平積みにはされていたがそれほど目立つ場所と言うわけでもなく、他の本に埋もれていたのにも関わらず僕が手に取ったのには、それが自転車を表紙にしている為だった。
初めは競輪の話なのかと思ったが、パラパラとページをめくるとそれがロードレースと呼ばれる自転車競技の話だと言うことが分かった。
ミステリという形式を採ってはいるものの、そこに描かれていたのは紛う事なきロードレースの世界。と、実際に競技を走った事のない僕が書くと嘘になってしまうのだが、少なくとも僕が想像し得る限りのロードレースという世界がそこにあった。
主人公の役割はアシストと呼ばれ、エースを勝たせるためだけに走る選手。個人競技に見られがちなロードレースだが実際は集団競技の色合いが強い。
サクリファイス
この本のタイトルでもあるサクリファイス=犠牲によって個人の勝利が成り立っている。初めてロードレースを見る人が戸惑うのはまさにそこの部分なのだが、この本ではこの点を分かりやすく説明してあり自然と理解できると思う。
自分の勝利は一切顧みず、ひたすらエースの為だけに走るマゾヒスティックとも言えるその忠誠心は、ドーピング疑惑に揺れるロードレース界の最後の良心だ。
この本をきっかけにあなたがロードレースについてほんの少しでも興味を持ってくれたら僕はどんなに幸せなことだろう。
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事