21世紀新訳・仏教経典(抄)

西川隆範編訳・桝田英伸監修

自己について-法句経  その14

2011-01-23 20:13:31 | 経典
「修行僧」より

手を慎み、足を慎み、言葉を慎み、出来うる限りを慎み
心の内で静かに思念を凝らして喜び、心を平安に統一させて
独り居を楽しみ満ち足りている――
このような人を〈修行僧〉と呼ぶ。


“名付けられるような目に見える形すべて”をまったく〈自分のもの〉とは思わず
だからといって“私は何も持たない”ということで苦悩することのない人――
このような人を〈修行僧〉と呼ぶ。


修行僧よ、舟から水をかき出せ。
水をかき出せば、舟は軽やかに進む。
貪りと怒りとを断ったならば、〈彼岸たる涅槃〉に至るだろう。
(舟は自己、水は煩悩の比喩)


〈輝く智慧〉のない者には〈精神集中の静まり〉はない。
〈精神集中の静まり〉のない者には〈輝く智慧〉はない。
〈精神集中の静まり〉と〈輝く智慧〉とをともに身につけた人は
すでに〈涅槃〉の近くに立つのだ。


身体が静かで、言葉が静かで、心が静かで
精神が統一されており、世俗での楽しみを捨て去った〈修行僧〉――
この人は“安らぎに満たされた人”と呼ばれる。


まことに、〈自己〉こそが“自分の主人”である。
〈自己〉こそが“自分の拠りどころ”である。
商人が馬を良馬に仕立てて調教するように、〈自己〉によって“自分自身”を整えよ。


喜びに満ちて仏の教えを喜ぶ修行僧は
やがて“無意識に輪廻の業を形作ってゆく力”の止んだ、
〈幸福な安らぎの境地=涅槃〉へと至るだろう。


コメントを投稿