そんなわけで、今回紹介する本はタダシ☆タナカ著『日本プロレス帝国崩壊――世界一だった日本が米国に負けた真相』だ。
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『日本プロレス帝国崩壊』では、日本のプロレスはショーだということをカミングアウトして、勝つか負けるかの勝負論ではなく、鍛え上げられた肉体と練ったシナリオによるスポーツ芸術へと移り変わるべきだと言う。つまりはWWEになろうよということだ。
著者はプロレスファンを3つに分類する。マーク、シュマーク、スマートだ。マークはリング上で起こることをすべて鵜呑みにする人。シュマークはある程度は仕組みに気付いているものの、そのすべてが決め事ではないと思っている人。スマートはプロレスの仕組み(決め事だということ)を全て知った上で楽しむという人。割合としてはスマートが全体の1%、マークが7~8割、残りがシュマートで、スマートを増やすかシュマークを減らすことが今後プロレスが発展していく鍵だという。
ちなみに以上の数字は米国における数字で、日本だとシュマーク(中間層)の割合が異常に多いのが問題だと指摘している。プロレス雑誌を熱心に読み、活字プロレスに慣れ親しんでいる人がこの層で、プロレスにリアルとファンタジーを求めている、いわゆるプロレスオタクと呼ばれる人たちだ。この層はプロレスがショーだということを頑なに認めず、頭打ちとなったプロレス業界の発展に障害となるとまで書いている。さらには雑誌を作る側にもこのシュマーク層がいて、スマート層から嘲笑の対象となっているという。
ハッキリ言って、この人の文からは選民意識が見て取れて、プロレスオタクが読むと不快になること間違いなしだろう。しかしそれを差し引いてもこの本を読んで、プロレスがショーであることをハッキリと認めるべきだという主張には賛成だ。真剣勝負などというものはUFCやK-1、もしくはボクシングにまかせておけば良い。そういった勝負論を超えたところにプロレスの面白さはあるのだから。
当時一世を風靡した試合に小川直也×橋本真也戦がある。中でも小川が橋本をボコボコにした第3戦が有名だが、著者はこれも当然あらかじめ決められていた試合だという。試合後に有名な「新日本プロレスファンのみなさん、目を覚ましてください」というフレーズを残した小川だが、この叫びはプロレスの仕組みを知った小川が、何故プロレスファンはこんな単純な構造に気付かずに熱狂しているのかという事へのメッセージだったのかも知れない。