少し寒い季節の朝、
僕の体温が充満してあったかいふとんで僕は寝てて、
おじいちゃんもおばあちゃんも姉も妹も笑ってて、
猫は寄り添いながら、窓の外を眩しそうに、愛しそうに見つめていて、
お父さんが「いってきます」って家を出かけていって、
階段を上がってきたお母さんは、僕のベットの横に立って、
僕の頭に手を置いて、「ゆっくり寝てなさい」って言うと、
僕はとても安心して、幸せな夢をたくさん見るんだ。
「もし遺書を書くとしたら、僕はどんなコトを書くんだろうか」と
考えていたんだけど。。
きっと僕が死ぬときは、本当に疲れてしまって、眠くて仕方なくて、
そんなときに、「もういいや」って思った時なんだろうなって。
『みんなの居る家で、ずっと寝てたいな』って思うんだ。
そしたら急に泣けてきて、自分でもビックリした。
いつの間にか涙は止まらなくなってて、本当にどうしたんだって感じ。
何もわからず泣いていたら、とてもとてもキレイな理想が浮かんできて、
とてもとても、切なくなった。
僕は無様な顔で、声も出ないほどに泣いてる。
「お母さん」と呼びそうになったのを自覚して、なんだか苦しくなった。
あぁ、そうか。僕は甘えたいだけなんだ。
ほら、涙が止まらない。
こういうのは、図星だって証拠だと思う。
誰かに、誰もに、皆に、お母さんに、甘えたいだけなんだ。
ただのガキなんだ。
守ってほしくてしょうがないんだ。
ひとりで居るのが、怖くて仕方ないんだ。
どうしよう。涙が止まらない。
僕はまたひとつ僕に気付いてあげるコトができた。
なのに僕は、どうしてだ?
何かを否定するように頭を横に振って、
足を殴って、頭を机に打ち付けて、何がしたいんだ?
おじいちゃん。おじいちゃん。
僕が毎日早く起きて、ちゃんと時間通りに学校に行くことができたら、
前みたいな、穏やかなおじいちゃんに戻ってくれる?
また手をつないで、お散歩してくれる?
おばあちゃん。おばあちゃん。おばあちゃん。
おばあちゃんよりもたくさんの字を読めるようになった僕でも、
また絵本読んでくれる?
ぐりとぐらも、さっちゃんも、のんたんも、読んでくれる?
お父さん。お父さん、あのね、
僕はいつも「お父さん」って呼ぶときに戸惑ってしまうんだけど、
僕の中でお父さんは今でも「パパ」だからだよ。
お父さん。お父さん。
僕がもし家を出て、遠いところに行ったとしたら、
お姉ちゃんみたいに、いつも心配したり電話したり、
月に一回、3時間かけて会いに来てくれる?
お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。
呼んでもいい?
僕、もう15歳だけど、小さい頃みたいに、ままって呼んでいい?
お母さん。お母さん。お母さん。お母さん。
ねぇお母さん。
呼んだら助けに来てくれる?
僕が手を伸ばしたら、僕の手を握ってくれる?
お母さん。お母さん。
いい子じゃなくて、ごめんなさい。
泣き虫で、弱虫で、こめんなさい。
わがままで、ごめんなさい。
それでも、もし僕が死んだとしたら、
絃が切れたまま直していないギターみたいに忘れてしまったりしない?
こんなに守られてきたのに、何が足りないっていうんだろう?
僕はもう、僕は、、、ぼくはもう。。。
ダメだ。涙が止まらない。
本当に、寝てしまいたい。眠くて、仕方がないんだ。。