21世紀新訳・仏教経典(抄)

西川隆範編訳・桝田英伸監修

この世の由来-世記経   ~地獄 その11 〈八大地獄・5 大叫喚地獄〉

2012-04-22 19:59:09 | 経典
【大叫喚地獄(きょうかんじごく)】

仏陀は比丘たちに語り続ける。

「第五の大地獄「大叫喚地獄」の周囲もまた、十六の小地獄が取り囲んでいる。
「大叫喚地獄」も十六の小地獄も、どれもが500ヨージャナ(約3500km)四方の広さである。

第五の大地獄はどうして「大叫喚地獄」というのか。


この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに大勢の獄卒たちに捕らえられ、
途方もなく大きな鉄釜の中に叩き込まれる。
ぐらぐらと沸き立つ熱湯の中で、大勢の罪人たちと共にこの罪人は茹でられる。

大絶叫で泣き喚き、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にも至るが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。
“叫び、喚く声の大合唱”
その恐怖の光景が止むことがないので、「大叫喚地獄」と呼ばれる。


また次に、この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに大勢の獄卒たちに捕らえられ、
途方もなく大きな鉄の甕の中に投げ入れられる。
ぐつぐつと沸き立つ熱湯の中で、大勢の罪人たちと共にこの罪人は茹でられる。

大絶叫で泣き喚き、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にも至るが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。
“叫び、喚く声の大合唱”
その恐怖の光景が止むことがないので、「大叫喚地獄」と呼ばれる。


また次に、この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに大勢の獄卒たちに捕らえられ、
途方もなく大きな鉄の鼎(かなえ・神への犠牲獣を煮るための三つ足の祭器)に放り込まれる。
ぐらぐらと沸き立つ熱湯の中で、大勢の罪人たちと共にこの罪人は茹でられる。

大絶叫で泣き喚き、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にも至るが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。
“叫び、喚く声の大合唱”
その恐怖の光景が止むことがないので、「大叫喚地獄」と呼ばれる。


また次に、この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに大勢の獄卒たちに捕らえられ、
途方もなく大きな鉄の釜(口の小さく、胴の丸々と張った形状のもの)に押し込められる。
ぐらぐらと沸き立つ熱湯の中をぐるぐると回りながら、大勢の罪人たちと共にこの罪人は茹でられる。

大絶叫で泣き喚き、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にも至るが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。
“叫び、喚く声の大合唱”
その恐怖の光景が止むことがないので、「大叫喚地獄」と呼ばれる。


また次に、この地獄にたどり着いた罪人は、
すぐに大勢の獄卒たちに捕らえられ、
途方もなく大きなはそり(煮たり、煎ったりすることに用いる底の浅い鍋)につまみ入れられる。
大勢の罪人たちと共に、表も裏もまんべんなく煎り続けられる。

大絶叫で泣き喚き、苦しみ痛み、辛酸の毒は万倍にも至るが、
罪の償いが終わらないので死ぬことも出来ない。
“叫び、喚く声の大合唱”
その恐怖の光景が止むことがないので、「大叫喚地獄」と呼ばれる。


罪人は、永らく苦しみを受けた後に、「大叫喚地獄」を出る。
しかし
この地獄に恐れをなして救いを求めて走り出しても、
その宿業に引かれて「黒沙地獄」以下の十六の小地獄にたどり着いてしまう。
その小地獄で罪の償いを終えてから、ようやく死ぬことが出来るのだ」


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