国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

第59回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 昭和43年9月9日 第二話

2025-01-27 20:41:31 | 国鉄関連_国会審議
久々に更新させていただきます。
はじめに
今回も、後藤委員から、一人乗務に関する質問がなされています。
動労は一貫して、一人の目よりも二人の目ということで、二人乗務が必要であることを訴えており、後藤委員も同様の趣旨を発言しています。
ただし、この二人乗務が必要だと言っている矢先に、機関士の居眠り運転による脱線事故を膳所駅で起こしてしまいます。
事故は、昭和43年6月27日の夜に起こったものですが、この事故で特急白鳥が小浜線経由で運転されたという内容(当時の特急白鳥は80系気動車で運転されていた)でした。
概要は、事故の詳細は詳細を後で記述します。
そして、この時の事故を起こした当事者の弁明もあるのですが、正直ちょっとこれではと思わせる内容ではあります。併せて、別途記述してみたいと思います。

一人乗務では安全に対する責任が持てない!後藤委員の見解
後藤委員の発言は、動労の現場機関士からの声を拾ったと思われますが、その前に「きょうは別に私、安全度の具体的内容がどうこうということには触れようとは思いません。」とわざわざ断っている背景には、上記のように6月に大きな脱線事故を起こしており、この時は二人乗務でありながら、事故を起こしているわけですから。敢えてこのような発言で突っ込みを受けることを避けようとしたのでは無いかと勘ぐってしまいます。

きょうは別に私、安全度の具体的内容がどうこうということには触れようとは思いません。けれども、いま言われました機関助士を廃止をしてしまう、EL、DLですか。さらに電修揚の廃止その他数項目あるわけでございますが、直接現場で働いておる労働者の皆さんは、特に運転に関係のある職員の皆さんは、機関助士をはずされてしまう。いままで二人乗っておったのが一人になってしまう。こういうことではもう安全に対する責任が持てないというところまで言い切っておるわけなんです。

機関士は安全に対する責任が持てないと言っているわけですが、これに対しては、国鉄当局はEB装置(emergency brake)を整備した訳で、既に装置自体は昭和36年頃には完成しており、何時でも動かせる体制となっていました。
私鉄電車などに見られるデッドマン装置とは異なり、一定時間操作しないと非常ブレーキがかかるというもので、入換用機関車のDD13の場合は、エンジンの停止・非常ブレーキの動作が同時に行われるとされています。
電車にも同様にデッドマン装置(こちらは足踏み式で常に足で踏んでおくことが前提で、足を離すと非常ブレーキがかかるもの)が、中央線の101系に一部設置されて試用されていました。
しかし、機関車乗務員が二人居ても実際には信号冒進事故は減っておらず、常磐線の三河島事故も信号の誤認であり、その後の列車停止手配のまずさも重なっての重大事故であったこと等も考えれば、必ずしも二人乗務が安全を確保できるというのは根拠が薄いこととなります。
更に、何故そこまで、合理化を推進するのかと質問する後藤委員
なぜ一体そこまで激しい合理化をやらなければいけないのだろうか、そこへ問題が入らなければいけないと私は思う次第でございます。
 先ほど言われました国鉄の現状から考えて、いま出ましたような問題はもうやらぬわけにはいかない、こういうふうに言われたのですが、国鉄が置かれておる現状というのは一体どういうことをさしておられるのか、ひとつその点の御説明をいただきたいと思います。
この質問に対しての井上常務理事の発言は、国鉄のおかれている根本的な問題として、独立採算性による健全財政を作ることが重要であると発言しています。実際に、国鉄では長期計画による輸送力増強工事を進めており、国鉄としては39年からの連続赤字決算は早期に改善することは喫緊の課題で有ったと言えます。

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東海道本線膳所駅構内で上り貨物列車が脱線転覆して本線と京阪電車を支障、機関士の居眠りが原因 6/27

0時25分頃上り吹田操車場発青森行貨物列車 「第4北海」 が副本線へ待避の際、時速35km制限のところを約時速70km で分岐点へ突入、その際、機関車EF60119が脱線、約300m暴走、ジャリにめり込みやっと停止. 貨車は機関車との連結器がはずれ約30両が転覆、横転し、信号所、並進する京阪電鉄石坂線、国鉄浜大津線へ突込んだ。 このとき架線の支柱が折れたことで、下り本線も支障。そこに、ほぼ同時に富山発吹田操車場行きの貨物列車3574列車が事故現場へ突入。架線の鉄柱に機関車 EH1018衝撃、機関車と貨車2両が転覆、特急16本、急行48本、電車55本など区間運休した
この事故では、機関士・機関助士共に居眠りしていたとも言われている
→京阪石山坂本線 国鉄膳所駅で起きた脱線転落事故のため浜大津 ~ 石山寺間が運休→7/16 EH1018廃車
なお、事故復旧のため、米原から D51139とソ152. 吹田第一機関区からソ 87. 梅小路機関区からはC57190.28698 が来援. 事故から28時間後の28日 4時に開通した
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応援よろしくお願いします。

応援よろしくお願いします。
***************************以下は、国会審議議事録になります*********************
○後藤委員 そうしますと、いま井上常務の言われたことにつきましては、二人乗務を一人乗務にしても安全度には関係なし。さらに、国鉄の置かれておる現状からこういうことをやるのもやむを得ないのだというようなことを言われたわけでございますが、きょうは別に私、安全度の具体的内容がどうこうということには触れようとは思いません。けれども、いま言われました機関助士を廃止をしてしまう、EL、DLですか。さらに電修揚の廃止その他数項目あるわけでございますが、直接現場で働いておる労働者の皆さんは、特に運転に関係のある職員の皆さんは、機関助士をはずされてしまう。いままで二人乗っておったのが一人になってしまう。こういうことではもう安全に対する責任が持てないというところまで言い切っておるわけなんです。
 さらに電修揚等の問題にいたしましても、御承知のように特に重大なる信号の検査なり、修繕なり、まことに大事な仕事を持っておるところであることは言うまでもございませんが、これらも廃止をしてしまって民間委託にしてしまう。
 その他申し上げれば切りがございませんが、具体的内容にはあまり触れませんけれども、国鉄の管理者としては、お前たちそう言うけれども、安全は絶対だいじょうぶだ、二人乗務を一人乗務にしても安全度に対しては関係がないのだ、こういうふうに井上常務ははっきり割り切られるわけでございますけれども、そういうことを言われるいま一歩奥を突っ込んでみると、なぜ一体そこまで激しい合理化をやらなければいけないのだろうか、そこへ問題が入らなければいけないと私は思う次第でございます。
 先ほど言われました国鉄の現状から考えて、いま出ましたような問題はもうやらぬわけにはいかない、こういうふうに言われたのですが、国鉄が置かれておる現状というのは一体どういうことをさしておられるのか、ひとつその点の御説明をいただきたいと思います。
○井上説明員 国鉄の現状と簡単に申しましたけれども、端的に申し上げれば国鉄財政の危機と申し上げたほうがいいかと思います。国鉄財政の危機につきましてはいろいろの原因があると思います。あると思いますけれども、その根本におきましては、収入の伸び率と支出の伸び率とがあまりにもかけ離れておる、アンバランスであるというところに、私は根本の問題があると思います。
 収入の伸び率は、現在、国鉄の体質上、運賃値上げをやった年は別でございますけれども、年大体六%から七%くらい、このくらい収入が伸びていくというのが国鉄の体質上の伸び率でございます。一方、経費のほう、支出のほうはどのくらいの伸びでいっておるかといいますと、大体年一一%から一二%近く伸びておる、こういうことがいえます。これが現在の国鉄の体質的な傾向でございます。そうしますと、ある時点では収入が支出よりもかなり上回っておったといたしましても、収入の伸び率と支出の伸び率と急角度に違うわけでございますから、急速度にその両方の曲線が交わる。交わったあとは支出のほうが伸びて赤字がふえる、こういう状態にあるわけでございます。問題はやはりこの収入と支出の伸び率をできるだけ一致させていくというところに問題の根本があろうと思います。
 そのためには一方において収入の方面でできるだけ企業努力もいたしますて場合によってはいろいろ政府のお力も借りなければならぬ。国民世論に訴えて収入の伸びる道を考えなければならぬという面もございましょうし、一方においては経費の伸び率をできるだけ押えていくということも考えていかなければならぬ。結局はそこにくるわけでございます。
 経費の伸び率を押えるためには、現在、経費が一一%から一二%も伸びておる、その根本は何かといいますと、やはり問題は人件費であります。人件費が大体一〇%以上の割合で昨今のところ伸びております。で、国鉄職員の給与というものは人件費が多いから押えていいかといいますと、私はこれは押えるべきではないと思います。やはり日鉄法の二十八条にもはっきり書いてありますとおり、民間賃金の相場も考え、あるいは生計費の点も考え、あるいは公務員の賃金も考え、あらゆるものと均衡をとって国鉄職員の賃金の問題は考えろというふうに書いてございます。そういう点からいたしましても、国鉄職員の賃金というものはやはり仲裁裁定が出ますれば仲裁裁定に絶対に服従していく、それを実施していくという態度を私どもとしては堅持してまいりたい、かように思います。そういたしますと、ここ数年来の仲裁裁定の傾向から見ましても大体七%以上のベースアップを毎年認めるというかっこうになっております。そのほかに定期昇給の分として三・何%、三%以上のものが加わりますと、人件費はどうしても一一%近くになるわけであります。この人件費の伸びというものは、何としても一人当たりのベースアップの伸びは私どもとしては実施してまいりたい。しかし、総体の人件費はやはり押えていかなければならぬということになりますと、やはり人員の問題ということに問題がくると思います。現在の国鉄の経営を改善していくという根本においてはやはり機械化、近代化をやりましてほうっておけばふえる人員を押えていくという点にわれわれとしては主力を注がなければならぬという問題があると思います。そのほかにも経費の伸びる、支出の伸びる原因がいろいろございますけれども、その他の点についてはまたいろいろ政府にもお願いする、あるいは国民の皆さんにも訴えて改善の措置を講じてまいるといたしましても根本においてはやはり人件費の問題であろうかと私どもは考えておる次第でございます。

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