報告が遅くなりましたが、6/11(火)に当院救急シニアレジデントである田代先生が多施設ジャーナルクラブでの発表をしてくれました。
今回のテーマは、“敗血症関連急性腎障害患者に対する遺伝子組換えヒトアルカリホスファターゼの第3相試験(REVIVAL trial)” (Intensive Care Med 2024;50:68-78)です。
敗血症でICUへ入室される患者のAKIの発生率は60%と高く、これまで対症療法しかありませんでした。
現在様々な薬剤の研究が進んでおりますが、今回のテーマであるアルカリフォスファターゼは、ATPの脱リン酸化による炎症抑制作用が示されており、Phase IIbまでの研究結果からは長期生存効果が期待されています。
今回の臨床試験は、大陸間をまたいだ107施設で行われた第三相二重盲検無作為化比較試験で、遺伝子組み換えヒトアルカリフォスファターゼであるイロフォターゼαを3日間投与した群とプラセボ群で28日間の全死因死亡率が比較されました。
当初1400名を目標に組み入れが行われましたが、400名での中間解析でイロフォターゼα群(61/208: 29.3%)vsプラセボ群(52/203: 25.7%)で28日死亡率の有意差が 出なかったことから研究は中止となりました。
最終的にも、イロフォターゼα群(92/330: 27.9%) vs プラセボ群(89/319: 26.9%)で95%CI[-6.9%;6.9%], P=0.5と両群間に28日死亡率に有意差を認めませんでした。
その一方で、腎代替療法やCKDなどのアウトカムを示すMAKE(Major adverse kidney event)のうち、今回MAKE90Aはイロフォターゼα群(187/330: 56.7%) vs プラセボ群 (206/319: 64.6%) 95%CI[-15.4;0.42] 、P=0.019でイロフォターゼα群において有意にその発生が減少しました。
今回の臨床試験では、イロフォターゼαによる28日予後の改善は示せなかったものの、腎のエンドポイントを改善させる(特に敗血症関連腎障害発症前のeGFRが悪い場合)可能性が示唆され、今後の更なる臨床試験が期待される結果となりました。
田代先生は、見た目の通り穏やかで、物事に対して一つ一つ丁寧かつ確実にこなすところがとても素敵な先生でした。
引き続き、救急の臨床研修を頑張って下さい!