と四国では不当な差別扱いをされた一部の人たち(その大半が国労組合員)を除き、ほとんどが通知書を受け取った。しかし、北海道と九州では、希望調書を白紙で出した人を含め約7400人が不採用を通知されたが、そのほとんどが国労組合員で、しかも先に人活センターに配属させられた活動家が多く、国鉄当局による「名簿」作成の段階でいちじるしい差別と選別が行われたことは明かであった。
 国労はこの実態を早急に把握するため16日から18日かけて全地本で緊急調査を行い、20日の集計によると、北海道不採用者4700人のうち国労組合員3200余人(68%)、九州では不採用者2400人のうち国労組合員1550人(57・4%)、定員割れの本州・四国でも約80人といわれる不採用者のうち国労組合員は64人(80%)であった。また、新聞報道によると、鉄労・動労などの鉄道労連組合員の不採用者は北海道22人・九州4人・本州3人、鉄産労の不採用者は北海道550人・九州490人・西日本1人となっていた。
 3月に入ると、国鉄当局は新会社移行にむけて人事異動(新会社採用職員の配属)の内示を開始し、3月10日に発令した。この配属についても、国労組合員を意図的に差別・選別していた。
ついで16日には、4月1日発足の新会社など11法人に採用された一般職員に、新会社などにおける仕事の内容や給与などを記した配属先通知書を手渡し始めた。用意された一般職員の通知書は20万1000余で、ひと月前の採用内定の時よりも1000人余りが辞退しており、北海道・九州から本州3旅客会社に広域採用された679人のうち247人が辞退していた。その結果、六旅客会社・貨物会社とも定員割れで発足することが明らかになった。
 ちなみに新会社に採用された職員のうち、3月30日現在で4938人が採用を辞退していた。そして、希望退職者は前年5月以来合計3万9092人に達し、新会社など11法人はすべて定員割れ(定員21万5000人に対し20万0648人)でスタートすることになった。また、清算事業団へ移る人は全体で約2万3700人(当初見込みは4万1000人)であった。

続く
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国鉄労働組合史 192

2011-06-07 10:00:00 | 国鉄労働組合史
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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○三 新会社の設立と国鉄清算事業団│
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 新会社への採用基準と採用人数の決定

国労は、12月11日の第1回設立委員会で検討された労働条件の基本的な考え方と決定された採用基準について、同日「見解」を発表し、
①とくに賃金低下など将来の生活に対する不安が加わることがないないこと、
②採用基準についても国会で論議された〝一人も路頭に迷わせない?〝選別・差別は行わない?が具体的に運用されること等を強く要望し、
③国労は全力をあげてこれら要望の実現をめざすことを表明した。

さらに同月15日には、杉浦国鉄総裁を通じて設立委員会に「新会社の採用基準と労働条件の決定にあたっての要請」を提出したが、その骨子は、
①業務上災害に起因する「身障者」に特段の配慮をされたい、
②振り分けでは勤務成績優先でなく職員の生活状況を優先されたい、
③労働処分に類するものを採用基準の対象としないようにされたい、
④労働条件決定にあたっては現在の国鉄事業と私鉄事業との差異を十分尊重されたい、
⑤諸手当の大幅な変更をしないようにされたい、
⑥定年制は60歳とし採用年齢を55歳未満に限定しないよう配慮されたい、
などを要請するものであった。

 配属先希望調査とその結果

 12月19日の第2回設立委員会では、労働時間・年次有給休暇・賃金・諸手当・定年・退職手当・退職などの新事業体の労働条件が具体的に決定された(その具体的内容については第6節1参照)。
また、翌20日には国鉄当局が、国労本部に①承継法人の職員となることに関する意思確認等の実施方、②日本国有鉄道清算事業団における勤務希望調査、③特別給付金の支給を受けて国鉄を退職することを希望する職員の第三次募集期間(最終)、④清算事業団に所属する職員の賃金等の取扱い、などについて資料を提示して説明し、22日以降は各地方においても説明が行われた。そして24日からは、設立委員会の決定にもとづく職員に対する「配属先希望調査表」(意思確認書)の配布が国鉄当局の手によって始まった(提出期限は翌87年1月7日)。この時点で調査対象者は24万人とみられた。
 国労本部は、この国鉄当局による配属先希望調査について22日付けの闘争指令第5号「国労組合員の選別・差別、一人の首切りも許さない闘いの展開について」を発し、各職場における①コピー等による全組合員の意思確認書の完全掌握など希望調査についての取り組み、②不当労働行為・人権侵害などへの点検体制確立、③調査期間中の世話役活動の徹底など第一志望を実現させるための取り組み、を指令した。
 明けて1987(昭和62)年1月28日、当局は配属先希望調査(意思確認)の集計結果を組合側に説明した。それによると、その概要は次のようになっていた。なお、国労は事業体別の「第一希望」の数を明らかにするよう求めたが、当局側は「名簿登載にかかわるので説明できない」とした。
 ① 前年12月1日現在の職員数は26万7600人、うち採用条件に合致する23万0400人に「意思確認書」を交付し、22万7600人分を回収した。
 ② 清算事業団を除く新会社への希望者は21万9340人となった。
 ③ 広域採用については現在、本人の希望を踏まえつつ名簿作成中だが、北海道、九州から数百人と想定される。
 ④ 希望退職応募者数は、2万人を大きく越えて1月18日現在で3万1476人となった。
 ⑤ 「人材活用センター」(約1440カ所に約2万1000人が所属)については3月上旬に解散する。
 国労はこの希望調査結果について同日、「就職希望者数が『基本計画』に基づく採用総数からみてトータルで当初計画を大幅に下回る結果となったが、その要因は希望退職者数が当初予定を大幅に上回ったことにあると考えられ、これは当局が国労敵視の労務政策をとり、いたずらに雇用不安をかきたてた結果にほかならない」との見解を明らかにした。また国鉄総裁は、2月2日の定例記者会見で「第一希望が採用枠を下回っているとみられる本州・四国の4旅客会社と貨物会社については全員採用」との見通しを示唆した。そして2月8日、国鉄当局は新しく発足する新事業体ごとの「採用候補者名簿」をまとめ、設立委員会に提出した。

続く
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国鉄労働組合史 191

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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○三 新会社の設立と国鉄清算事業団│
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 新会社への採用基準と採用人数の決定

 1986年12月11日に開かれた6旅客鉄道株式会社と貨物鉄道株式会社の第1回設立委員会では、設立委員会規則や設立日程、設立費用などの事務的な事項のほかに新会社に採用される職員の労働条件、採用基準などの検討が行われ、まず採用条件についてはこの第1回委員会で決定、労働条件については12月19日の第2回設立委員会で決定された。この間、政府は12月16日の閣議で国鉄からの事業等引継ぎや権利義務の承継等について「基本計画」を決定し(改革法第19条第1項に基づく)、承継法人の職員となるものの総数と会社ごとの人数を決めた。これらのうち、新会社などへの職員採用基準と採用人数は次のようになっていた。
 ?採用基準?
  ① 昭和61年度末において年齢満55歳未満であること。
   (医師を除く)
  ② 職務遂行に支障のない健康状態であること。
    なお、心身の故障により長期にわたって休養中の職員に   ついては、回復の見込みがあり、長期的に みて職務遂行に支障がないと判断される健康状態であること。
  ③ 日本国有鉄道在職中の勤務の状況からみて、当社の業務にふさわしい者であること。
    なお、勤務の状況については、職務に対する知識技能及び適正、日常の勤務に関する実績等を、日本国有鉄道における既存の資料に基づき、総合的かつ公平に判断すること。
  ④ 「退職前提の休職」(日本国有鉄道就業規則(昭和60年6月総裁達第12号)第62条(3)ア)を発令されていないこと。
  ⑤ 「退職を希望する職員である旨の認定」(日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和61年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律(昭和61年法律第76号)第4条第1項)を受けていないこと。
  ⑥ 日本国有鉄道において再就職の斡旋を受け、再就職先から昭和65年度当初までの間に採用を予定する旨の通知を受けていないこと。
  * なお、日本国有鉄道本社及び本社附属機関に所属する職員並びに全国的な運用を行っている職員からの採用のほか、当社が事業を運営する地域内の業務を担当する地方機関に所属する職員からの採用を優先的に考慮するものとする。
    また、広域異動の募集に応じてすでに転勤した職員及び北海道又は九州内の地方機関に所属する職員からの採用については、特段の配慮をするものとする。

?職員採用予定数?

   北海道旅客鉄道株式会社      1万3000人
   東日本旅客鉄道株式会社      8万9540人
   東海旅客鉄道株式会社       2万5200人
   西日本旅客鉄道株式会社      5万3400人
   四国旅客鉄道株式会社         4900人
   九州旅客鉄道株式会社       1万5000人
   日本貨物鉄道株式会社       1万2500人
   新幹線鉄道保有機関         60人
   鉄道通信株式会社            570人
   鉄道情報システム株式会社        280人
   財団法人鉄道総合技術研究所       550人
    総  数       21万5000人

続く
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国鉄労働組合史 190

2011-06-05 10:00:00 | 国鉄労働組合史
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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○三 新会社の設立と国鉄清算事業団│
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 新会社発足準備のための設立委員

 政府(運輸大臣)一二月四日、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(会社法)付則第二条にもとづき新会社設立発起人の職務を行わせるために共通設立委員と各会社ごとの設立委員を指名した。国労は翌一五日、新事業体移行にかかわる労働条件、採用基準、経営施策、交渉体制などについて、設立委員の一員である杉浦国鉄総裁を通して設立委員会に要請書を提出したが、政府の指名した設立委員の名前と肩書きは次の通りであった。

    新会社設立委員

 〈共 通〉

    斉藤栄四郎 (委員長・経済団体連合会会長)
    五島  昇 (日本商工会議所会頭)
    日向 方齊 (関西経済連合会会長)
    片桐 典徳 (日本民営鉄道協会会長)
    杉浦 喬也 (日本国有鉄道総裁)
    松澤 卓二 (国鉄監査委員会委員長)   
    亀井 正夫 (委員長代理・国鉄再建監理委員会委員長)
    住田 正二 (国鉄再建監理委員会委員)
    関英  夫 (雇用促進事業団理事長)
    瀬島 龍三 (元臨時行政改革推進審議会委員)
    工藤 敦夫 (内閣法制次長)
    吉野 良彦 (大蔵事務次官)
    永光 洋一 (運輸事務次官)
    加藤  孝 (労働事務次官)
    花岡 圭三 (自治事務次官)
    鈴木 俊一 (全国知事会会長)

 〈北海道旅客〉

    横路 孝弘 (北海道知事)
    四ツ柳高茂 (北海道経済連会長)

 〈東日本旅客〉

    山本壮一郎 (宮城県知事)
    竹内 藤男 (茨城県知事)
    玉川 敏雄 (東北経済連会長)

 〈東海旅客〉

    鈴木 礼治 (愛知県知事)
    田中 清一 (中部経済連会長)

 〈西日本旅客〉

    中西 陽一 (石川県知事)
    岸  昌  (大阪府知事)
    長野 士郎 (岡山県知事)
    原谷 敬吾 (北陸経済連会長)
    山根 寛作 (中国経済連会長)

 〈四国旅客〉

    中内  力 (高知県知事)
    山口 恒則 (四国経済連会長)

 〈九州旅客〉 

    鎌田 要人 (鹿児島県知事)
    永倉 三郎 (九州・山口経済連会長)

 〈貨  物〉
    長岡  毅 (全国通運連盟副会長)
    根津嘉一郎 (鉄道貨物協会会長)
 
続く
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国鉄労働組合史 189

2011-06-04 10:00:00 | 国鉄労働組合史
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(8)日本国有鉄道改革法等施行法(「施行法」「国鉄改革法施行法」)
   この法律は、以上の諸法(「希望退職法」を除く六法律)施行に伴う一三省庁一五一件に係わる法律の一括整備・改正などを行おうとするもので、全文一七〇条・附則四二条におよぶ膨大な法律である。新設会社などが事業を開始するための経過的な措置や国鉄の権利・義務の承継などについて規定するとともに、関係法規定の整備・改正を行う。
 ここでとくに注目された整備・改正についてみれば、つぎのような点であった。
 ① 鉄道国有法・鉄道敷設法・国有鉄道運賃法・鉄道公安職員の職務に関する法律・日本国有鉄道新  線建設補助特別措置法・日本国有鉄道経営再建促進特別措置法は廃止されたが、日本鉄道建設公団  法・全国新幹線鉄道整備法などは一部改正で廃止されない。
 ② 整備新幹線については、北海道・北陸を鉄建公団が、東北を東日本旅客会社が、九州を九州旅客  会社が建設し、営業は各旅客会社が行う。
 ③ 旅客鉄道会社が承継した特定地方交通線(赤字ローカル線)は二年間存続させ、その間、清算事  業団を通じて国が一定の補填をする。
 ④ 旅客鉄道会社が引き継いだ自動車運送事業の経営分離について六カ月以内に検討を行い、運輸大  臣に報告する。
 ⑤ 電電公社・専売公社の民営化および今回の国鉄分割・民営化によって、一九五二(昭和二七)年  公労法改正以来の三公社五現業体制が郵政・林野・印刷・造幣の国営四企業体制に改変されること  になり、公共企業体等労働関係法(公労法)はその法律名を国営企業労働関係法(国労法)と変え  た。もとより、これまで公労法適用労働者としてスト権など労働基本権が大幅に剥奪・制限されて  いた旧国鉄労働者には、民間労働者として私鉄労働者と同じ労働組合法などが適用されることにな  った。

(9)地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律「地方  税法関係法」)従来、国鉄については、地方税である事業税・道府県税・市長村民税等の非課税措  置が定められ、また固定資産税については原則として非課税措置が定められ、別に市町村納付金制  度が設けられていた。国鉄の解体・消滅によりこれらの税制も消滅することとなり、新たな経営主  体に対する特例措置・経過的措置・暫定措置などを定めた。

続く
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国鉄労働組合史 188

2011-06-03 23:31:29 | 国鉄労働組合史
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(6) 日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(「再就職促進法」)   国鉄の分割・民営化にともなって生じるいわゆる「余剰人員」
   について、すでに政府は「国鉄等職員再就職計画」の閣議   決定(1986年9月12日)にそって、各省庁など公的部門・一般民間企業・国鉄関連企業などで6万1000人分の再就職先を確保しようと計画し、同年11月18日現在で約6万8800人の採用申し出をうけていた。本法は、   さらに分割・民営化前に退職・再就職を希望する者および清算事業団職員となって再就職を必要とする者について、特別の措置を講じようとするものである。その骨子は、つぎのようなものであった。
 ① 国鉄退職希望職員について、国は再就職促進方針を策定しなければならないが、国・特殊法人等・地方公共団体などの採用努力義務、国による事業主団体への雇入れ促進協力要請、国鉄関連法人への優先的雇入れ要請、公共職業安定所による求人開拓・職業指導・職業紹介、などを一般的に規定する。
 ② 国鉄分割・民営化後に清算事業団職員となって再就職を必要とする者について、国による再就職促進基本計画の策定、清算事業団による実施計画の策定、国・特殊法人等・地方公共団体の採用努力、国による事業主団体への雇入れ促進協力要請、国鉄承継法人による優先的雇入れ、清算事業団による関連事業主に対する雇入れ要請、などを規定する。
 ③ 清算事業団は再就職促進の業務として、再就職に必要な教育訓練・求人開拓・職業指導・職業紹介・住宅斡旋などを行うが、国・雇用促進事業団・公共職業安定所などによる助言・指導・援助についても規定する。
 ④ この法律は、昭和65年4月1日までの時限立法である。
   なお、清算事業団職員となった者のうち、事業団本来業務従事職員・退職前提休職者・再就職先内定者などを除き、再就職先未定者(再就職必要者)は7630人(うち北海道4242人、九州2335人)であった。

(7) 鉄道事業法(「鉄道事業統合法」)
    これまでわが国の鉄道事業に関する法体系は、鉄道営業法(1900年制定)・地方鉄道法(1919年制定)・軌道法(1921年制定)・日本国有鉄道法(1948年制定)からなっていたが、国鉄を分割・民営化した場合、それら分割・民営化された鉄道事業を地方鉄道法によって規律す   るわけにはいかなくなった。そこで、古い地方鉄道法を廃止して、新たに鉄道事業に関する一元的な法制度を整備しようとしたのが、この鉄道事業法である。しかし、鉄道営業法と軌道法は基本的に温存されたままであった。鉄道事業法の骨子は、つぎのようになっていた。
 ① 鉄道事業を三種にわけ、第一種鉄道事業とは「他人の需要に応じ、鉄道による旅客又は貨物の運送を行う事業であって、第二種鉄道事業以外のもの」、第二種鉄道事業とは「他人の需要に応じ、自らが敷設する鉄道路線以外の鉄道線路を使用して鉄道による旅客又は貨物の運送を行う事業」(利用運送)、第三種鉄道事業とは「鉄道線路を第一種鉄道事業を経営する者に譲渡する目的をもって敷設する事業及び鉄道線路を敷設して当該鉄道路線を第二種鉄道事業を経営する者に専ら使用させる事業」(リース等事業)とした。
 ② 鉄道事業の経営は、路線及び鉄道事業の種別ごとの免許制にした。
 ③ 鉄道敷設の工事計画・施行・変更、鉄道線路を他事業者に使用させる場合の使用料、鉄道線路の譲渡対価、旅客・貨物の運賃・料金などは運輸大臣の認可制とし、運賃・料金の割引、列車運行計画、他の運送事業者との運輸協定などについては届出制とした。
    なお、国鉄時代の組合活動に刑事弾圧の口実を与えた鉄道営業法が残っていることに注目せざるをえないが、《鉄道の未来を拓く》(監理委員会最終答申)さなかにあって、この法律にはまだ「列車中座席ノ存在スル場合ニ限リ乗車スルコトヲ得」(第15条)とか、「旅客ヲ強ヒテ定員ヲ超エ車中乗込マシメタルトキハ30円(8000円)以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス」(第26条)などの時代錯誤の規定がそのままになっている。
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国鉄労働組合史 187

2011-06-02 10:00:00 | 国鉄労働組合史

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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○ 二 国鉄改革 分割・民営化関連法の内容. 骨子 │
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(5) 日本国有鉄道清算事業団法(「清算事業団法」)
    国鉄を分割・民営化した後、国鉄長期債務(長期借入金・鉄道債券)などの償還、国鉄の土地その他の資産の処分、臨時的な職員再就職の促進、などを目的とした清算法人を設立しようというものである。その骨子は、つぎのようになっていた。
 ① 事業団は、国鉄長期債務その他の債務の償還および当該債務に係わる利子を支払うが、それらの業務を行うに必要な資金に充てるため土地その他の資産の処分(土地譲渡・貸付け、宅造成・関連施設整備・宅地施設の管理および譲渡など)、事業団関連事業への投資などを行う。
 ② 事業団に資産処分審議会を設け、事業団理事長が重要な資産に係わる資産処分業務を行おうとするする場合に審議会の意見を聴かなければならない。
 ③ 土地処分については一般競争入札の方法に準じた方法による。
 ④ 政府は、事業団債務償還等に関する「償還基本方針」を定め、事業団は毎事業年度その債務償還計画を立て、また事業計画等について運輸大臣の認可を受ける。
 ⑤ 政府は、償還基本方針に従い、事業団に補助金等を交付し、その他の援助をする。
 ⑥ 事業団は、臨時に、その職員のうち再就職を必要とする者についての再就職の促進のために必要な業務を行う。
 ⑦ 国鉄は、昭和62年4月1日に国鉄清算事業団となる。
   なお、1988年1月26日の閣議で決定された「国鉄長期債務等の処理方針」によれば、国鉄長期債務は37兆2000億円で、そのうち11兆6000億円が東日本・東海・西日本の三旅客会社と貨物会社および新幹線保有機構に承継され、残りの25兆6000億円が清算事業団に引き継がれた。清算事業団分の処理方針は、国鉄用地売却7兆7000億円、株式等売却1兆2000億円、新幹線保有機構2兆9000億円、国民負担分13兆8000億円、というプランであった。
(6) 日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(「再就職促進法」)国鉄の分割・民営化にともなって生じるいわゆる「余剰人員」について、すでに政府は「国鉄等職員再就職計画」の閣議決定(1986年9月12日)にそって、各省庁など公的部門・一般民間企業・国鉄関連企業などで6万1000人分の再就職先を確保しようと計画し、同年11月18日現在で約6万8800人の採用申し出をうけていた。本法は、さらに分割・民営化前に退職・再就職を希望する者および清算事業団職員となって再就職を必要とする者について、特別の措置を講じようとするものである。その骨子は、つぎのようなものであった。
 ① 国鉄退職希望職員について、国は再就職促進方針を策定しなければならないが、国・特殊法人等・地方公共団体などの採用努力義務、国による事業主団体への雇入れ促進協力要請、国鉄関連法人への優先的雇入れ要請、公共職業安定所による求人開拓・職業指導・職業紹介、などを一般的に規定する。
 ② 国鉄分割・民営化後に清算事業団職員となって再就職を必要とする者について、国による再就職促進基本計画の策定、清算事業団による実施計画の策定、国・特殊法人等・地方公共団体の採用努力、国による事業主団体への雇入れ促進協力要請、国鉄承継法人による優先的雇入れ、清算事業団による関連事業主に対する雇入れ要請、などを規定する。
 ③ 清算事業団は再就職促進の業務として、再就職に必要な教育訓練・求人開拓・職業指導・職業紹介・住宅斡旋などを行うが、国・雇用促進事業団・公共職業安定所などによる助言・指導・援助についても規定する。
 ④ この法律は、昭和65年4月1日までの時限立法である。
  なお、清算事業団職員となった者のうち、事業団本来業務従事職員・退職前提休職者・再就職先内定者などを除き、再就職先未定者(再就職必要者)は7630人(うち北海道4242人、九州2335人)であった。

続く

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国鉄労働組合史 186

2011-06-01 10:00:00 | 国鉄労働組合史

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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○ 二 国鉄改革 分割・民営化関連法の内容. 骨子│
└───────────────────────┘
  
1986( 昭和61) 年12月4日に国鉄改革=分割・民営化関連人法が公布され、そのほとんどの規定が同日施行となった( 一部は翌87年4月1日施行) 。そこで、さきに成立していた「希望退職法」を含め国鉄の分割・民営化をすすめる国鉄改革関連九法の内容・骨子を概観しておこう。

(1)日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和61年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律(「希望退職法」「緊急特別措置法」「予算関連法」)
    国鉄再建監理委員会最終答申で明示された昭和61(1987)年4月1日の分割・民営化へむけ、緊急に措置すべき国鉄の長期債務軽減問題および「余剰人員」対策について具体的に規定した法律で、その主な内容の骨子はつぎのようなものであった。

 ① 国鉄が国の資金運用部から借りている債務(5兆0599億円)を一般会計が引き継ぎ、無利子で貸し付けた形(棚上げ)にする。
 ② 昭和62年4月の分割・民営化までに募集する希望退職者(2万人)に対する優遇措置として、通常の退職金のほかに基準内賃金(基本給に家族手当などを加えたもの)の10カ月分を上乗せする。この優遇措置は、昭和61年度末で55歳未満者が対象で、退職前提休職者、退職後国・自治体・特殊法人に再就職する者などは除く。
 なお、この法律にもとづく2次にわたる希望退職者募集では、1972(昭和62)年1月18日現在で応募者数が3万1476人となった。

(2)日本国有鉄道改革法(「国鉄改革法」)
    国鉄再建監理委員会最終答申を忠実に条文化し、「日本国有鉄道の経営形態の抜本的な改革に関する基本的な事項」(第1条)について定めた法律で、その主な内容の骨子はつぎのようなものであった。
 ① 国鉄の経営する旅客鉄道事業を北海道、東北・関東、東海、北陸・近畿・中国、四国、九州の六つの地方に分割し、それぞれの地域に旅客鉄道株式会社を設立して国鉄の旅客鉄道事業を引き継がせる。連絡船事業・旅客自動車運送事業は、それら事業の関係地域に応じて各旅客会社に引き継がせる。
 ② 新幹線にかかわる旅客鉄道事業は、新幹線鉄道保有機構を設立して当該施設の一括保有と施設貸付けの業務を行わせる。
 ③ 貨物鉄道事業は、日本貨物鉄道株式会社を設立してその事業を引き継がせる。
 ④ 電気通信・試験研究などの業務は、旅客会社・貨物会社以外の法人に引き継がせる。
 ⑤ 北海道・四国・九州の三旅客会社については経営安定化のため特別の基金を設ける。
 ⑥ 国鉄の事業等を承継する法人(承継法人)に国鉄長期債務等を承継・負担させる。しかし、北海道・四国・九州の各会社および試験研究の事業を引き継ぐ法人には国鉄長期債務を継承させない。
 ⑦ 日本鉄道建設公団の鉄道施設資産および同公団と本州四国連絡橋公団の鉄道施設建設費用のうち適当なものは国鉄および国鉄清算事業団に承継させる。承継する財産の価格は運輸省に置く評価審査会が決定する。
 ⑧ 国鉄が承継法人に事業等を引き継いだときは国鉄を日本国有鉄道清算事業団に移行させ、承継法人に承継されない資産・債務等の処理業務、職員の再就職業務を行わせる。
 ⑨ 以上のほか、国鉄事業の承継につき運輸大臣が「基本計画」を、国鉄が「実施計画」を作成することや、権利義務・資産・債務などの継承について詳細な規定が置かれ(第19条以下)、附則でこの法律は公布の日から施行されること、昭和62年4月1日に日本国有鉄道法および同施行法を廃止することを定めた。
 これらのうち、多くの問題を生じさせた承継法人の職員については、第23条で骨子つぎのように規定されていた。
 イ 承継法人の設立委員は、国鉄を通じ、その職員に対し、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員に採用基準を提示して、職員の募集を行う。
 ロ 国鉄は、国鉄職員の意思を確認し、承継法人別に、その職員となる意思を表示した者の中から前項の採用基準に従い、その職員となるべき者を選定し、その名簿を作成して設立委員に提出する。
 ハ 名簿に記載された国鉄職員のうち、設立委員から採用する旨の通知を受けた者であって日本国有鉄道法廃止時に現に国鉄職員である者は、承継法人の成立の時において、当該承継法人の職員として採用される。(採用されなければそのまま清算事業団に移行し、清算事業団職員となる)
 ニ 承継法人の職員の採用について、当該承継法人の設立委員がした行為及び当該承継法人の設立委員に対してなされた行為は、それぞれ、当該承継法人がした行為及び当該承継法人に対してなされた行為とする。
(3)旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(「会社法」)
  国鉄の事業を承継する六つの旅客会社と貨物会社はそれぞれ株式会社となるが、この法律でその手続きや運輸大臣の認可・業務監督・立入検査、罰則などを定めた。その骨子は、つぎのようになっていた。
 ① 新会社設立にあたっては、運輸大臣が会社ごとに命じる設立委員が発起人の職務を行い、発行する株式の総数は国鉄が引き受ける。会社は昭和62年4月1日に成立する。
 ② 北海道・四国・九州の旅客会社は一定の金額を「経営安定基金」として管理し、その運用により生ずる収益をその事業の運営に必要な経費に充てる。
 (4)新幹線鉄道保有機構法(保有機構法」)
    国鉄の分割・民営化にあたって関係旅客会社の経営基盤均衡化および利用者の負担適正化をはかるため、新幹線鉄道に係わる鉄道施設を一括保有し、旅客鉄道会社に貸し付けることを目的とした特殊法人を設立した。保有機構について定めた骨子はつぎのようになっていた。
 ① 保有機構は東北・上越・東海・山陽の四新幹線の鉄道施設を一括して保有し、東日本・東海・西日本の三旅客会社に有償で貸し付け、三旅客会社はこれを借り受ける。
 ② 鉄道施設の維持管理は借り受けた旅客会社が行うが、 貸し付けた鉄道施設に係わる大規模な災害復旧工事は保有機構が行う。
 ③ 貸付料年額(2年ごと見直し)および貸付期間(全新幹線鉄道施設の残存耐用年数の平均を考慮して算定)は運輸大臣の認可が必要であるが、貸付期間が終了したときはそれぞれの旅客会社に譲渡される。

続く

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国鉄労働組合史 185

2011-05-31 12:58:49 | 国鉄労働組合史

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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○ 一 日本のバブル経済と東欧諸国の動揺 │
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  東欧社会主義諸国の動揺

 
 1987年から88年にかけて米ソ首脳がそれぞれ相手国を訪れ、中距離核戦力( INF ) 全廃条約に調印し、批准書を交換した。
この米ソ和解の波は、ヨーロッパにもおよんだ。89年3月から、中距離ミサイルの撤去につづいて通常戦力削減交渉がはじまり、ゴルバチョフは500発の戦術核兵器の一方的撤去を発表し12年間で兵力50万人削減することを決め、ワルシャワ条約機構首脳会談にのぞんでは、東欧諸国を締めつけていたブレジネフ・ドクトリンを否定する方向を明確にした。
 この年( 89年) 、ハンガリーで複数政党制と街頭デモが自由化され( 1月) 、ポーランドでは政府. 連帯間で大統領制の導入、議会二院制などが合意がされ( 12月) 、連帯主導のマゾヴェツキ連立内閣が成立した( 9月)・チェコスロバキヤでも民主化要求のデモが行われ、連邦議会が共産党一党独裁廃止などの憲法改正を可決した( 11月) 。ハンガリー政府が東ドイツ市民の西側への出国を承認した9月、1万人以上の市民が西ドイッヘ出国し、東独第2の都市ライプチヒなどで自由選挙、自由旅行を要求するデモが毎週月曜日に行われ、他の都市でも数十万規模の民主化要求デモが繰り返されるようになった。10月、東独ホーネッカー書記長が解任され、11月8日、クレンツ新書記長が自由選挙などの制度改革を提案、翌9日には西側への旅行と出入りを自由化した。
このとき「ベルリンの壁」は崩壊し、10日から壁そのものの撤去がはじまった。ルーニアでは軍隊が市民側につき、市街戦のすえチャウシェスク政権が崩壊した( 12月) 。
 同年5月に中国を訪れ郵小平と会談して中ソ和解をなしとげていたゴルバチョフは12月、地中海のマルタ島沖でブッシュ・アメリカ大統領( 89年1月就任) と会談し、両首脳は米ソが「冷戦」に別れを告げ・「長い平和の時代」に入ったことを確認し合った。

続く

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国鉄労働組合史 184

2011-05-30 10:00:00 | 国鉄労働組合史

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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○ 一 日本のバブル経済と東欧諸国の動揺 │
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   「バブル経済」下の日本

 1980年代後半の日本経済は、膨大な貿易黒字の蓄積と急激な円高進行によって世界の「経済大国」へのし上がる過程であった。
プラザ合意後の日本の「円高不況」は86年11月に底をつくが、政府は公定歩合の史上最低( 87年2月、2. 5%) への引き下げとともに、新年度予算執行にあたって公共事業の追加、減税などによる内需拡大、輸入増加を目的とした10億ドル政府調達など、総額6兆円強の緊急経済対策を決め、景気浮揚のテコ入れを行った。87年7月には経済企画庁の?景気回復宣言?も出されたが、やがて〃バブル景気〃と呼ばれる空前の好況期になった。永久に「右肩上がり」の成長がつづくと声高に語られ、88年から89年にかけて、日本の土地・株・高級絵画などの資産価格が文字どおり連日上昇した。
 このころ、日本は「経済大国」といわれるようになった。1987年、日本人一人あたりの国民総生産(GNP) は、アメリカ、西ドイツ、フランス、イギリスなどを上回り、80年に9000ドルであったものが85年に1万1000ドルヘ、そして88年に2万3000ドルヘと3年間で倍増した。また、日本企業の海外進出も急速にすすみ、この間の海外直接投資の残高はアメリカ、イギリスについで世界第3位に浮上し( 90年末) 、年間の海外直接投資額だけをとると世界第一位となった。日本の銀行の対外貸付額も急膨張し、国際資産残高も90年末で1=兆1000億ドル、日本一国で資本主義国における銀行の国際資産総額の37・4% を占めた( ちなみにアメリカは12・6% 、ドイツは10・6%) 。
 1980年代の後半をへて90年代に入る頃の日本は、こうした数字をみればまぎれもなく「経済大国」であった。しかし、まさにそのさなかに、日本の「豊かさ」を問う本が相次いで出版された。それらはいずれも、「経済大国」となった日本はほんとうに「費かな国」「費かな社会」なのかと問い、「豊かさ」を実感できない生活の中身を爼上にあげた。そして、狭い住宅と地価・住宅費の高騰、長距離通勤と長時間労働、過労死を牛な労働環境、家庭生活を無視した単身赴任、ゆとりのない子供の学校教育、社会保障・社会福祉の貧しさと老後の不安、自然環境の悪化、等々、さまざまな局面でのその「貧しさにが指摘された。
 一方、この時期、わが国の労働組合組織率は減少しつづけており、83( 昭和58) 年に30% を割った後、総評や同盟が解散して連合( 日本労働組合総連合金) が結成された89年には25・2%になった。80年代後半は、バブル経済下とはいえ消費者物価は比較的安定しており、〃スト無し春闘〃と評されたように争議行為参加人員は70年代後半に激減した後はほとんど増加せず、毎年取り組まれる春闘では〃再構築〃?活性化〃が強調された。また、「経済大国」日本で働こうという外国人労働者が急速に増えはじめたのもこの時期であった。

続く

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国鉄労働組合史 183

2011-05-29 15:00:00 | 国鉄労働組合史

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第四章 JR体制への移行と国労の闘い

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第一節 国鉄分割・民営化関連法の成立と新会社への移行準備
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├○ 一 日本のバブル経済と東欧諸国の動揺 │
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   自民党内閣の変転と行革路線の継続

 1986( 昭和61) 年7月の衆参同日選挙で自民党が両院で大勝したのをうけて、中曽根内閣は行政改革の二〇三高地といわれた国鉄「分割・民営化」へむけた国鉄改革法を成立させ、87年4月1日、6旅客. 1貨物鉄道株式会社を中心としたJR体制が発足した。しかし、この行政改革の流れのなかで「売上税」の導入を図った中曽根内閣への国民の反発は強く、87年3月の参議院岩手補欠選挙で売上税反対を訴えた社会党候補が勝ち( 岩手ショック) 、この年の統一地方選挙でも自民党が大敗したこともあって売上税関連法案は廃案となった( 4月) 。5月になると4年半にもおよんだ中曽根内閣の後継者レースがはじまり、最大派閥を誇った田中派の分裂をへて10月、自民党総裁選挙に立候補した安部・竹下・宮沢の3人のなかから中曽根首相が竹下幹事長を自民党総裁に指名し、11月6日、竹下登内閣が発足した。

 竹下内閣は・〃ふるさと創年をかかげて地方活性化策をすすめる一方、中曽根内閣から引き継いだ税製革にも取り組み、88年7月19日に召集された臨時国会は再延長されながら1612日間にもわたり、社共両党の牛歩戦術などによる抵抗もあったが、同年12月24日、消費税導入法が成立した( 翌89年4月1日から消費税実施) 。しかし、この消費税法案審議と並行して未公開株譲渡によるリクルート疑惑が表面化し、疑惑は竹下首相や宮沢副総理兼蔵相をはじめ中曽根前首相、安倍自民党幹事長、さらには塚本民社党委員長、上田( 卓三) 社会党代議士、前文部・労働両事務次官など、政界・官界の広範囲におよび、竹下首相は翌89年4月25日、平成元年度予算案の成立を待って辞任することを表明した。
 自民党総裁( 次期首相) の後継者選びは、これまでになく難航した。というのも、竹下首相と自民党総裁を争った安倍幹事長も宮沢蔵相も、リクルートの黒い金に汚染されており、?そして誰もいなくなった?なかで宇外相が浮上した。しかし、6月2日に発足した宇野宗佑内閣は、すぐさまみずからの女性スキャンダルを暴露され、選挙で街頭演説にも立てなかった。7月212日投票の参議院選挙は土井委員長のもとで婦人候補が健闘した社会党が大躍進し( 改選議席倍増) 、参議院の与野党逆献という事態をうけて、宇野内閣は2ヵ月余りで退陣を余儀なくされた。

 89( 平成元) 年8月9日に発足した海部俊樹内閣は、2人の女性大臣を起用して新鮮なイメージをアピールし、また消費税の見直しや政治改革問題に取り組む姿勢を前面に押し出した。与野党が逆転していた参議院では土井社会党委員長が首相に指名され、また消費税廃止法案が採択されるという政情であった。翌1990年2月18日の総選挙は、前年来の東欧諸国の動揺とベルリンの壁崩壊という国際情勢を背景に、自民党は「社会主義か自由主義かしという体制選択を訴え、前回総選挙より議席数を減らしたもののなお安定過半数を確保した。この選挙でも社会党は、議席数を大幅にのばして野党では?一人勝ち?した。中曽根首相から自民党政権を継いだ竹下首相、そしてその次の宇野首相の後を継いだ海部内閣誕生、その間わずか1年10ヵ月、その海部首相も2年余りで宮沢首相にバトンタッチすることになる。しかし、この宮沢内閣も1年10ヵ月で終わり、1955年以来つづいた自民党首班内閣の時代は終わりを告げ、1990年代はさらに頻繁な非自民党内閣の変転がつづくことになる。
 一方、急激な円高. ドル安とともに地価の高騰がすすみ、日本経済がバブル化の様相を示しはじめた1987( 昭和63) 年4月21日、すでに臨調=行革路線の破綻が明らかとなっているなかで新行革審( 会長・大槻文平日経連会長) が発足した。新行革審は、まず87年10月に地価抑制に向けて「当面の地価等土地対策に関する答申」を行い、翌88年12月には公的規制緩和についての答申、89年11月の「公的規制のあり方に関する小委員会」報告書( 内外価格差の縮小など) 、同月25日の「国と地方の関係等に関する小委員会」改善策( 地方への権限委譲など142項目)を経て、1990( 平成2) 年4月18日の最終答申を提出して解散した。この新行革審の最終答申では、土地対策、地方分権、規制緩和、省庁再編、行政運営の透明性・公正の確保など未達成課題への取り組みを強調していた。そして、この年10月21日、第三次行革審( 会長・鈴木永2日経連会長) が発足した。

続く

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国鉄労働組合史 182

2011-05-29 09:00:00 | 国鉄労働組合史

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第一〇節 「緊急方針」を否決した修善寺大会
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├○ 二 国労第50回臨時全国大会(修善寺) │
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  二つの全国大会アピール


 国鉄労働者と国鉄関連労働者へ向けた「国労の団結と統一を守り、闘いぬく臨時全国大会アピール」の概要は次のとおりである。
  「私たち国鉄労働組合は、10万9日、10日の2日間、火の でるような激し い激論の木、政府・自民党、国鉄当局からの『労使共同宣言』締結攻撃を排し、国労の座史的伝統と『国労綱領』にもとづいて、国鉄の分割・民営化に反対し、闘いぬくことを決定しました。国鉄の分割. 民営化攻撃は『戦後政治の総決策』 の、二〇三高地』と位置づけられ、資本と闘う労働組合運動を抹殺しようとする歴史的謀略とも言うべきものです。『労使共同宣言』では雇用も組織も、そして労働者と労働組合の基本的権利すら守りえないことは、今日までの労働者階級の闘いの経験が証明しています。
  いま私たち国鉄に働く仲間のうえに、9万3000人首切りの嵐が吹き荒れています。『労使共同宣言』では絶対に雇用は守れません。この道は労働組合が当局と一体となって職場を圧. 殺し、首切りに道を開くものです。
  私たちは闘いのなかで権利は守られ、9万3000人の雇用が確保できると確信します。国鉄の分割. 民営化反対、国民の財産を守れという声は全国にこだまし、共闘はひろがり、運動は前進しています。国鉄に働く仲間が毅然として分割. 民営化反対の旗をかかげ、手をとりあって立ち上がるならば、分割・民営化を阻止できる展望を切り開くことができます。
  国鉄の分割. 民営化を阻止し、歴史と伝統に輝く国鉄労働組合を守り、私たちの雇用と組織を守りぬこうではありませんか。
  熱い血潮のかよう統一と団結を、瞳のように大切にし、総力をあげて闘いぬきましょう。」
「国民のみなさんに訴えるアピール」の概略は以下のとおり。
  「国民のみなさん! 私たち国鉄労働組合は10月9、10日の2日問、激論の末、国鉄の分割・民営化に反対し、闘い抜くことを決定しました。
  現在、国会に上程されている国鉄改革法案は稀代の悪法です。
 国民にとっても、国鉄および関連企業に働く労働者にとっても『百害あって一利ない』反国民的な悪法であることを改めて確認
したからです。
  第1に、国鉄の分割・民営化は国民の共有財産である国鉄の資産を一部の財界、政府・自民党の権力者に、ただ同然でたたき売ろうとするものです。
  第2に、国鉄の分割・民営化は国鉄の赤字を拡大せずにはおきません。今後、毎年約2兆2000億円もの赤字が新たにつくり出されます。
  第3に、国鉄の分割・民営化は大増税を招来します。16兆7000億円が国民負担とされているからです。
  第4に、国鉄の分割・民営化はローカル線を切り捨てます。
  第5に、国鉄の分割・民営化は利用者の安全とサービスをそこないます。
  第6に、国鉄の分割・民営化は運賃値上げをもたらします。
  第7に、国鉄の分割・民営化は駅前商店街に致命的な打撃をあたえます。
  第8に、国鉄の分割・民常化は私たちN 鉄に働く労働者10万人の職を奪います。国鉄関連企業に働く仲間も同様です。私たちの職場には、すでに基本的人権がひとかけらもありません。
  このような国鉄の分割・民営化を私たちは断じて容認できません。国鉄解体を許さないため、総力をあげて闘いに立ち上がります。

 国民のみなさん!

  私たちの運動に対する一層のご理解ご支援をお願いします。
 そして、みなさんと一緒にさらに運動を強めていくことを呼びかけるものです」
 修善寺大会( 第50回臨時全国大会) は、以上のように分割・民営化反対の方針を堅持することを決定し、国鉄当局に屈服せず、労働組合として闘いつづけることを高らかに宣言した。国労本部は10月16日、中央闘争委員会を開き、当面する闘いについて、闘争指令第1号を発した。その《闘いの基本》は次のとおりであっ
た。
  ①政府案の国鉄分割・民営に反対し、集中した大衆行動を展開する。
  ②社会党( 案) の実現をめざし、総評を始め社会党などとの連携を強める。
  ③様々な共闘組織との連携を強め、さらに運動を発展させる。
  ④人権侵害、不当労働行為、安全問題などの点検・摘発行動を積極的に展開し、第三者機関の活用を図り、社会的に糾弾していく。
  ⑤雇用に関する基本要求をもとに、さらに要求を具体化するとともに団体交渉、国会、政労交渉の場などを通して解決を図る。
  ここには千葉大会で決めた国労の闘いの課題と進め方が記されている。国労は改めて大きな闘いに踏み出した。

続く
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国鉄労働組合史 181

2011-05-27 10:00:00 | 国鉄労働組合史

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第一〇節 「緊急方針」を否決した修善寺大会
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├○ 二 国労第50回臨時全国大会(修善寺) │
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  分割・民営化反対方針の堅持を選択

 国労第50回臨時全国大会(修善寺)は10月9日、ほぼ予定時刻に開会したが、実際の議事は大幅に遅れて始まった。大会代議員定数306人中274人の出席が確認され、大会は成立していた。酒井副委員長の開会挨拶が行われたあと。議長団が選出された。
 ところが、大会はその後、長い休憩に入った。大会が再開されたのは、午後1時を過ぎてからであった。
山崎委員長は冒頭挨拶で、まず当面の緊急対処方針をなぜ選択したのかについて、七つの背景を述べたうえで、「雇用安定協約や組合差別の撤廃、人活センターの根本的改善、等距離労使関係の確立、組織の相互尊重など、さまざまな問題についての労使間の交渉、協議を我々が要求いたしますと、当局側は、労使共同宣言の調印をはじめ幾つかの条件を出します」「共同宣言の持つ意味は十分理解していますし、今までこれを批判してきた」「しかし、現実に組合員の雇用不安は拡大し、組合員の動揺は深刻であり、とりわけ人活センターにおける不当差別や専制支配による動揺に対し、多くの組合員からものすごい反発が起こっていることも、私は十分承知しています。この不安、不満をどう解消するか、これには労使関係を正常化し、ノーマルな交渉体制を確立するためには、この方針しかないと考えるのであります。この大胆な妥協は、必要な妥協であり、自信と確信に裏づけられた勇気を必要とするものであります」と述べ、①組合差別をさせない、②組織に手をかけさせない?人活センターにおける差別的、非人間的な扱いを解消させる、③雇用不安の解消をはかる、ことに全力を挙げて取り組む決意を明らかにした。最後に「提起した方針は苦しい選択です。
しかし、この方針以外に雇用を守り、組織を回復する手段はありません」と緊急方針への支持を訴えた。
 書記長による「緊急方針」の提案後、討論に入った。討論では、「緊急方針」反対の発言が多かった。その趣旨は、「大胆な妥協というが、妥協ではなく、全面武装解除の屈服であり、職場組合員の血のにじむ努力を裏切る道」「国労を支えてきた組合員・家族、そしてともに闘ってきた地域の仲間たちに対する裏切り行為だ」「当局の手によって首を切られた仲間が裁判闘争を闘っているのを見殺しするのと同じだ」「提訴の取り下げは、不当労働行為はもっとひどくなる。見て見ぬふりは国労として許されない」「組合みずからが差別・選別をすることになる」「労働者階級と全体の利益を守る見地や、労働運動の階級的前進の見地から判断すべきで、雇用と組織の次元だけで判断すべきでない」「闘って当局の不当労働行為をやめさせる以外に組織防衛はない」などであった。
 これに対し、「緊急方針」を支持する意見は、「雇用と組織を守るためには緊急方針でいく以外にない」「依拠する場所は社会党、総評の政治力しかない」「やむを得ない緊急避難の方針だ」「勝利の展望は閉ざされており、政労交渉で一日も早く労使協議のルールを確立することだ」「共同宣言を結べば脱退がとまるかどうかは未知数だが、少なくともわが分会ではとまる」などが発言された。
 大会2日目は9時開会の予定だったが、「緊急方針」支持派の代議員が9時過ぎても出席せず、大会成立要件(204人)を満たしていなかったため午前中休憩となった。流会の恐れもあったが、12時過ぎてから執行部の説得により代議員が会場に入り、256人の出席が確認されて再開された。この日は8人の発言が終わったあと、書記長の総括答弁が行われ、答弁の最後に「議長団にその扱いをお任せする」と結んだ。これを受けて議長団は採決で大会の意思決定を行うこととした。
 採決方法は、58人からの動議により挙手によらず、35年ぶりに無記名投票が実施された。採決の結果は、「投票総数298人、有効投票数298人。賛成101票、反対183票、保留14票、以上の結果をもちまして、原案については否決を決定」と報告された。
 執行部はただちに中央執行委員開催し、=六本木敏(盛岡)、副委員長=嶋田俊男(北陸)、同=佐藤智治(東京)、書記長=稲田芳朗(門司)の各氏が選ばれた。
 六本木委員長は就任挨拶で、「今日、国労に求められているものは『分割・民営』反対の立場を堅持し、労働者と労働組合の基本的権利と輸送の安全を守るために、広範な勤労国民と連帯して闘い抜くことであると信じる」と決意を表明した。最後に大会は、「国労の団結と統一を守り、闘いぬく臨時全国大会アピール」と「国民の皆さんに訴えるアピール」の二つのアピールを採択し閉会した。

続く
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国鉄労働組合史 180

2011-05-25 10:00:00 | 国鉄労働組合史

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第一〇節 「緊急方針」を否決した修善寺大会
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├○ 二 国労第50回臨時全国大会(修善寺) │
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 中闘における大会方針案の決定とその内容

9月30日、あらためて中央闘争委員会を開き、臨時全国大会に提案する「当面する情勢に対する緊急方針」を論議し、激論のすえ反対者のみの挙手採決で決定した。反対は13票であった。
臨時全国大会は10月9、10日の2日間伊豆の修善寺で開くことになった。方針案はつぎのような内容である。
 「1、われわれをとりまく情勢の特徴
 ① 第49回定期全国大会は衆参同日選挙における自民党の圧勝、歴史的ともいえる社会党の敗北、人材活用センターに象徴され る激しい当局の攻勢、組合員と家族のなかにひろがる雇用不安の状況のもとで激論の結果、政府の国鉄改革法案に反対し、社会党案を支持し真の再建をめざして闘うこと、ローカル線を守る運動や地域の利用者や住民の要求をもとに安全性・利便性を高める運動を総評・地県評を機軸とする共闘を継続・発展させること、そして当面する情勢のなかで雇用と組織を守る闘いを最重視して闘うこと。その立場から情勢に機敏に対応する判断を中央闘争委員会に一任することを決定した。
 ② われわれの大会以降の情勢は自民党内部の総裁指名をめぐる動き、社会党体制の一新などの情況をへて9月11日に臨時国会開会、9月25日国鉄改革8法案の再提出に伴う趣旨説明、 同法案審議のための特別委員会設置が決定され、同法案の審議と並行して、国鉄当局を中心とする改革準備態勢は強化され激しい流れとなっている。
 ③ こうした激しい流れのなかで、われわれは地方機関の整備をはかりつつ、当面する組織戦を勝ち抜くため全力をあげた。日夜を分かたぬ組織オルグの展開や地・県評、単産、地区労など地域の仲間との交流、激励オルグ、社会党議員団を中心とする職場実態調査、不当労働行為や人権侵害などの摘発、訴訟などの取り組み、また全国各地での大衆行動がそれである。この取り組みの過程では総評をはじめ地・県評など多くの地域の労働組合から国労自身が雇用と組織についての明確な方針を示すよう求められた。
 ④ 各級機関の必死の努力のなかでも組織の動揺をとめうるに至らず、組織のなかで現状は過半数維持をギリギリの防衛ラインとして設定する情況となっている。同時にこの組織情況は国労内外に深刻な影響を及ぼし、地方本部ごと対応に不統一をつくり出している。一方、動労など改革労組協議会は第2次共同宣言を締結し、改革以降における労使関係の主導権を握る戦略を明記していることを重視しなければならない。
 ⑤ 以上の情勢の特徴から臨時国会における政治情況、国労組織の現状を直視し、国鉄改革法案の成立が避けられない事態となっている現実のなかで差別・選別を排し、すべての国鉄労働者の雇用を確保し、組織の展望を作り出すために以下の緊急対処方針を確立する。

 2、緊急対処方針の基本的考え方

 ① 政府の「改革」法案に対し、社会党案を支持する立場から真の再建をめざす。
 ② 労働組合所属別の差別・選別を排除し雇用の確保をはかる。
 ③ 当面する組織戦を勝ち抜き多数組合としての国労を守り抜く。
 ④ 労使関係の正常化をはかる。
 ⑤ 雇用安定協約を締結する。

 3、具体的な取り組みについて

 ①(略)
 ②選別を排除し雇用を確保するために次の取り組みを行う。
a (略)。
b(略)。
c、雇用安定協約の締結をはかる。

  イ、 必要な効率化は推進する。
  ロ、余剰人員問題の解決は当面する最大の課題であるとの認識から以下の取り組みを行う。

◇協定にもとづく希望退職の継続実施。
◇広域異動については取り組む。その際強制・強要を排し、本人の希望意思を尊重させる。
◇人活センターについては、同センターが清算事業団に直結するものではないとの調停段階の経過 をふまえ、調停案受諾の立場から労使協議をすすめ、諸問題の解決をはかる。

  ハ、不当労働行為についての公労委申請を取り下げるとともに、仮処分申請を取り下げることとし、 仮処分申請など訴訟を中止する。
  ニ、点検・摘発行動を中止する。
  ホ、以上の取り組みを行い労使正常化について、当局との具体的協議を開始する。その際、労使共 同宣言の締結意思を明らかにする」。

続く

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国鉄労働組合史 179

2011-05-24 10:00:00 | 国鉄労働組合史

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第一〇節 「緊急方針」を否決した修善寺大会
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├○ 一 中闘による臨時大会開催の決定 │
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 雇用と組織を守ることを最重点課題とした第49回大会方針をうけて、中央闘争委員会は新執行体制を確立し、組織強化対策本部、雇用対策本部、国会対策室を新設した。
 本部は8月6日、闘争指令第1号を出し、政府の国鉄改革法案第23条(選別採用、解雇条文)の撤回を求める団体署名を獲得する取り組みを始めた。この行動は、10月15日の最終集約において2万9842団体が署名に応じていたと、成果の報告がなされた。
 つづいて、8月27日に雇用要求を国労闘申11号として当局に申し入れ、団体交渉を行った。要求の骨子は、
①職員の進路決定にあたっての選別・差別の排除、
②完全な雇用保障、
③一定期間内の緩やかな人員調整の措置を取ること、を基本とし、具体的な雇用対策についての協議をただちに深めること、

を求めたものであり、最後に「前項にもとづく具体的な対策が労使一致して進められるならば、国労は当局の主張に真摯に耳を傾け柔軟に対処する意思をもっている」とつけ加えた。
 交渉では、国労は要求の趣旨を説明し、「国鉄を愛し働きつづけてきた職員の心情をふまえ、どんな方法が妥当かも含めて協議していきたい」との態度を明らかにした。これに対して当局は、
①人活センターへの強制配置、人権無視の〝国労いじめ?という認識は誤りだ。いま国労が行っている調査はすぐやめてもらいたい、
②「雇用問題は労使共同の責任」というが、共同宣言を結ぶということか、
③要求の①項は改革法23条を認めての要求か、
④「完全な雇用保障」の要求は、共同宣言締結が条件となる、

と答えた。
 このように最重点課題の雇用への取り組みを強化し、同時に柔軟な対応の用意のあることを示したが、「労使共同宣言」の締結を条件とされ、要求を前進させることができなかった。9月11日に開会した臨時国会は、25日に国鉄改革8法案再提出の趣旨説明が行われ、同法案の集中審議のための特別委員会の設置が可決された。法案の本格的審議がはじまり、法案可決の見通しも強くなってきた。
 国労本部は、こうした情勢のなかで組合員のあいだに広がってきた雇用不安を解消し、国労組織を守るため、9月24日に中央闘争委員会を開いて「労使共同宣言」の締結と雇用安定協定を結ぶ方針を決めようとした。だが、本部の動きに反対する組合員多数が国労会館に集まり、数十人が会議室へなだれこみ、中央闘争委員会が開けなくなる事態となった。このため、急遽三役会議を開き、協議の結果、「早急に臨時全国大会を開いて対処方針を決める」との提案で組合員を説得し、25日未明にようやく事態を収拾した。
 当時の国労主流派が24日に中央闘争委員会を開き、「大胆な妥協の方針」を決めようとしたのには、次のいきさつがあった。24日に社会党、総評と運輸大臣との会談がもたれ、そこでの合意をもとに総評と国鉄総裁との会談が行われていたのであった。
 運輸大臣との協議内容は、修善寺大会での書記長の方針提案で明らかにされたが、次のとおりであった。
 「1 余剰人員対策について、3年間で完全就職の保障とその計画を行う問題。2、国鉄労働組合が必要な措置をとった場合ーこれは後で提案をします運動方針の修正、あるいは提訴案件の取り下げ方針の決定などでありますが、これらの必要な措置をとった場合、国鉄当局は共同宣言、雇用安定協約を締結する意志表明を行うとともに、労使関係正常化に努力する旨の談話などを出す。3、右項の措置について協議を続ける」。
  「そして、これを受けまして、総評はその後、同日、国鉄総裁との会談を行い、次の当局提案を受けました。その内容は、1、国鉄労働組合は、下記の方針を決定する。①大会の運動方針の修正。②紛争状態の解消。具体的内容の一つは、提訴案件の取り下げ、本部及び全地本。二つ、点検・摘発、中傷誹謗の中止、本部及び全地本。2、国労が上記の方針を実施した場合には、当局は労使共同宣言及び雇用安定協約を締結する意思があるか否かを尋ねた場合、上記二条件が本部・全地本において完了した場合には、労使共同宣言、雇用安定協約を結ぶ意思のあることを表明するという当局提案を受け入れたわけであります」

続く

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