初投稿です。集中治療科三井です。
全国約30施設で行われているJSEPTIC多施設ジャーナルクラブ、今回は当院救急科シニアレジデント1年目の津田先生と集中治療科フェロー吉村先生が発表してくれました。
今回は普段のジャーナルクラブとは異なり、”集中治療室における終末期および緩和ケアに関する欧州集中治療学会ガイドライン”[Intensive Care Medicine (2024): 1-27]について扱いました。
ガイドラインについてということで、初版のスライドは150枚近い大作でした!
そこから発表する内容を取捨選択し、当日を迎えました。
”集中治療室”と”緩和ケア”に正反対というイメージを抱く方もいらっしゃると思います。
しかし、そもそも”緩和ケア”とは、”生命を脅かす疾患に起因した諸問題に直面している患者と家族のクオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチ”と定義されており、集中治療室は緩和ケアが必要な患者さんばかりということになります。
また、救命を目的とした治療から、終末期・緩和ケア中心に移行することは、延命治療の中止もしくは差し控えを伴うため、特有の難しさがあります。
患者の死の質(Quality of Death/Dying:QOD)を高めること、家族ケア、医療従事者ケアなどを目的に、今回のガイドラインは作成されました。
①国ごとのばらつき②意思決定③ICUにおける緩和ケアと終末期ケア④コミュニケーション⑤家族中心のケア⑥専門職間の意思決定⑦コンフリクトの管理と燃え尽き症候群 についての7つのドメインからなり、8つのエビデンス(6つはlow level、2つはhigh level)と19のエキスパートオピニオンに基づく推奨事項が提示されました。
その中から、高いエビデンスレベルとして提供された文書ツールについてと、筆者らが重要とした5つの項目に絞り、発表しました。
文書ツールについては、重篤な患者の家族に病状などを説明できるリーフレットや、ICUで亡くなった患者の家族にリーフレットを用意することは、高い推奨レベルとなっていました。
また、緩和ケアの訓練を受けた集中治療医チームがICUで死にゆく重篤な患者家族とコミュニケーションとること、ICUスタッフ向けに終末期コミュニケーションのトレーニングプログラムを実施することが、低い推奨レベルとなっていました。
ACPについては家族が患者の状況を十分に理解していることが前提条件であること、延命治療の制限を可能にする法的規制を検討すべきであること、TLTが有用である可能性があること、などについて発表しました。
質疑応答では当院の集中治療室における緩和ケアの取り組みについて質問をいただき、①院内全体で導入されているACPシート ②心外術前ACP ③入院時重症患者対応メディエーターの活躍 などについて、紹介させていただきました。
今回のガイドラインを受けて当院としては、リーフレットの作成と、ICU医療者向けの緩和ケア講習会を開催することなどに取り組みたいと思っています。
落ち着いていて、わかりやすく聞き取りやすい発表でした。
津田先生、お疲れ様でした!あと2週間程度ですが、残りの研修も頑張ってください!