21世紀新訳・仏教経典(抄)

西川隆範編訳・桝田英伸監修

この世の由来-世記経   ~地獄 その10 〈八大地獄・4 叫喚地獄〉

2012-04-15 20:46:32 | 経典
【叫喚地獄(きょうかんじごく)】

仏陀は比丘たちに語り続ける。

「第四の大地獄「叫喚地獄」の周囲もまた、十六の小地獄が取り囲んでいる。
「叫喚地獄」も十六の小地獄も、どれもが500ヨージャナ(約3500km)四方の広さである。

第四の大地獄はどうして「叫喚地獄」というのか。


この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに数人の獄卒に捕らえられ、
大きな鼎(かなえ・神への犠牲獣を煮るための三つ足の祭器)に放り込まれる。
ぐらぐらと沸き立つ熱湯の中で罪人は茹でられる。

“叫び、喚く声”、泣き声、悲鳴、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にもなるが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。

“叫び、喚く声”の止むことがないので、「叫喚地獄」と呼ばれる。


また次に、この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに数人の獄卒に捕らえられ、
大きな鉄の釜(口の小さく、胴の丸々と張った形状のもの)に投げ入れられる。
ぐらぐらと沸き立つ熱湯の中をぐるぐると回りながら、罪人は茹でられる。

“叫び、喚く声”、泣き声、悲鳴、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にもなるが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。

“叫び、喚く声”の止むことがないので、「叫喚地獄」と呼ばれる。


また次に、この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに数人の獄卒に捕らえられ、
小さな釜の中に押し込められる。
ぐつぐつと沸き上がる熱湯とともに罪人は煮られる。

“叫び、喚く声”、泣き声、悲鳴、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にもなるが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。

“叫び、喚く声”の止むことがないので、「叫喚地獄」と呼ばれる。


また次に、この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに数人の獄卒に捕らえられ、
大きなはそり(煮たり、煎ったりすることに用いる底の浅い鍋)に放り込まれる。
鉄板にひっついた体の面が焼かれると、裏返されて反対の面も焼かれる。
そうして全身をくまなく煎じ炒られるのだ。

“叫び、喚く声”、泣き声、悲鳴、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にもなるが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。

“叫び、喚く声”の止むことがないので、「叫喚地獄」と呼ばれる。


罪人は、永らく苦しみを受けた後に、「叫喚地獄」を出る。
しかし
この地獄に恐れをなして救いを求めて走り出しても、
その宿業に引かれて「黒沙地獄」以下の十六の小地獄にたどり着いてしまう。
その小地獄で罪の償いを終えてから、ようやく死ぬことが出来るのだ」


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